深発地震はプレート沈み込み帯の地下深くで発生し、それ以外の場所では海嶺下やホットスポット周辺も含めてまったく発生しない。そのため、世界で深発地震が発生する場所は限られている。
プレートの収束境界で一方のプレートが沈み込むと、周囲のマントルに比べて低い温度を保ち剛体としての性質をもったまま深さ670kmまで沈み込む。しかしそこは遷移層と下部マントルの境界であり[3]、これ以深では周囲のマントル密度が急激に増加するため、プレートがそれ以深に沈むことが難しくなり、スタグナントスラブが形成され、プレートが反ることになる。このためプレートに応力が加わり、プレートがそれに耐えられなくなったときに地震が発生する。
プレートの重みでプレートが引きちぎられるような力が加わると正断層地震に、スタグナントスラブにプレートが押し付けられるような力が加わると逆断層地震になる。深さ670km付近では後者が、それより浅い場所(200?500km程度)では前者が多い。
丸山茂徳らは、オリビンがスピネルに相転移する際に、岩石の弱い部分に変形が集中し発生すると主張している。ただし深発地震の震源は深さ500~670kmに広く分布する一方で、オリビンからスピネルへの相転移は深さ650?670kmでしか起こらず、この説は疑問視されている。[4]
深さ600kmで発生した場合、陸上観測点との距離は最低でも600kmあり、ある程度規模の大きな地震でなければ捉えられない。そのため、ふつう深発地震といえば比較的大規模なもの(マグニチュード6以上)を指す場合が多い。近年では地震計の性能向上などにより、小規模な深発地震も観測されている。
地震波は剛体であるプレート上を伝わりやすく、マントル中はやや伝わりにくい。そのため深発地震の震源からは、地震波は沈み込んでいるプレートに沿って斜め上方に伝わり、震源直上(震央)よりも、震央から離れた場所で大きな揺れとなる場合が多い。たとえば日本海やロシア沿海州の直下で発生した深発地震で、日本の東北地方太平洋側で有感となり、日本海側やロシアでは無感となる例が多数ある(異常震域)。
また、深発地震の地震波はすぐにマントル中を伝播する。マントルの地震波速度は大きく[5]比較的早く遠方に到達する。
深発地震は、P波が一度地表面で反射して伝わるpP波が明瞭である。P波とpP波の到達時間差から、震源の深さを概算することができる。
おおむねアメリカ地質調査所の記録によった。Mwはモーメントマグニチュード、mBは実体波マグニチュードである。
2007年7月16日:日本海京都府沖(Mw6.8、深さ316km)
2006年11月13日:アルゼンチン内陸部(Mw6.8、深さ547km)
2004年7月25日:インドネシアスマトラ島沖(Mw7.3、深さ576km)
2002年6月29日:ロシアウラジオストク周辺(Mw7.3、深さ567km)
2001年7月3日:マリアナ諸島周辺(Mw6.5、深さ298km)
2000年8月6日:日本鳥島近海(Mw7.3、深さ404km)
1999年4月8日:ロシアウラジオストク周辺(mB6.5、深さ576km)
1994年6月9日:ボリビア(Mw8.2、深さ631km)(ボリビア巨大深発地震)
1984年3月6日:日本鳥島近海(Mw7.4、深さ454km)
注釈^ 稍深発地震と深発地震の境界を300kmとする研究者も多い。菊地正幸(2003年)『リアルタイム地震学』、東京大学出版会、p.160、ISBN 4-1306-0743-X
^ 660kmとする研究者も多い。以下の670kmとの記述箇所でも同様。
^ 2000年代の今日、この呼称はあまり用いられない。ただし670kmの深さに境界があることは広く認められている。
^ 熊澤峰夫、丸山茂徳(2002)『プルームテクトニクスと全地球史解読』、岩波書店、pp.207-8、ISBN 4-0000-5945-9
^ Dziewonski & Anderson(1981)によれば、深さ600kmでのP波速度は秒速10kmである。これは地殻中のそれのおよそ2倍弱である。
表・話・編・歴地震
地震のメカニズム前震 - 本震 - 余震 - 震源域 - 震源 - 震源モデル - 発震機構 - マグニチュード - 活構造(断層 - 褶曲) - 応力 - ひずみ - プレートテクトニクス
地震の種類内陸地殻内地震 - プレート間地震 - 海洋プレート内地震 - 火山性地震 / 群発地震 - スロースリップ - 定常すべり