著作権の保護期間
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著作権の意義と保護期間

著作権保護の目的は、大きく分けて2つの立場から説明されることが多い。一つは著作人格権に関して適用される立場であり、著作権を著作者の自然権ととらえて、著作者の人格的利益を保護することである。もう一つは、著作財産権に対して適用される立場であり、著作物の独占的利用権を与えることによって、著作者に正当な利益が分配されることを促し、その結果として創作活動へのインセンティブを高めることである。前者はヨーロッパを中心とした大陸法圏の国において発展してきた考え方であり、後者はイギリスアメリカ合衆国を中心とした英米法圏に由来する考え方であるといわれる。

いずれの権利に関しても、著作権の保護期間があまりにも短く設定された場合、著作者の利益の保護が不十分となり、結果として著作者の創作意欲が減退するおそれがある。一方で、著作物は何らかの形で先人の業績に依拠して創作されるものであるため、著作権の保護期間をあまりにも長く設定すると、新たな創作活動が困難となり文化の発展が阻害されるという結果を招く。特に、「死人の創作意欲が高まることはない」という言葉が示すように、著作者の死後、長期にわたって著作権(特に著作財産権)を保護することは、著作者の創作意欲を高める上であまり意味を持たず、社会全体としては不利益の方が大きくなる。

したがって、著作物の独占利用による著作者の創作意欲の向上という社会的利益と、著作物の利用促進による社会的利益の均衡を図るために、著作権の保護期間は適切な期間に調整されるべきである。そして、この「適切な期間」をめぐってさまざまな立場が存在することになる。


著作権発生の特徴

著作権の発生要件を定める法制には「無方式主義」と「方式主義」がある。無方式主義とは、著作物を創作することによって著作権は当然に発生するもので、著作権を発生させるためには、いかなる方式(手続)の履行も必要としない主義をいう。一方、方式主義とは、著作権を発生させるためには、官庁への納入、登録、登録手数料の支払いなど、何らかの方式(手続)の履行を求める主義をいう。

無方式主義は大陸法圏に由来する法制であり、方式主義は英米法圏に由来する法制であるといわれる。著作物の創作によって著作権が当然に発生する無方式主義は、著作権を著作者の自然権としてとらえる大陸法系の思想に合致する。一方、著作権の保護目的を功利主義的にとらえる英米法圏の思想からは、著作権を発生させるために、官庁への登録などの手続を求めることは自然である。

世界160ヶ国以上(2006年現在)が加盟するベルヌ条約は無方式主義を原則としていることから(ベルヌ条約5条(2))、世界のほとんどの国が無方式主義を採用している。万国著作権条約3条に基づく記号

一方で、英米法圏のアメリカ合衆国やラテンアメリカ諸国は、ベルヌ条約に加盟することなく、独自の著作権保護同盟(パン・アメリカン条約)を形成し、方式主義を適用してきた。そのため、世界に無方式主義国と方式主義国が混在し、無方式主義国で創作された著作物が方式主義国では保護されないという問題が生じた。そこで、1952年、この問題を解決するために万国著作権条約が制定された。同条約3条によれば、以下の3つを著作物の複製物に対して表示することによって、方式主義国においても方式が履行されたものとみなし、保護を受けられることとしたのである。
「c」を○で囲んだ記号(右図)

著作権者の名称

著作物の最初の発行年

なお、アメリカ合衆国は1989年にベルヌ条約に加盟し、方式主義から無方式主義への転換をはかった。その他の方式主義国も次々と無方式主義に転じたことから、2006年現在、方式主義を採用する国はほとんど存在しない。そのため、万国著作権条約3条に基づく著作権表示の法的な意味はほとんど失われたといってよく、現在では著作者や著作権者の名称、著作物の創作年や発行年、著作権の存在自体を表示するために慣用的に使用されているのみであり、その使用法や意味づけは必ずしも統一されていないのが実情である。


著作権消滅の特徴

著作権の消滅時期を定める法制には、「死亡時起算主義」と「公表時起算主義」がある。死亡時起算主義は著作者の死亡時を起算時として著作権の消滅時期を決定する主義であり、公表時起算主義は、著作物の公表日を起算日として著作権の消滅時期を決定する主義である。

ベルヌ条約は死亡時起算主義を原則としている(ベルヌ条約7条(1))。ただし、無名や変名、団体名義の著作物については、著作者の死亡時を客観的に把握することが困難であるため、公表時起算を適用することを容認している(ベルヌ条約7条(4))。また、映画の著作物についても、公表時起算を適用することを容認している(ベルヌ条約7条(2))。

さらに、ベルヌ条約7条(1)によれば、加盟国は、著作者の死亡から著作権の消滅までの期間を50年としなければならない。著作者の死後50年まで著作権を保護する趣旨は、著作者本人およびその子孫2代までを保護するためであるとされている。

ただし、より長い保護期間を与えることも認められているため(ベルヌ条約7条(6))、保護期間が50年を超える加盟国も実際に多数存在する。欧州連合諸国、およびアメリカ合衆国は死後70年を適用し(いずれも1990年代に保護期間を延長する法改正を実施)、メキシコ(死後100年)やコートジボワール(死後99年)のように、さらに長期間にわたって著作権を保護する国もある。

日本は最短期間である死後50年を採用しているが(著作権法51条2項)、これらの国と同水準に保護期間を延長すべきであるとする意見がコンテンツ産業界や権利者団体を中心に根強い。一方で、著作物の利用促進の観点から保護期間延長に反対する意見も強いことから、保護期間延長の妥当性について、政府、民間の双方で論争が続いている。


条約が定める著作権の保護期間


文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約

文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約7条は、加盟国が定めるべき著作権の保護期間の要件を以下のとおり規定している。ただし、加盟国は、より長期間の保護期間を認めることができる(ベルヌ条約7条(6))。
著作物の保護期間を、著作者の生存期間および著作者の死後50年とする(7条(1))。

映画の著作物の保護期間を、公衆への提供時から50年、またはこの期間に公表されないときは、製作時から50年とすることができる(7条(2))。

無名または変名の著作物の保護期間は、公衆への提供時から50年で満了する。ただし、この期間内に、著作者が用いた変名が、その著作者を示すことが明らかになったとき、無名または変名の著作者がその著作物の著作者であることを明らかにしたときは、著作者の死後50年とする(7条(4))。

写真の著作物および応用美術の著作物の保護期間は、各同盟国が独自に定めることができる。ただし、保護期間は、著作物の製作時から25年より短くしてはならない(7条(4))。

著作物の保護期間は、著作者の死亡および上記の事実(公衆への提供、製作)が発生した時から始まる。ただし、これらの事実が発生した年の翌年の1月1日から計算する(7条(5))。

著作物の保護期間は、保護が要求される同盟国の法令が定めるところによる。ただし、その国の法令に別段の定めがない限り、保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない(相互主義)(7条(8))。


著作権に関する世界知的所有権機関条約

著作権に関する世界知的所有権機関条約WIPO著作権条約)の締約国は、ベルヌ条約1条?21条の規定を遵守しなければならないことを規定し(WIPO著作権条約1条(4))、著作物の保護期間に関するベルヌ条約7条の規定もその中に含まれる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki