自力救済
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ただし、近世以前においては自力救済は武士以外の階級にも広範に認められていたと考えられている[2]が、戦国大名の分国法に多く見出される喧嘩両成敗法がこのような私的刑罰権を制限していったと考えられている。また江戸時代の身分制社会では無礼討ち(幕末の生麦事件を参照)が存在し、1742年の公事方御定書においても成文として取り込まれている。これはむしろ近世以後に一般化し、18世紀以降不文律として定着していったようである。明治政府においては1868年の仮刑律では尊属を殺害した者に対する復讐は罰しないこととし、官に届け出さえすれば復讐は可能であった。しかし1873年には太政官布告により復讐は禁止させられ(この年の2月に「仇討禁止令」)、以後私的刑罰権は否定され、公刑主義が貫かれている。


規定・学説・判例

民法のなかで自力救済を規定した条文は存在しない。しかし通説・判例は原則禁止の姿勢をとっている。法律構成としては、占有訴権について定めた民法202条第2項を適用する。どのように入手されたものでも(盗んだものであっても)ひとたび占有された以上占有権が発生し、それを自力で奪い返すと占有権侵害となって不法行為により損害賠償請求権などが相手側に発生する。原則、これを取り戻すためには法的根拠と司法手続が必要となる。

例外規定についての条項もないが、学説では自力救済に関するドイツの民法[3]を参考に論じている。判例もこれを受け、1965年の最高裁判決では、当該事件そのものについては自力救済にあたるとして棄却したものの、一般論として「力の行使は原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能または著しく困難であると認められ緊急やむをえない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」と述べた[4]。しかし判決として自力救済を容認した例はほとんどない。


おもな判例
アパートの家主が賃料不払いを理由に玄関の鍵を交換したことが自力救済となって損害賠償を認められた例
東京地裁平成16年6月2日判決。アパートの家主は店子とその部下[5]が家賃を払わないことを理由に賃貸借契約を解除した。この解除は有効と認めた。しかし店子がそのアパートで行っていた事業に支障が生じ、損害を受けたとして賠償を請求し、それを認めた。いわく、部下は身柄を拘束されており、賃料不払いや契約の解除を知らず、そこで鍵を交換され、店子はアパート室内の書類などを持ち出す猶予も与えられなかった。これは占有権の侵害および自力救済にあたるとして、裁判所は家主に損害賠償を命じた。
自力救済の例外を認めた例
横浜地裁昭和63年2月4日判決。マンションの目の前に自動車が3ヶ月間停めっぱなしの状態にあり、ある住人が再三にわたり督促したものの名義人は意図的に車を移動させなかった。故意に置きっぱなしにしてあると判断し、しびれを切らした住人が車を処分したところ、その所有者が損害賠償請求の訴えをおこした。裁判所は「やむを得ない特別の事情」があるとして損害賠償請求を認めなかった。


国税滞納処分

詳細は滞納処分を参照

国税の徴収には大量性・反復性があり、徴収のために煩雑な手続を要するとすれば、効率的な行政の執行を妨げるおそれがある。そのため、その徴収にあたっては国税徴収法により、私債権の実現には許されない自力執行権の手段として、滞納処分の手続きが認められている。

税務署長ほか国税徴収の事務に従事する公務員(徴収職員)、または国税の滞納処分の例による処分を許されている公租公課の徴収に従事する公務員(地方税法における徴税吏員など)は、滞納税について滞納者の財産を強制的に差し押さえ、換価することにより、にかかる債権を履行させる権限を有している。


脚注^ イギリスアメリカなどの判例法重視の法体系。
^ むしろ、日本の戦国時代には戦乱による政府の権威低下と法そのものの不備により法的救済に対する信頼が失墜して、村落レベルから大名などの領主レベルまで実力行使による自力救済が法的救済に代わって行われていたとすら考えられている。
^ ドイツ民法229条および859条。
^ 後掲判例最判昭和40年12月7日。
^ 実際は部下がアパートを使用して業務にあたっており、店子は部下が身柄を拘束された等の事情を知らなかった。


参考文献

『世界大百科事典 第2版』CD-ROM版、日外アソシエーツ、2004年。

加藤雅信「新民法大系1 民法総則 第2版」有斐閣、2005年。 ISBN 4-641-13395-6

判例:最判昭和40年12月7日昭和38(オ)1236号事件 ⇒判決PDF
カテゴリ: 民法 | 民事訴訟法

更新日時:2008年3月16日(日)11:42
取得日時:2008/08/21 03:05


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki