地形的に上空の開きが狭いことと、森林内であることも多いので、光は入りにくい面がある。そのため渓流の水中には大型の植物は少ないし、周辺の植生も陰地性のものが多い。また、水質が貧栄養なのは、雨水が土壌層を通っただけで流入すること、先にも述べたように有機物の分解が盛んでなく、分解物質は流出するためである。
渓流の生物の特徴としては、上記のような条件のために、底性生物が多い。水中、水面の生物はごく少ない。
植物については、水中の顕花植物はほとんど無い。一般の水草は泥底に根を下ろして水中に伸び出すが、そのような条件は渓流にはまずない。日本ではこの環境に生育する水草はほとんどカワゴケソウ科のものだけである。熱帯域では、ミツデヘラシダやアヌビアスのような着生植物的な水草の例がある。コケ植物には水没して生活するものが若干ある。水中での生産者としては、岩の表面に付着して生育するケイソウ類が主力である。
動物では、水面を生活の場とするものはシマアメンボやオナガミズスマシなどがある。水中を遊泳するものは、まずは魚類であるが、純粋に遊泳性なのはマス類、特に陸封型のもの(日本ではヤマメ、アマゴ、イワナなど)が主力である。日本ではこのほかにコイ科のアブラハヤやタカハヤなどがある。夏季限定でアユも出現するが、渓流よりむしろ中流域が主な生息域である。昆虫では水中に泳ぎ出るものとしては小型のゲンゴロウ類やチビミズムシ、ナベブタムシなどがある。
底性動物は最も豊富な動物相をもつ。両生類のナガレヒキガエル、カジカガエル、それに地域が限られているがオオダイガハラサンショウウオやハコネサンショウウオなどの幼生がこれに含まれる。魚類ではハゼ類、シマドジョウやアジメドジョウ、カジカ類、ウナギなどがある。昆虫については後述するが、その他の節足動物では甲殻類のサワガニ、ヨコエビ、ヌマエビやテナガエビ類、ダニ類のミズダニ類などが普通に生息する。軟体動物ではカワニナが普通。扁形動物のプラナリア類も見られる。
昆虫類は最も豊富で、様々なものが見られる。まず、以下の群はその主力が渓流性である。また、これらは渓流の動物群集を考えた場合にも主力である。
カゲロウ目
トビケラ目
カワゲラ目
以下の群は限られた種が渓流に生息する。
トンボ目(カワトンボなど)
アミメカゲロウ目(ヘビトンボなど)
カメムシ目(ナベブタムシ、シマアメンボなど)
ハエ目(ユスリカ、アミカ、ブユ、アブなど)
コウチュウ目(ゲンジボタル、ドロムシ、オナガミズスマシなど)
これらに共通する特徴として、以下のようなものがある。
偏平な体を持つ。(ヒラタドロムシ、ヒラタカゲロウ、カワゲラ)
岩に張り付くための吸盤をもつ。(ハゼ、アミカ、ブユなど)
岩の表面に張り付いた巣を作る。(ユスリカ、トビケラなど)
渓流で特に種分化が起こった例が幾つか知られている。そのため、ナガレを名に持った動物がある。
ナガレヒキガエル
ナガレホトケドジョウ
ナガレタゴガエル
また、渓流植物には近縁の非渓流種がある例がある。
アキノキリンソウとアオヤギバナ
ゼンマイとヤシャゼンマイ
ツワブキとリュウキュウツワブキ
渓流の生物を群集として見た場合、これを渓流群集という。
渓流群集の特徴は、外部からの有機物に大きく依存することである。水中での生産はケイソウなどによるもので、それ自身も小さいものではない。例えばアユの成長は、ほとんど完全にこれに依存している。しかしそれ以上に多くの有機物が、落葉などの形で外から流入している。渓流の落ち葉には水生不完全菌が生育しており、それらを含めて水生昆虫の餌となっている。それ以外にも、陸上動物が渓流の動物の餌となる例が少なくない。渓流の流れの上には周囲の森林の樹冠がかぶさっており、新緑の季節にはそこから数多くの食葉性昆虫、特に蛾の幼虫が水面に落下し、魚などの重要な餌となる。有名なのはイワナで、水面に落下したり近づく昆虫から、泳ぎ出たヘビに至るまで餌となっていることが知られている。
同時に流出する量も多い。落葉やその分解物はどんどん下流に流れ出る。それらは最終的には河口域で分解される。また、水生昆虫は幼虫である例が多く、羽化して脱出したものは周囲の陸生動物の餌となる。魚類がそれを食う例も多い。
渓流の周辺域は、水際を生活の場とする生物と、森林の中でそのような地形を生活の場とする生物の見られる場所である。
水際を生活の場とするものとしては、植物ではしぶきのかかる岩の上に生育するものが挙げられる。渓流の石や岩には植物が発達しない場合もある。