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日本では、2004年1月1日、映画の著作物の著作権の保護期間を公表後50年から70年に延長する改正著作権法が施行されたが、映画以外の著作物の保護期間は、1970年の著作権法全面改正で死後38年から50年に延長されて以来、2006年現在に至るまで変更されていない。
1990年代、欧州連合諸国およびアメリカ合衆国で、著作権の保護期間を著作者の死後70年に延長する法改正が相次いだ。また、アメリカ合衆国政府は、「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」[2]の中で、著作権の保護期間を著作者の死後70年(著作者の死亡時に関係しない保護期間は公表後95年)に延長することを日本政府に対して求めている。こうした状況を受けて、日本国内でも、著作権の保護期間の延長問題に対する関心が高まってきている。
2005年1月24日、文部科学省の諮問機関である文化審議会著作権分科会は、『著作権法に関する今後の検討課題』を公表し、「欧米諸国において著作者の権利の保護期間が著作者の死後70年までとされている世界的趨勢等を踏まえて、著作者の権利を著作者の死後50年から70年に延長すること等に関して検討する」[3]として、著作物の保護期間の延長が同審議会における検討課題の一つであることを正式に表明した。
2006年9月22日、日本文藝家協会副理事長の三田誠広を議長とする「著作権問題を考える創作者団体協議会」は、著作権の保護期間を著作者の死後70年までに延長する法律改正を求める声明を発表した[4]。同協議会は、日本文藝家協会、日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)、日本レコード協会などの16団体(発足時)から構成されている。
2006年11月8日、劇作家、法律家、学者など64名(発足時)を発起人として、「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」(発足時の名称は「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」)が発足し、国民的な議論をつくさないまま保護期間を延長すべきでないとする声明を発表した。また、青空文庫は、2007年1月1日より保護期間延長に反対する趣旨の請願署名を開始している。[5]
日本国はベルヌ条約、万国著作権条約、WIPO著作権条約の締約国である。また、TRIPS協定を遵守すべきWTO加盟国でもある。したがって、これらの条約、協定で定められた保護期間の要件をすべて満たすように、国内法で著作権の保護期間を規定している。
著作権は、著作物を創作した時に発生する(著作権法51条1項)。登録を権利の発生要件とする特許権や商標権などとは異なり、著作権の発生のためには、いかなる方式(登録手続き等)も要しない(著作権法17条2項)。ベルヌ条約の無方式主義の原則(同条約5条(2))を適用したものである。
著作権は、著作者が死亡してから50年を経過するまでの間、存続する(著作権法51条2項)。ベルヌ条約7条(1)に対応する規定である。
共同著作物の場合
共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死亡時から起算する(同項かっこ書)。これは、最後に死亡した著作者が、日本の著作権法6条に基づく権利の享有が認められない者(条約非加盟国の国民など)であっても同様であると解する[6]。
また、自然人と団体の共同著作物の場合、本項を適用して自然人である著作者の死亡時から起算するのか、後述する53条1項を適用して公表時から起算するのかが問題となる。この場合、自然人である著作者の死亡時から起算するのが妥当であると解する。保護期間の長い方による方が著作権保護の趣旨に合致するし、公表時起算は死亡時起算が適用できない場合の例外的規定だからである[7]。
保護期間の沿革
一般的な著作物(写真や映画の著作物を除く)の原則的な保護期間は、1899年7月15日に施行された旧著作権法では、著作者の死後30年までと規定されていた。その後は、以下のような変遷をたどっている。
1962年4月5日 死後33年に延長(昭和37年法律第74号、第1次暫定延長措置)
1965年5月18日 死後35年に延長(昭和40年法律第67号、第2次暫定延長措置)
1967年7月27日 死後37年に延長(昭和42年法律第87号、第3次暫定延長措置)
1969年12月8日 死後38年に延長(昭和44年法律第82号、第4次暫定延長措置)
1971年1月1日 死後50年に延長(著作権法全面改正)
そのため、過去に創作された著作物の著作権の保護期間は、著作者の死後50年とならないことがある。たとえば、芥川龍之介、梶井基次郎、島崎藤村[8]の作品の著作権の保護期間は以下のとおりとなる。
芥川龍之介(1927年7月24日没)の作品の著作権は、1963年1月1日の第1次暫定延長措置が適用されることなく、1957年12月31日(死後30年)をもって消滅した。
梶井基次郎(1932年3月24日没)の作品の著作権は、第1次〜第4次暫定延長措置が適用されたが、1971年1月1日の改正法の適用を受けることなく、1970年12月31日(死後38年)をもって消滅した。
島崎藤村(1943年8月22日没)の作品の著作権は、第1次〜第4次暫定延長措置および1971年の改正法が適用されたため、1993年12月31日(死後50年)をもって消滅した。
無名または変名の著作物の著作権は、その著作物の公表後50年を経過するまでの間、存続する(著作権法52条1項本文)。無名または変名の著作物では著作者の死亡時点を客観的に把握することが困難であるから、ベルヌ条約7条(4)が容認する公表時起算を適用した。
ただし、公表後50年までの間に、著作者が死亡してから50年が経過していると認められる著作物は、著作者の死後50年が経過していると認められる時点において著作権は消滅したものとされる(同項但書)。また、以下の場合には著作者の死亡時点を把握することができるから、原則どおり死亡時起算主義が適用され、著作権は著作者の死後50年を経過するまでの間存続する(著作権法52条2項)。
変名の著作物において、著作者の変名が、著作者のものであるとして周知である場合(同条2項1号)
著作物の公表後50年が経過するまでの間に、著作者名の登録(著作権法75条1項)があったとき(同項2号)