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危険因子
年齢
最大の危険因子である(特にアルツハイマー型)ことが知られている。23の疫学研究を基にしたメタ分析では、年齢とともにアルツハイマー型の発症率が指数関数的に上昇することが示された。また、75〜85歳の高齢者の追跡調査したthe Bronx Aging studyでは、認知症全体の発症率が85歳まではゆっくり上昇し、85歳を越えると急激に上昇する、というデータが得られている。
家族歴
片親が認知症の場合、本人が発症する危険は10〜30%上昇する。特に、片親が早期発症のアルツハイマー型認知症の場合、本人発症の危険はかなり高くなる(例えば親の発症が50代前半のなら、本人発症の危険は約20倍)。
遺伝因子
神経保護に関与するApolipoprotein Eの遺伝子型e4などがアミロイド沈着に関係すると言われる。他の遺伝子で危険因子として確定しているものはない。
動脈硬化の危険因子
高血圧・糖尿病・喫煙・高コレステロール血症などが、脳血管型やアルツハイマー型などの本症の危険因子となる。受動喫煙でも認知症リスクが30年で約3割増すとの報告もある。
軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)
正常老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているが、認知症とはいえない状態。認知症の前段階にあたるが、認知機能低下よりも記憶機能低下が主兆候となる。主観的・客観的に記憶障害を認めるが、一般的な認知機能・日常生活能力はほぼ保たれる。「認知症」の診断ができる程度に進行するまで、通常5〜10年、平均で6〜7年かかる。医療機関を受診した軽度認知障害では、年間10%から15%が認知症に移行するとされる。さらに、単に軽度の記憶障害のみの例より、他の認知障害を合わせて持つ例の方が、認知症への進行リスクははるかに高い(4年後の認知症への移行率は、記憶障害のみの場合は24%、言語・注意・視空間認知の障害のいずれかの合併例では77%であった)。
加齢関連認知低下(Aging-associated Cognitive Decline:AACD)
記憶障害のみにとどまらず認知機能低下をも含む、「広義の軽度認知障害」の概念のひとつとして国際老年精神医学会が診断基準をまとめたもの。加齢関連認知低下とは、6ヶ月以上にわたる緩徐な認知機能の低下が本人や家族などから報告され、客観的にも認知評価に異常を認めるが、認知症には至っていない状態である。認知機能低下は、(a)記憶・学習、(b)注意・集中、(c)思考(例えば、問題解決能力)、(d)言語(例えば、理解、単語検索)、(e)視空間認知、のいずれかの面に該当する。ある地域の高齢者を対象にした研究では、3年後での認知症への進行率は、軽度認知障害が11.1%、加齢関連認知低下では28.6%であった。しかも、軽度認知障害の一般地域高齢者に占める割合は3.2%のみだが、加齢関連認知低下は19.3%にも上る、と報告されている。
症状
以前よりも機能が落ち、以下の症状を呈するようになる。家族などの介護者を悩ませ、医療機関受診の契機となるのは、周辺症状である。
中核症状
記憶障害と認知機能障害(失語・失認・失行・実行機能障害)から成る。神経細胞の脱落に伴う脱落症状であり、患者全員に見られる。病気の進行とともに徐々に増悪する。
周辺症状
幻覚・妄想、徘徊、異常な食行動、睡眠障害、抑うつ、不安・焦燥、暴言・暴力など。神経細胞の脱落に伴った残存細胞の異常反応であり、一部の患者に見られる。病気の進行とともに増悪するわけではない。
検査
知能検査
診断の根拠を与える検査となる。診断の項を参照。
血液
本症の原因によっては、血中ビタミンB12・甲状腺機能の検査値が異常となるが、一般に本症を同定する血液検査項目はない。このため、「費用効率の観点から全認知症患者に血液スクリーニング検査を行うことは推奨されない」との意見がある。実際、2006年の560人の患者を対象とした研究では、治療可能な代謝異常に起因する認知症患者は一人もみつからなかった。
画像検査
原因に応じ、脳萎縮・脳内の病巣・脳腫瘍・水頭症の所見が見つかることがある。
診断
意識障害時には診断できない。ICD-10とDSM-IVでさえ診断基準は異なるが、一般に、日常生活に支障が出る程度の記憶障害・認知機能の低下の2つの中核症状が見られる時に診断する。周辺症状の有無は問われない。機能が以前と比べて低下していることが必須であり、生まれつき低い場合は精神発達障害に分類される。
記憶・認知機能などの程度を客観的に数値評価する検査としてWAIS-R(ウェクスラー成人知能検査)などがあるが、施行に時間を要し日常診療で用いるには煩雑である。簡便なスクリーニング検査として、日本では聖マリアンナ医科大学の長谷川和夫らが開発した「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)がよく利用される。世界的にはミニメンタルステート検査(MMS、MMSE)が頻用されている。
うつ病・せん妄と間違われやすい。難聴とも鑑別を要する。
うつ病との鑑別
認知症(痴呆)は、日内変動を伴わず、ゆっくり記憶障害から発症する。深刻さを欠き、質問に対してははぐらかしたり怒ったりする。一方うつ病は、日内変動が強く、比較的急激に抑うつ症状から発症する。自責的で深刻味をおび、質問に対する返答は遅れたりわからないと言ったりする。
せん妄との鑑別
認知症(痴呆)は、日内変動を伴わずにゆっくり発症する。原因が必ずしも特定されない。一方せん妄は、日内変動が強く急激に発症し、対話が成立しないこともある。薬剤・身体疾患などの原因が存在する。
治療
認知症を来たしている原因により治療方法は異なる。「治療可能な認知症(treatable dementia)」の場合は原因となる疾患の治療を速やかに行う。
近年、認知機能改善薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)が開発され、アルツハイマー型痴呆を中心として認知機能の改善、痴呆進行の緩徐化などの効果が期待されている。
また、認知症患者は認知機能低下のみならず、不眠、抑うつ、易怒性、幻覚(とくに幻視)、妄想といった周辺症状と呼ばれる症状を呈すことがあり、その際は適宜、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん剤などの対症的な薬物療法が有効なこともある。
なお、日中の散歩などで昼夜リズムを整える、思い出の品や写真を手元に置き安心させる回想法やテレビ回想法などの薬物以外の手段も有効な場合がある。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:Mamenoki