著作権の保護期間
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保護期間の計算方法(暦年主義)

上述した「死後50年」、「公表後50年(映画では70年)」、「創作後50年(映画では70年)」の期間の計算方法には、いわゆる暦年主義が採用されている。すなわち、「50年」または「70年」の起算点は、著作者が死亡した日、または著作物の公表日・創作日が属する年の翌年1月1日となる(著作権法57条、民法140条但書、民法141条)。暦年主義を採用したのは、保護期間の計算が簡便にできること、著作者の死亡時や著作物の公表、創作時がはっきりとしない例が多いことによる。

たとえば、作家 池波正太郎1990年5月3日没)の作品の著作権は、2040年5月3日をもって消滅するのではなく、1991年1月1日から起算して50年後である、2040年12月31日をもって消滅する。したがって、自由な利用が可能となるのは2041年1月1日午前0時からである。


相互主義に基づく保護期間の特例

著作権法58条は、ベルヌ条約7条(8)、TRIPS協定3条(1)但書の規定が容認する相互主義を採用している。したがって、著作権法は、ベルヌ条約同盟国または世界貿易機関(WTO)の加盟国(日本国を除く)を本国とする著作物に対して、それらの本国の国内法が定める著作権の保護期間が、著作権法51条?55条が定める保護期間よりも短いときは、それらの国内法が定める保護期間しか与えない(著作権法58条)。

たとえば、日本国ではないベルヌ条約同盟国であるA国の国内法が、映画の著作物の保護期間を公表後50年と定めているとする。「公表後50年」は、日本国著作権法が定める映画の著作物の保護期間(公表後70年、著作権法54条)よりも短い。したがって、A国を本国とする(A国で第一発行された)映画の著作物の保護期間は、日本国著作権法においても公表後50年までしか保護されない。

ただし、日本国民の著作物に対しては、著作権法58条は適用しない(同条かっこ書)。したがって、日本国民の著作物は、第一発行国によらず、著作権法51条?55条が定める保護期間が満期で与えられる。


戦時加算

詳細は戦時加算 (著作権法)を参照

第二次世界大戦における連合国アメリカイギリスカナダなど)やその国民が有する著作権であって、日本国と当該連合国との間で平和条約が発効した日の前日以前に取得された著作権に対しては、上述の通り認められる通常の著作権の保護期間に加えて、いわゆる戦時加算による保護期間の加算が認められる(連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律4条)。第二次世界大戦中は、連合国や連合国民の著作権保護に、日本国は十分に取り組んでいなかったと考えられたためである。加算される期間は以下のとおりとなる。

太平洋戦争の開戦日の前日である1941年12月7日に連合国および連合国民が有していた著作権

1941年12月8日から、日本国と当該連合国との間の平和条約発効日の前日までの期間が加算される(4条1項)。たとえば、イギリスオーストラリアカナダフランスアメリカまたはその国民の著作権の保護期間には3794日が加算される。この場合、通常の保護期間によれば1978年12月31日をもって保護期間が満了する著作権は、3794日の加算によって、1989年5月21日まで存続する。


1941年12月8日から、日本国と連合国との間の平和条約発効日の前日までに当該連合国および連合国民が取得した著作権

著作権の取得日から、日本国と連合国との間の平和条約発効日の前日までの期間が加算される(4条2項)。たとえば、1944年8月1日に、上記連合国またはその国民が取得した著作権の保護期間には2827日が加算される。この場合、通常の保護期間によれば1978年12月31日をもって保護期間が満了する著作権は、2827日の加算によって、1986年9月27日まで存続する。


著作権の消滅(期間満了以外の事由)


相続人不存在等

相続人なく著作権者が死亡した場合において、相続財産の清算のために相続財産管理人によって著作権が譲渡されず、特別縁故者に対する相続財産の分与もされなかった場合(民法959条に該当する場合)、あるいは著作権者である法人が解散した場合において、その著作権を帰属させるべき者が存在しない場合(民法72条3項に該当する場合など)や清算法人の財産の清算のために清算人によって著作権の譲渡がされなかった場合は、著作権は法定の保護期間満了を待つことなく消滅する(著作権法62条1項、2項)。

民法などの原則をそのまま適用すれば、著作権はいずれの場合も国庫に帰属するはずである(民法959条、民法72条2項)。しかし、著作権法では上記のような特別規定をおき、著作権を消滅させることとした。著作物が文化的な所産であることを考慮すると、著作権を国庫に帰属させるよりは、広く国民一般に利用させるのが適切だからである。同様の権利消滅規定は、特許法、意匠法、商標法などの産業財産権法でも存在する(特許法76条、意匠法と商標法では特許法を準用)。いずれの規定も、著作権と同様に、権利の対象が知的所産であることを考慮したものである。


著作権の放棄

著作権法には、著作権を放棄できるとする明文の規定が存在しない。しかし、著作権は放棄できると解するのが、著作権の財産権的性質(著作権法61条、63条等)からも妥当である。放棄の方式については、放棄の効力発生要件としての登録制度が存在しないことから(著作権法77条)、立法担当者からは、著作権放棄の効力を発生させるためには、著作権者による新聞広告その他への明示的な放棄の意思表示が必要であると説明されている[11]。もっとも、このような説明に対しては、放棄があったかどうかは要は証明の問題に過ぎず、要件が厳しいとの批判もある[12]

一方で、著作権は放棄できないとする見解もある。仮に著作権は放棄できないとすると、著作権者が「著作権を放棄する」旨の意思表示をした場合の法的効果が問題となる。この場合、著作権者の意思を合理的に解釈して、著作権者は「著作権は保有しているが、それを行使しない(他人が著作物を利用することを禁止しない)」旨の意思表示をしたと解すべきことになる。したがって、そのような意思表示をした著作権者が、当該著作物の利用者に対して差止請求権や損害賠償請求権を行使することは、もはや信義誠実の原則から認められないことになる[13]


著作権消滅の効果

詳細はパブリックドメインを参照

著作権が消滅すると、その著作物はパブリックドメインに帰し、原則として誰でも自由に利用することができる。

ただし、公表時起算によって著作権が消滅すると、著作権消滅後も著作者が生存し、著作者人格権が存続していることがある。その場合、著作者人格権を侵害する態様で著作物を利用することはできない(著作権法18条?20条)。また、その後著作者が死亡し、著作者人格権が消滅しても、著作者が生存しているならば著作者人格権の侵害となるような利用行為、著作者の声望名誉を害する方法による著作物の利用行為は引き続き禁止される(著作権法60条、113条6項)。



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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki