明治における近代警察の父・川路利良が務めた大警視が警視総監と改められて以来現在に至る。内務次官、警保局長と並び内務省三役と呼ばれた。
各都道府県には警察本部が置かれ、それぞれ「○○県警察本部」などと呼称されるが、首都を管轄する東京都に限り「東京都警察本部」ではなく「警視庁」という名称が用いられる。この警視庁の長を務める警察官の階級及び職名が警視総監である。
道府県警察本部の長の職名は「○○県警察本部長」であるが、警視庁の場合は名称中に「本部」という文字がなく[1]、歴史的経緯などもあって、その長の職名は(頭に警視庁を付けず)単に「警視総監」と呼称する。このため、結果として、警察官としては階級と官職名が一致する唯一の職位である(ちなみに警視庁のナンバー2は職名を警視庁副総監と称し「総監」の文字が含まれてはいるが、階級は警視監である)。
なお、警視総監は「警察官の階級」の中では最高位であるが、さらにその上位に、階級制度の適用を受けない「警察庁長官」という職位(官職)が存在するため、警察官全体としては警察庁長官に次ぐ2番目の地位である。警視総監は、平常時において警視庁の庁務を遂行するにあたり、警察庁の所掌事務に該当するものについては警察庁長官の指揮監督に服するが、それ以外のものについては東京都公安委員会の管理に服する。ただし、内閣総理大臣が警察法第71条による緊急事態の布告を発した場合には、警視総監は、その布告の実施に関して、警察庁長官の指揮・命令に服することになる。階級章も警視監までのそれとは違い、肩章という形で4連の旭日章が付く(なお、警察庁長官章は警視総監のそれと同形式であるが、長官章は5連の旭日章であることからも、警察組織における警察庁長官と警視総監の職位の上下関係を窺い知ることができる)。^ 警視庁の設置に関する条例第2条・第3条では、出先機関(警察署・交番等)を除いた警視庁の中枢部分のことを「警視庁本部」と呼称しているが、道府県「警察本部」に対応する呼称は「警視庁」であって警視庁“本部”ではない。
警視総監は、警察法第49条第1項にもとづき、東京都公安委員会の同意と内閣総理大臣の承認を得た上で国家公安委員会が任免する。但し、同条第2項では東京都公安委員会は国家公安委員会に対し、警視総監の懲戒または罷免に関し必要な勧告をすることができる旨を規定している。他の道府県警察本部長は、同法第50条第1項により道府県公安委員会の同意を得ることになっているが、警視総監については内閣総理大臣の承認を要件としているのが特徴である。
警視総監に対する処分は、国家公安委員会が任命権者として、国家公務員法に基づき処分する。警視総監に対しての処分は2008年8月7日現在までに3名行われた。
1978年に発生した北沢警察署警察官による女子大生強姦殺人事件により警視総監土田國保が戒告の懲戒処分を受けた事例
1997年に発生した城東警察署による覚醒剤所持捏造事件により警視総監前田健治が戒告の懲戒処分を受けた事例
2007年に発生した立川警察署警察官による女性射殺事件により警視総監矢代隆義が戒告の懲戒処分を受けた事例
俸給(給与)は、国家公務員として「指定職7号俸」が適用され、その全額が国庫から支給される。
歴代の警視総監
警視総監のほか、その前身(東京を管轄する警察組織の長)を含む。
一時期存在した大阪市の警察長であった「大阪市警視総監」は含まない。
退任者・新任者の交代が同日でない場合のみ、退任日を付記する。
大警視 (ただし、1874年8月4日-1874年10月15日の期間は「警視長」)
代氏名任命年月日退任後の主な公職
1川路利良1874年1月24日-1879年10月13日(在任中死去)
2大山巌1879年10月16日-1880年2月28日陸軍大臣、参謀総長、元帥
3樺山資紀1880年10月23日海軍大臣、海軍軍令部長、内務大臣、文部大臣、台湾総督
警視総監 (歴代の数は「大警視」からの通算)
代氏名任命年月日退任後の主な公職
3樺山資紀1881年1月14日海軍大臣、内務大臣
4大迫貞晴1883年12月13日鹿児島県知事
5三島通庸1885年12月22日-1888年10月23日(在任中死去)
6折田平内1888年10月24日貴族院議員
7田中光顯1889年12月24日宮内大臣
8園田安賢1891年4月3日貴族院議員、警視総監再任
9山田為暄1896年9月27日貴族院議員
10園田安賢 (再)1898年1月14日北海道庁長官
11西山志澄1898年7月16日衆議院議員
12大浦兼武1898年11月9日警視総監再任
13安楽兼道1900年10月19日貴族院議員、警視総監再任
14大浦兼武 (再)1901年6月2日農商務大臣、内務大臣
15安立綱之1903年9月22日貴族院議員
16関清英1905年9月10日貴族院議員
17安楽兼道 (再)1906年1月17日警視総監再任
18亀井英三郎1908年7月20日貴族院議員
19安楽兼道 (再)1911年9月4日警視総監再任
20川上親晴1912年12月21日貴族院議員
21安楽兼道 (再)1913年2月21日大日本人造肥料株式会社会長
22伊沢多喜男1914年4月16日台湾総督、東京市長
23西久保弘道1915年8月12日東京市長
24岡田文次1916年10月9日貴族院議員
25岡喜七郎1918年9月30日貴族院議員
26堀田貢1922年6月12日内務次官
27赤池濃1922年10月24日警視総監再任
28湯淺倉平1923年9月5日会計検査院長、宮内大臣
29赤池濃 (再)1924年1月7日貴族院議員
30太田政弘1924年6月11日台湾総督
31宮田光雄1927年4月20日貴族院議員・大政翼賛会興亜総本部長
32長岡隆一郎1929年6月25日貴族院議員