認知症
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診断

意識障害時には診断できない。ICD-10DSM-IVでさえ診断基準は異なるが、一般に、日常生活に支障が出る程度の記憶障害認知機能の低下の2つの中核症状が見られる時に診断する。周辺症状の有無は問われない。機能が以前と比べて低下していることが必須であり、生まれつき低い場合は精神発達障害に分類される。

記憶認知機能などの程度を客観的に数値評価する検査としてWAIS-R(ウェクスラー成人知能検査)などがあるが、施行に時間を要し日常診療で用いるには煩雑である。簡便なスクリーニング検査として、日本では聖マリアンナ医科大学の長谷川和夫らが開発した「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)がよく利用される。世界的にはミニメンタルステート検査(MMS、MMSE)が頻用されている。

うつ病せん妄と間違われやすい。難聴とも鑑別を要する。


うつ病との鑑別

認知症(痴呆)は、日内変動を伴わず、ゆっくり記憶障害から発症する。深刻さを欠き、質問に対してははぐらかしたり怒ったりする。一方うつ病は、日内変動が強く、比較的急激に抑うつ症状から発症する。自責的で深刻味をおび、質問に対する返答は遅れたりわからないと言ったりする。


せん妄との鑑別

認知症(痴呆)は、日内変動を伴わずにゆっくり発症する。原因が必ずしも特定されない。一方せん妄は、日内変動が強く急激に発症し、対話が成立しないこともある。薬剤・身体疾患などの原因が存在する。


治療

認知症を来たしている原因により治療方法は異なる。「治療可能な認知症(treatable dementia)」の場合は原因となる疾患の治療を速やかに行う。

近年、認知機能改善薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)が開発され、アルツハイマー型痴呆を中心として認知機能の改善、痴呆進行の緩徐化などの効果が期待されている。

また、認知症患者は認知機能低下のみならず、不眠抑うつ、易怒性、幻覚(とくに幻視)、妄想といった周辺症状と呼ばれる症状を呈すことがあり、その際は適宜、睡眠薬抗うつ薬抗精神病薬、抗てんかん剤などの対症的な薬物療法が有効なこともある。

なお、日中の散歩などで昼夜リズムを整える、思い出の品や写真を手元に置き安心させる回想法テレビ回想法などの薬物以外の手段も有効な場合がある。

介護保険デイケア通所など社会資源の利用も有用である。 しかし、今まで認知症患者の立場からの研究が行われていなく、当事者の立場からの医療・福祉が提供されていない現状がある。

いずれにせよ、専門医(精神科医、神経内科医など)の協力を得て診断、治療を行う事が望ましい。


政策

認知症患者は既に日本だけでも150万人を超え、今後増加の一途をたどると言われている。既に、痴呆患者を対象にした悪徳商法などが発生している。悪質リフォームなどはよく報じられるが、解決策について議論されることは少ない。

介護については、現在でも多くの家族が痴呆患者を介護しているが、その負担の大きさから心中問題に発展する事もある。痴呆患者の介護は、24時間の見守りが必要であり、これは地域ぐるみでないと対策は難しい。しかし、この問題は家族や貧困の問題とされており、社会問題とされる事はまだまだ少ない。

また、判断力が低下した痴呆患者による自動車運転などの問題もある。


名称変更


経緯

日本老年医学会において、2004年3月に柴山漠人が「『痴呆』という言葉が差別的である」と問題提起したのを受け、6月から厚生労働省において、医療・福祉などの専門家を中心とした用語検討会で検討が始まった。その過程において、厚生労働省は、関係団体や有識者からヒアリングを行うとともに、「痴呆」に替わる用語として選定した複数の候補例等について広く国民の考えを問うため、ホームページ等を通じて意見の募集を行った。この結果、一般的な用語や行政用語としての「痴呆」について、次のような結論に至った。

「痴呆」という用語は、侮蔑的な表現である上に、「痴呆」の実態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断等の取り組みの支障となっていることから、できるだけ速やかに変更すべきである。

「痴呆」に替わる新たな用語としては、「認知症」が最も適当である。

「認知症」に変更するにあたっては、単に用語を変更する旨の広報を行うだけではなく、これに併せて、「認知症」に対する誤解や偏見の解消等に努める必要がある。加えて、そもそもこの分野における各般の施策を一層強力にかつ総合的に推進していく必要がある。

国民の人気投票では「認知障害」がトップであったが、従来の医学上の「認知障害」と区別できなくなるため、この呼称は見送られた。こうして2004年12月24日付で、法令用語を変更すべきだとの報告書(「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書)がまとめられた。厚生労働省老健局は同日付で行政用語を変更し、「老発第1224001号」により老健局長名で自治体や関係学会などに「認知症(にんちしょう)」を使用する旨の協力依頼の通知を出した。関連する法律上の条文は、2005年の通常国会介護保険法の改正により行われた。

医学用語としては、まず日本老年精神医学会が「認知症」を正式な学術用語として定め、関係40学会にその旨通知した。現在の医学界では、「痴呆」はほぼ「認知症」と言い換えられている。

主に心理学や神経科学系の学会では、従来より「認知」という語を厳密に用いてきたため、学会として認知症という語に反対している[1]


行政用語の改正

平成16年12月24日付け、厚生労働省老健局長通知による「痴呆」からの改正用語例は、以下のとおりである。

痴呆 → 認知症

痴呆性高齢者 → 認知症高齢者

痴呆の状態にある高齢者 → 認知症の高齢者

痴呆性高齢者グループホーム → 認知症高齢者グループホーム

現在、第162回国会において審議されている「介護保険法等の一部を改正する法律案」による改正後の介護保険法では「脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態」として認知症を定義している。


表記改正への賛否議論

「痴呆」という呼び名が差別的であるとされたのは、「痴」「呆」ともに「愚か」「馬鹿」という意味を持つ漢字だからである。実際、厚生労働省のアンケートでは、「痴呆」という呼称が一般的な用語や行政用語として用いられる場合、また病院等で診断名や疾病名として使用される場合でも、不快感や軽蔑した感じを「感じる」人は、「感じない」人を上回った。

「痴呆」の呼び名の代替案として「認知症」とする事とした事に関して、「認知」の意味が正しく伝わらず、適切ではないのではという議論が出ている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki