独禁法における主要な違反要件においては、単に行為要件(例:不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと)を満たすのみでは足らず、「競争を実質的に制限する」(競争の実質的制限)や「公正な競争を阻害するおそれ」(公正競争阻害性)を満たさなければならない。このうち後者についてを弊害要件という。そして、弊害要件が満たされるためには、「行為それ自体が競争手段として不正である」という不正手段か、「行為そのものが直ちに不正となるわけでないが、何らかの悪影響をもたらしている、あるいは、そのおそれがある」という反競争性が必要とされている。
条文上は、私的独占や不当な取引制限では競争の実質的制限が、不公正な取引方法においては公正競争阻害性が規定されており、後者のほうがより緩い要件とされている。
条文上の「一定の取引分野」とほぼ同じとされているが、個別の事情に応じて弊害要件を検討する際の前提として一般には需要者の視点からみた選択肢の幅からいわゆる「検討対象市場」を画定するものとされている。
競争停止、他者排除、優越的地位濫用の3つに分けられるとされているが、主な論点として他者排除事案に対し他者排除重視説(他者排除があれば、競争に影響をおよばさなくても反競争性を認める説)と原則論貫徹説(競争に影響を及ぼさない限り、たとえ他者排除があっても反競争性を認めない説)が対立している。
行為そのものが不正とみなされる行為をさす。
反競争性がもたらされたり不正手段がなされても、そのような行為を正当化する理由があれば独禁法違反となるわけでない。このような正当化するような場合を認めるかどうか否かに関して争いがあるが,最高裁石油カルテル刑事事件(昭和59年判決)も限定的ながら認める余地があることを示唆しているとされている。
事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することを言う(2条5項)
大部分の「私的独占」に当たる行為は「不公正な取引方法」にも該当するため、独自の意義付けは低いという見方が最近提唱されている。排除型については、一般指定15項がほとんど包含するし、支配型については、2条9項4号がほぼ包含する。もっとも、支配型については「不公正な取引方法」にはない課徴金制度が導入されたため、「私的独占」で事件処理をする意味が増している。
排除措置命令
課徴金納付命令(支配型私的独占のみ)
刑事罰
事業者が、契約、協定その他何らの名義を持ってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう(2条6項)。
6条において不当な取引制限を内容とする国際的協定等が禁止されている。
典型的には談合がこれに当たる。
排除措置命令
課徴金納付命令(いわゆるハードコア・カルテルに該当するものに限る)
刑事罰
次の各号のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。(2条9項)
不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと
不当な対価をもって取引すること
不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し,又は強制すること
相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること
自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること
自己(自己が株主あるいは役員である会社も含む)と国内において競争関係にある事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し,又は国内において競争関係にある事業者が会社である場合において,その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益をするよう,不当に誘引し,そそのかし,若しくは強制すること。
6条において不公正な取引方法を内容とする国際的協定等が禁止されている。
不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)のことを指す。
1号に対応して取引拒絶、差別対価等が1項〜5項
2号に対応して不当廉売等が6項・7項(3項も対応する)
3号に対応して抱合せ販売等が8項〜10項(特別法として景表法が存在)
4号に対応して拘束条件付取引は11項〜13項
5号に対応して優越的地位の濫用は14項(特殊指定は主に5号に対応する)
6号に対応して競争者に対する取引妨害が15項・16項
が規定されている。
詳細は特殊指定を参照
新聞業、物流、大規模小売店に関するものが存在する。
排除措置命令
民事上の差止め請求
次に掲げる行為の禁止
一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
不当な取引制限・不公正な取引方法に該当する国際的協定又は国際的契約をすること
一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること
構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること
事業者に不公正な取引方法に該当するような行為をさせること
一定の事業者団体は成立から30日以内に公正取引委員会に届出義務
排除措置命令
課徴金納付命令(1号の不当な取引制限に該当するとき、あるいは2号の不当な取引制限を内容とする国際的協定等を締結した場合に限る)
刑事罰(私的独占・不当な取引制限に限る)
次の各号の一に該当するときは合併をしてはならない。
合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとき
合併が不公正な取引方法によるものである場合
次の各号のいずれかに該当する場合は、共同新設分又は吸収合併をしてはならない。
共同新設分割等によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるとき
共同新設分割等が不公正な取引方法によるものである場合
会社は、次に掲げる行為をすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合は、そのような行為をしてはならず、不公正な取引方法により次に掲げる行為をしてはならない。
他の会社の事業の全部又は重要部分の譲受け
他の会社の事業場の固定資産の全部又は重要部分の譲受け
他の会社の事業の全部又は重要部分の賃貸
他の会社の事業の全部又は重要部分についての経営の委任
他の会社と事業上の損益を共通にする契約の締結