日本語では、
雨が降っている・雨が降っていた(非完結相)
雨が降る・雨が降った(完結相)
というように、助動詞「ている」があると出来事の一部を取り出す非完結相を表し、「ている」が無いと出来事を全体としてとらえる完結相を表す。なお、「る」と「た」は時制を表す。
また、「雨が降っている」は、出来事が継続していることを表しているが(進行相)、「椅子に座っている」のように、「ている」が瞬間的に変化する動詞につけられた場合、変化の結果が持続していることを表している(結果相)。さらに「雨が降り始めた」(起動相)、「雨が降り止んだ」(終結相)というように複合動詞を用いることでさまざまな相を表す。
なお、共通語では例えば同じ「買っている」でも、「彼は今帽子を買っている」「彼は昨日この店で帽子を買っている」のように進行相・完了相の両方に用いられる。しかし西日本の方言には、前者の進行相を「買いよる」、後者の完了相を「買うとる(買うちょる)」(つまりテの有無)などと区別することがある。
日本語文法では「アスペクト」を「様態」と表すことがあるが、「様態」という述語は(特に学校文法などで)狭義に用いられることがある(「そうだ」には伝聞と様態の二つの意味がある、などと書かれる)ので、注意が必要である。
日本手話においてアスペクト(相)の問題は研究途上にある。知られているところでは次のようなものが挙げられる。なお(かっこ)内の説明部分がアスペクト変化の文法的要素。続く部分が日本語訳。
歩く(歩く動作を継続する) (継続相) 「ずっと歩く」
歩く(歩く動作を断続的にくり返す)(習慣相) 「いつも(定期的に)歩く」
歩く(歩く動作を途中でやめる) (直前相) 「歩く前にやめた」
歩く前にやめた
英語
He began to talk. (起動相)
He continued to talk. (継続相)
He was talking. (進行相)
He stopped talking. (終止相)
ただし、現在進行形を取らない限り通常の動詞は終止相と考えられる。
ロシア語では、多くの動詞に関して完了体と不完了体がペアで存在する(動詞の性格により一方しかないものもある)。 例えば、 делать(不完了体:作る)と сделать(完了体:作り上げる、作ってしまう)など。完了体の現在形は(機能的には「現在」は考えられないので)実際には未来を表す。 形態としては例のように接頭辞(動詞によって違う)の有無のほか、語幹の形が少し違う場合、また全く異なる形態で示される場合もある。
参考文献
『日本語動詞のアスペクト』(金田一春彦編、鈴木重幸・藤井正・高橋太郎・吉川武時著、むぎ書房、1976年、ISBN 4-8384-0104-3)
バーナード・コムリー『アスペクト』(原著:1976年、ケンブリッジ大学出版刊、日本語訳:山田小枝訳、むぎ書房、1988年、ISBN 4-8384-0100-0)
工藤真由美『日本語のアスペクト・テンス・ムード体系―標準語研究を超えて―』(ひつじ書房、2004年、 ISBN 4894762315)
工藤真由美『アスペクト・テンス体系とテクスト―現代日本語の時間の表現―』(ひつじ書房、1995年、ISBN 4938669595)
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カテゴリ: 言語学関連のスタブ | 文法カテゴリー
更新日時:2008年10月3日(金)22:16
取得日時:2008/10/10 17:10