美術工芸品としての腕時計もある。材料に金や銀などの貴金属をふんだんに用い、ルビーやダイヤモンドといった宝石を散りばめた華美な装飾品としての腕時計である。こうした時計では、クオーツ式ではなく機械式であることが多い。
極端なものでは、風防に数カラットの大粒ダイヤモンドを用いるなど、考えうる限りの贅を尽した数億円の腕時計も存在する。
機械式腕時計は小さなケースの中に多くの高度な技術が込められている。中でも「トゥールビヨン」、「ミニッツリピータ」、「永久カレンダー」は超絶技術として名高い。これらの超絶技術は一握りの時計メーカー、時計職人にしか実現できず、これらを組み込んだ腕時計は、100万円以上、なかには1000万円を超す価格をつけることもある。
クロノグラフ
時刻を表示する機能に加えストップウオッチの機能も組み込んだ時計のことをクロノグラフという。文字板上に複数の小ダイアルを配置した外観が特徴的である。この機能を初めて備えた腕時計は1915年ブライトリング社によって発表されたもので飛行機の操縦士用に開発された。ストップウォッチ用の針が2本ある場合、スプリットセコンドという。
ムーンフェイズ
月が描かれた円盤で月齢を表す機構。18世紀の天才時計師アブラアン・ルイ・ブレゲが発明したとされる。よく「ムーンフェイス」と誤読されるが、「moon face(フェイス=顔)」ではなく「moon phase(フェイズ=段階)」である。なお、廉価な時計には一見ムーンフェイズと同じような外観の機能を積んだものもあるが、これらの多くは月齢を表しているのではなく、単に12時間毎に月と太陽が書かれたイラストが交互に表示されるだけのもの(すなわち昼夜の区別があるだけ)で、ムーンフェイズと区別して「サン&ムーン」機能と呼ばれている。
トゥールビヨン
アブラアン・ルイ・ブレゲが発明した技術で重力による誤差を補正するために主要な部品群を一定方向に常時回転させておく機構のことを指す。本来、時計本体に固定されているべき部品を回転させるため、非常に複雑な機構と高度な技術が要求される。
ミニッツリピータ
時計の側面のレバーを引くことで、鐘の音色や回数で現在時刻を知らせてくれる機構。クォーツ時計のアラーム機能に似ているが、機械式でこれを実現するためには非常に高度な技術が必要とされる。
永久カレンダー
現在時刻のみならず、月、日、曜日、暦年が表示でき、4年に一度の閏年も補正の必要が無いカレンダー機構を永久カレンダーと呼ぶ。
機械式時計と異なり、デジタル時計には精度が必要な時間計測、カレンダー、アラームといった機能が初期の段階から備わっていた。そのために、各種センサー類を取り付けることによって、従来の時計とは異なる機能(気温、気圧測定、電子コンパスなど)が付け加えられた。
腕時計は利き腕と反対側の腕に着用することが多い。また、女性の場合、盤面を腕の内側に向けて着用する例も比較的多いが、男性においては稀である。女性用腕時計は男性用腕時計に比べて小型に設計されている。中には必要以上に小型化されている例もあり、かつてはそのような婦人時計を「南京虫」と呼んだ[要出典]。男性用サイズと女性用サイズの中間的なサイズの腕時計はボーイズサイズと呼ばれる。
なお腕時計成立の経緯から懐中時計に比べて腕時計は略式とみなされ、従来は燕尾服、モーニングコート、ディナージャケットその他の礼装時には腕時計は着用しないものとされてきたが、現在ではその規範は徐々にゆるくなってきている[要出典]。
腕時計をめぐる逸話
オメガの「スピードマスター」はNASAの公認クロノグラフである。NASAは各社の腕時計に対し、宇宙空間での使用に耐えられるかどうか、耐熱性、耐寒性、耐衝撃性など様々な試験を行った。この結果、「スピードマスター」のみが合格したという実績を持つ。この試験に使用された「スピードマスター」には特にそれ専用の改造をほどこしてあったわけではなく市販品とまったく同様のものであった。アポロ計画でも使用され、月面に降り立った唯一の腕時計という栄誉を誇っている。1970年、アポロ13号は月に向かう途中で酸素タンクが爆発するという大事故が発生した。航法用コンピュータが使用不能になったが、「スピードマスター」を用いてロケット噴射時間の制御を行い、乗組員は全員無事生還を果たしている。ちなみに「スピードマスター」の裏蓋には"FIRST WATCH WORN ON THE MOON"の文字が刻まれている。
カシオの「Gショック」は米国での発売当初、アイスホッケーのパックの代わりにしても壊れないとの売り文句でコマーシャルを放映していた。これに対し消費者団体は誇大広告であるとの抗議を行ったが、再現実験をしてみると、コマーシャル通りの結果が得られたため、「Gショック」の評価が一気に高まったとの逸話がある[要出典]。また本格的な防水ケースにも関わらず、パーツの大半が合成樹脂で作られているため、磁気を帯び難い(消磁しやすい)とされ、湾岸戦争当時には磁気に反応する機雷処理を行う軍関係者に好まれた[要出典]。この逸話が日本に伝えられると、それまでは「ゴツいだけでファッショナブルではない」と一般にはあまり人気の無かった国内市場で愛好者が急増[要出典]、これに気を良くしたカシオ側はさまざまなバリエーションを発売[要出典]して、今日のコレクター市場成立に至っている。
参考文献
『腕時計雑学ノート』 笠木恵司、並木浩一 共著 ダイヤモンド社
『D&M 日経メカニカル』 2002年7月号p75?p101「こんな時代だからあえてメカ回帰」、日経BP社
『世界各国要覧と最新統計』 二宮健二、二宮書店