第一に問責対象となる事実について構成要件該当性(充足性とも)が必要である。構成要件とは、刑法各論や特別刑法に規定された行為類型である。端的に言えば、犯罪のパターンとして規定されている内容に行為が合致するかどうか、が構成要件該当性の問題である。
行為でないものはおよそ犯罪たり得ないのであり、行為性は犯罪であるための第一の要件であるとも言える。行為性を構成要件該当性の前提となる要件として把握する見解もある。行為の意味についてはさまざまな見解が対立している(行為論)。行為でないものとしてコンセンサスのある例としては、人の身分(魔女など)や心理状態(一定の思想など)などがある(歴史的にはこれらが犯罪とされてきたことがある。)。犯罪が行為でなければならないということは、これらのものはおよそ犯罪たり得ないことを意味する。なお、行為とは作為だけでなく不作為を含む概念である。
また、主体は自然人でなければならないとされる。法人は犯罪の主体とならないとするのが通説である。また、ヒト以外の生物も犯罪の主体たりえない(歴史的にはなり得るとする法制もあった)。
問責対象となる事実(行為態様、因果経過、結果、行為時の状況、心理状態など)が構成要件に該当するものでなくてはならない。各構成要件はそれぞれ固有の行為、結果、因果関係、行為主体、状況、心理状態などのメルクマール(構成要件要素)を備えており、問責対象となる事実がこれらの全てに該当して初めて構成要件該当性が肯定されるのである。なお、構成要件には基本的構成要件(直接の処罰規定があるもの)と修正された構成要件(未遂犯や共犯など)があるとされる。
第二に違法性の判断が行われる。通説によれば、構成要件は違法・有責な行為の類型ということになるから、構成要件該当性が認められたこの段階では、違法性阻却事由のみが問題となる。たとえ、構成要件に該当するとしても、違法でない行為は有害でなく、禁止されず、したがって犯罪を構成しないのである。いうなれば、構成要件という犯罪のパターンに該当する場合であっても、悪くない(違法とされない)場合には、犯罪を構成しない、ということを意味する。
違法性の本質は、倫理規範への違背であるとされたり(規範違反説)、法益侵害・危殆化とされたりする(法益侵害説)。両者を折衷する見解が多数であるが、法益侵害のみを本質とする見解も有力である。この対立は、違法性の判断の基準時(行為時判断か事後的判断か)の問題と絡んで、学説は深刻に対立している(いわゆる行為無価値論と結果無価値論の対立である。通常は、規範違反説=行為時判断=行為無価値論、法益侵害説=事後的判断=結果無価値論として理解されている。)。違法性阻却事由には、例えば「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない」(刑法36条)とする正当防衛の規定がある。なお、明文のない違法性阻却事由も認められる(超法規的違法性阻却事由)。
第三に責任の判断が行われる。たとえ、構成要件に該当し違法な行為であっても、それが自由(行為者の自発的)な意思による場合に初めて非難が可能となるのであり、したがって他の行為を採ることを規範的に期待しえない場合には非難が出来ず、これを治療や教育の対象とすることは別段、処罰の対象とすることは相当でないからとされる(道義的責任論)。この部分は前2段の判定により、犯罪のパターンに該当し違法な行為であると認められた場合に、その責任を当該犯人に問うことが妥当かどうか、という点を問題とするものである。
例えば、違法性阻却事由該当事実を誤想した場合には故意責任は問えないとされる(厳格責任説を除く)。また、行為者が刑事未成年者であったり重度の精神障害を患ったりしている場合には、その者の行為は処罰の対象とならない。明文のない責任要素ないし責任阻却事由も認められる。
客観的処罰条件や一身的処罰阻却事由といった処罰条件という概念があるが、これらは犯罪の成立を前提に処罰が可能かどうかという問題に過ぎないとされる。もっとも、これらを構成要件要素に組み込む見解も有力である。
なお、親告罪における告訴などは訴訟条件であって、刑事実体法の問題としては扱われていない。
日本の刑法及び特別刑法諸法に定められた犯罪には次のようなものがある。
個人的法益に対する罪
生命に対する罪
殺人罪(199条)・予備罪(201条)・自殺関与・同意殺人罪(202条)・未遂罪(203条)
堕胎罪(212条?216条)
遺棄罪(217条?219条)
過失致死罪(210条)・業務上過失致死傷罪(211条)
危険運転致死傷罪(208条の2)
身体に対する罪
傷害罪(204条?207条)
暴行罪(208条)・ 凶器準備集合罪(208条の3)
過失傷害罪(209条)
自由に対する罪
脅迫罪(222条)・強要罪(223条)
暴力行為等処罰に関する法律
逮捕・監禁罪(220条?221条)
略取・誘拐罪(224条?229条)
性的自由に対する罪
強姦罪・強制わいせつ罪(176条?181条)
住居侵入罪・不退去罪(130条)
秘密・名誉に対する罪
秘密に対する罪 信書開封罪(133条)・秘密漏示罪(134条)
名誉に対する罪 名誉毀損罪(230条)・ 侮辱罪(231条)
信用及び業務に対する罪
信用毀損罪(233条)
業務妨害罪(234条)