喫煙の他に、タバコを原材料とする製品によるニコチンの摂取方法として、噛みタバコ、嗅ぎタバコなどの方法が知られている。詳細はタバコに詳しい。
タバコ会社は、喫煙を個人的趣味・嗜好の問題と弁明するが、喫煙は“喫煙病(依存症+喫煙関連疾患)”という全身疾患であり,喫煙者は“患者”という認識がなされている[10](日本口腔衛生学会,日本口腔外科学会,日本公衆衛生学会,日本呼吸器学会,日本産科婦人科学会,日本循環器学会,日本小児科学会,日本心臓病学会,日本肺癌学会の9学会による)。喫煙の人体への健康影響に関しては世界保健機関を含む幅広い機関において多数の研究がなされ、膨大な知見が蓄積している。近年は受動喫煙と喫煙リスクに対する研究活動も活発に行われている。ニコチンには軽微ながら依存性があるので、タバコが健康に悪いと知っていても、多くの喫煙者は禁煙できない場合がある。
動物実験などの知見から、ニコチンは明らかな依存性を持つことが知られている。ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化する。そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られる。このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通である。
ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となる。これがニコチン離脱症状であり、自覚的にはニコチンへの渇望が生じる。喫煙に対して依存性を示す者は「喫煙でリラックスできる」と表現するが、実際は離脱症状を喫煙によって一時的に緩和しているに過ぎない。依存症の項を参照。
また、ニコチンを過剰摂取した場合、嘔吐、下痢、縮瞳などの末梢神経症状や、妄想、幻覚および錯乱などの中枢神経症状を呈することもあり、場合によっては死亡することもある。
喫煙依存症は、精神医学において物質依存(依存症)の一種であると認められており、WHOによる疾病の分類基準である国際疾病分類第10版(ICD-10)にも「F17.2 タバコ使用<喫煙>による精神および行動の障害 依存症候群」として分類されている。日本においても、中央社会保険医療協議会により正式な疾患と認められ、2006年4月からニコチン依存症患者の病院での禁煙治療が健康保険制度の適用となった。これにより禁煙治療における患者負担額が大幅に軽減されることとなり、禁煙外来などが新設されるケースもある。
喫煙開始年齢が低いほど依存を形成しやすい傾向があると言われている。また、喫煙開始年齢が低いほど健康に与える影響や後年の発癌率も高いことが知られており、未成年の喫煙防止が大変重要である。
タバコの煙には、発癌性を有する化学物質が含まれており、一方でニコチンには依存性が認められている。そのため、喫煙者は長期間にわたり繰り返し発癌性物質に曝露される行為を繰り返してしまう傾向が高い。
喫煙によって罹患率が増加することが示されている癌として、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどがある。
ヒトの身体を構成する細胞は、分裂・増殖を繰り返している。がんは、細胞分裂の際、特定の遺伝子のコピーにミスが起こることで生じる。喫煙の際には、煙によって気道や肺の炎症・破壊が生じ、修復のために細胞の増殖が促進される。また、タバコの煙に含まれる物質は遺伝子毒性を持つことが実験的に示されている。このように、細胞分裂が活発に行われ、しかも遺伝子のコピーミスが生じやすい環境におかれることで癌が発生しやすくなると考えられている。
日本における2003年の癌の統計によれば、20〜24歳の男性が喫煙を開始して肺がんを発症して死亡する数は人口10万人あたり114.0人であり、非喫煙者は24.1人との統計が出されており、約5倍となる。全癌においては、10万人中喫煙者で571.5人非喫煙者で347人と、喫煙者において有意に癌罹患率が高いことが示されている[11]。
カナダの保健省が学術誌「Cancer Research」(2007年6月発行)で発表した研究によれば、喫煙により遺伝子が傷つけられることで精子が改変され子孫にも癌や奇形などの遺伝的リスクが高くなるため喫煙時の子供の有無に関わらず子孫への悪影響があるとしている。 また、これらの遺伝子の変異が遺伝すれば子孫の遺伝的構成物の中に不可逆的に存続し当然変異した遺伝子を元に戻すことはできない。 [12]。
喫煙により慢性気管支炎、肺気腫などが生じる。これらの2つの疾患のことを纏めて慢性閉塞性肺疾患(COPD)とも言う。 軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じている一方、非喫煙者にはほとんど見られない。
ヒトの肺は、数億個の直径約0.1mmの肺胞で構成され、その総面積は約50〜60m2であり、この肺胞を介して血液と空気中の二酸化炭素、酸素などのガス交換を行っている。肺胞がタバコの煙に曝露されることで肺胞壁の炎症、破壊が生じ、結果的にガス交換可能な面積が減少してしまう。これが肺気腫の状態である。通常の空気を呼吸するだけでは充分なガス交換を行えず、また肺胞の破壊によって生じた肺の空洞によって胸郭の動きが制限され、呼吸困難となる。重症になると運動制限や酸素吸入を要する状態になる。
WHOによれば全世界の死亡率第4位とされ、日本でも患者数は生活習慣病のほぼ倍と言われている。
喫煙は気管支喘息も悪化させることが知られている。
タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害することが知られている。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓 、脳塞栓、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されている。高血圧症治療に用いられる、β遮断薬の降圧効果を減じる作用がある[13]。
喫煙は、妊娠を脅かす最大の防ぎうる危険因子である[14]。周産期死亡の10%・低出生体重児の35%・早産の15%が喫煙に起因するという研究[15]がある。
妊娠中に能動喫煙あるいは受動喫煙すると、流産、早産の危険性が上昇し、出生後の乳幼児突然死症候群(SIDS)、中耳炎、呼吸器感染症や行動障害などの罹患率が増加する。また、口蓋裂、口唇裂[16]などの先天異常の危険性も高まる。