地震による被害を軽減するために、人類は揺れに強い建物を造る努力を続け、現在では大地震に耐えられるような建物を造ることができるまでになった。一方で、地震の発生時期を予測して被害を軽減しようと、数千年前から地震予知を試みてきた。しかし現在でも、一般には、地震の発生を事前に「正確に」予知することは困難とされている。
ひと口に地震の予知と言っても、そこにはさまざまな範囲や形式が考えられる。端的に言って「何月何日の何時に、何処でどれだけの規模の地震が発生する」といった範囲・形式での予知を、科学的な手段による根拠を提示して行うことは、少なくとも現時点では不可能と言ってよい。
地震調査研究本部の作成した「確率論的地震動予測地図の試作版(地域限定−西日本)平成16年3月25日(地震調査研究本部、平成16年3月25日)」(参考「 ⇒「全国を概観した地震動予測地図」報告書」)では、東海・東南海・南海などで30年以内に40〜50%(50年以内なら80%以上)の確率で地震が起こると試算している。これらの地域では長さ数百kmの断層全体が一度に動き、広範囲に被害が及ぶような地震が度々起きたことが判っているが、「次」がいつ起きるのかはわからない。
地震学者や行政が公式に認め取り組んでいるのは、ほとんどが地学的な見地に基づいた地震予知である。また一部の研究者は従来の地学的手法とは異なる観測方法を用いた地震予知を研究している。これらのほかに、地震前に広く見られると言われている種々の前兆現象(宏観異常現象)を予知に用いる研究をする人もいるが、地震学者からはほとんど認められていない。
地学的な理解の概略としては、地殻にたまったエネルギーがひずみとして蓄積され、それが数秒〜数分という短時間に一気に解放される現象が地震である(もっとも数日〜数ヶ月に渡って解放されるスロースリップ現象なども、広義の地震には含まれる)。そのため、地震学者はまず地殻や断層のひずみ(変形)の量、方向などを検証し、蓄積されていると考えられるエネルギーから各断層についてそれぞれのデータを集積し、切迫度や規模などを推測する。
この各種のデータや知見の精度を向上させることによって、既知の断層に関してはその切迫度(地震発生が近いかどうか)や、活動した際に解放され得るエネルギーを推測することは可能であり、断層が活動した際(地震が発生した際)の脅威度の比較や被害の算定、対策などに繋げていくことができる。
ただし、特定の断層にたまったエネルギー量がいつ地震を起こすほどになるかを判定することは容易ではない。地震は岩石の破壊によって生じる現象であるが、そもそも破壊は偶然に依存することが関係している。地震エネルギーの蓄積を弓の弦の張りに例えるなら、「弓の弦がどの程度張っているか」、つまりどの程度地震エネルギーが蓄積しているかを推測することは、既知の観測体制の整った断層に対しては、現時点でもある程度は可能である。一方、「張り詰めた弦がいつ切れるのか」、つまり特定の地殻や断層に蓄積されたエネルギーが実際にいつ解放され地震を起こすかを判定することは容易ではない。地震学者などが一般的に可能と認める「地震予知」は、このような偶然性の困難があることを前提にしている。
現実的な地震予知の可能性については、茂木清夫(東京大学名誉教授、前地震予知連絡会会長)が指摘した。すなわち、1944年の東南海地震の直前に静岡県掛川市で実施されていた水準測量で、地震の直前に異常な変動が観測されたというものである。これはその後、「東海地震は予知可能」との国の見解や世論へと発展した。一方で鷺谷威(名古屋大学教授)など、その水準測量データや解釈に疑問を持つ科学者も多い。
日本以外では、地震予知に成功したという話がまれに聞かれる。たとえば1975年に中国で発生した海城地震は地震予知に成功し多くの人命が救われた例である。しかし翌1976年の唐山地震では、発生する可能性が高まっていることが分かっていたものの決定的な情報がないまま結局予知することができず、約24万人が死亡した。ギリシャでは地震予知に成功した例がある(ある科学者の独自の警告であり、政府は予知を認めなかった)が、成功例はその1回のみで、同国ではその後もたびたび地震被害に見舞われている。USGSでは多数のボアホール歪計や地震計を設置してアメリカパークフィールド地震の予知を目指した経緯があるが、2003年の地震予知に失敗している。
こうした例が示すように、地震予知は場合によっては可能だが、地震を「確実に」予知するということは極めて困難であるというのが地震学者の一般的な認識である。
南海地震
例えば、南海トラフの沈みこみを原因とする南海地震の場合、断層(トラフ)に近い室戸岬はプレートの沈み込みに引きずられて普段から少しずつ沈み続け、地震の折に一気に跳ね上がる。トラフから離れた高知市街では、室戸の沈みこみに対して浮き上がり続け、地震の際に一気に沈下する。これらの傾向はこれまで同地で記録された殆どの地震について一定している。それゆえ、沈みこみが鈍化・停止したときは、地震発生が近い可能性がある。南海地震については道後温泉の水位変化などの記録も蓄積されており、地殻変動の観測以外にも予知に関する補助的な情報が豊富である。
東海地震
また近い将来に発生するとされている東海地震については、日本の行政・研究者が予知の可能性が高いと考え、観測体制・判定会の開催・警戒宣言の発令等の手順が明確にされている。1978年に地震学者の提言を受けて、国が「大規模地震対策特別措置法」を制定し、それ以来静岡県周辺で重点的に地震や地殻変動の観測が実施されている。東海地震は、世界で初めて「偶然ではなく狙って予知する」ことができるのではないかと期待されている。
電磁波系研究(電磁気地震学)など
電磁力学的手法
赤外線
地電流法
VAN法(ギリシャで研究されている;ギリシャの3名の地震学者Panayotis Varotsos, Kessar Alexopoulos and Kostas Nomikosの頭文字から命名されている)
ULF法(VAN法の交流版)
中波帯域(1kHz)
超短波・極超短波
電離層の状態
地中水脈に含まれるラドン放射
電磁波系研究に関しては、次のような仮説から行われている。地殻内における歪みの蓄積によって、地殻崩壊が起こるとき、石英や花崗岩(主成分はSi)などが伸縮を起こすことによって、圧電効果により電流や電磁波を生じさせる。実際に岩石に圧力を掛けると、電磁波が観測されることが実験により確認されており、この地震前に生じる電磁波を観測することによって、地震の早期警戒に役立てようとする研究であるとされる。特に、大規模地震などの場合には、地殻の崩壊体積が大きくなる。よって、その分だけ地殻内に生じる電流量が大きくなるために、ある程度の精度の機器ならば検出が可能である可能性がある。