租税法律主義の機能は「法的安定性」と「予測可能性」にあるとされている。
租税法律主義の具体的な内容として、次の原則を挙げることができる。
課税要件法定主義または納税要件法定主義とは、租税を課税するための要件(課税要件)または租税を納税するための要件(納税要件)のすべてと租税の賦課・徴収の手続きは法律によって規定されなければならないとする原則。刑法における罪刑法定主義に類似する。
しかしながら、日本国憲法第三十条は「納税の義務」の本質と「租税法律主義」の原則の双方を包含している。このような国民主権主義(納税者主権主義)的な租税観を刑罰と同様に国家の人権への侵害(財産権への侵害)と捉えることは不適当であるから、本質的な意義において罪刑法定主義と租税法律主義の両者は異なる。
法律の留保の原則
法律の根拠によらずに、政令や省令において新たに課税要件に関する定めをしたり、現行の課税要件を変更することはできないとする原則。
法律の優位の原則
法律の定めに違反する政令や省令などは、これを無効であるとする原則。
政令省令への委任に関する原則
租税立法において課税要件および租税の賦課や徴収に関する事項を政令や省令に委任することは許されるものではあるが、課税要件法定主義の趣旨から、一般的白紙的委任は許されず、委任の程度や基準と内容が法律で明確にされなければならない。
課税要件明確主義または納税要件明確主義とは、租税を課税するための要件(課税要件)または租税を納税するための要件(納税要件)ならびに賦課や徴収の手続は、納税者である国民がその内容を理解出来るように、一義的で明確に定められなければならないとする原則。例外として、不確定概念がある。
課税要件が充足されている限り、租税行政庁(課税庁)には租税を減免したり、租税を徴収しないというような自由はなく、法律で定められたとおりの租税を徴収しなければならないとする原則。
日本国憲法第三十一条【法定手続の保障】「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」および日本国憲法第三十二条【裁判を受ける権利】「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」を根拠として、租税の賦課や徴収は「適正な手続」で行われなければならず、それに対する訴訟は「公正な手続」で行われなければならないとする原則。
法の究極的な目的は、正義の実現にあるといえる。これを租税法にあてはめれば、租税法の究極的な目的は租税正義の実現にあるといえよう。
そして、租税法律主義と租税公平主義のそれぞれの要請を共に充足することによって「適正」な租税法の解釈と適用がなされることで租税正義は実現されるのである。
したがって、租税法律主義と租税公平主義を対立する概念(原則)として捉えるのではなく、これらの原則は租税法の究極的な目的である租税正義の実現のための手段や方法にすぎないのであるから、租税正義の下において租税法律主義と租税公平主義は共に「調和」され一体になる関係にあるということができる。
関連項目
旭川市国保料訴訟
参考文献
松沢智編著 『租税実体法の解釈と適用』
カテゴリ: 税法 | 租税
更新日時:2007年8月31日(金)02:09
取得日時:2008/09/05 14:55