2004年3月、国民年金保険料未納情報に関する個人情報の漏洩が疑われる事例(政治家の年金未納問題)が報道されたのをきっかけに、社会保険庁のずさんな業務運営が次々と発覚した。同年7月、約300名の職員が未納情報等の業務目的外閲覧を行っていたことが判明し、行為者及び管理監督者の合計513名の職員が処分された。同年9月には、社会保険庁の幹部職員が収賄罪で逮捕され、国民の信頼を著しく損ねる結果となった。
通常国会における年金改正法案の審議やマスコミの報道等においては、「利用者の立場や目線に立っていない」「個人情報保護の重要性について十分に認識していない」「国民が納めた保険料や税金を保険給付以外に安易に使っている」等が指摘され、社会保険庁の組織の体質や、職員の倫理意識が問われた。ただし、事務費に保険料を充てていたことに関しては、各年度の予算及びその根拠となる特例法で定められた仕組みであり、いわゆる「保険料の流用問題」といわれる「流用」が社会保険庁の不祥事であるかのような報道は完全な誤りである。「保険料の流用問題」と社会保険庁の使途内容が適切か不適切かといった議論は、次元の異なる性質のものである点に留意する必要がある。
2006年5月、全国各地の社会保険事務所が、国民年金保険料の不正免除(法令等に違反する事務処理)を行っていたのが発覚した。調査の度にその数は増え続け、最終的に不正免除は222,587件に達し、行政組織としての遵法意識やガバナンスが欠如していることを露呈させた。
2007年5月、社会保険庁のオンライン化した時のコンピュータ入力にミスや不備が多いことや基礎年金番号へ未統合のままの年金番号が多いことが明らかなった。国会やマスコミにおいては、年金記録のずさんな管理が批判された。
また、社会保険庁のオンライン化計画に対して、労働組合が「中央集権化の支配機構を強め、独占資本のための合理化である。」として反対していたことや、実施に伴い労働強化を生じさせないとの覚書[1]を取り交わしていたことが問題視された。(詳しくは全国社会保険職員労働組合へ)
2007年8月10日、愛知県内の8ヵ所の社会保険事務所が、健康保険や厚生年金の保険料を滞納した事業所に対して課される延滞金を、不正に減額していた。総額は少なくとも約6800万円にのぼるとされた[2]。
関連項目
年金未納問題
公的年金流用問題
国民年金不正免除問題
年金記録問題
年金横領問題
全日本自治団体労働組合
新組織
2008年10月、社会保険庁から分離
健康保険の新たな保険者である「全国健康保険協会」(非公務員型公法人)
保険医療機関の指導監督等の部門(地方厚生局)
2010年1月、社会保険庁の業務を移行
公的年金の運営業務を担う「日本年金機構」(非公務員型公法人)
公的年金の財政責任・管理運営責任を担う部門(厚生労働省)
船員保険を労働保険と「全国健康保険協会」に移管し、社会保険庁は廃止。
経緯
2004年7月23日、損保ジャパンの副社長であった村瀬清司(むらせきよし)が、民間出身者としては初めて社会保険庁長官として就任した。
2004年8月3日、政府は年金制度改革の国会審議等を通じて、制度の実施庁である社会保険庁の事業運営の在り方について様々な指摘を受け、「社会保険庁の在り方に関する有識者会議(内閣官房長官主宰)」を設置した。有識者会議は、内閣官房長官及び厚生労働大臣と有識者で構成し、2004年8月から2005年5月まで計10回開催、組織の在り方や緊急対応策が議論された。
2004年8月、社会保険庁の業務の抜本的改革について、長官の下で、組織を挙げて全ての職員が主体的に取り組み、改革を加速化するために、社会保険庁改革推進本部を設置した。
2004年11月26日、「社会保険庁の在り方に関する有識者会議(第5回)」は、「緊急対応プログラム」をとりまとめた。
2005年5月31日、「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」は、「社会保険庁改革の在り方について」の最終とりまとめを行い、公的年金については、政府が十分に運営責任を果たすことのできる新たな国の機関を設置し、政府管掌の健康保険については、国とは切り離された全国単位の公法人を設立するとした。
2005年7月、上記最終取りまとめを受けて、「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議(厚生労働大臣主宰)」を設置し、国の行政組織としての年金運営新組織の具体的な姿が議論された。
2005年12月12日、「社会保険新組織の実現に向けた有識者会議」は、「組織改革の在り方について」をとりまとめ、年金運営新組織を国の「特別の機関」と位置づけ、意思決定機能・監査機能・業務執行機能の具体的な在り方等について、考え方を示した。
2006年2月、「健康保険法等の一部を改正する法律案」を国会に提出し、「全国健康保険協会」を2008年10月に新設して、政府管掌健康保険の扱いを社会保険庁から同協会に移管する法案は国会で可決成立し、2006年6月21日に公布された。
2006年3月10日、「ねんきん事業機構法案」(2008年10月に厚生労働省の特別の機関を設立)が閣議決定され国会に提出されたが、同年5月、審議の最中に国民年金不正免除問題が明らかになり、審議がストップした。