法科大学院導入が決定された当初、新司法試験の合格者は、修了者の7〜8割になると言われていた。これは、司法試験制度改革審議会意見書において「法科大学院では、その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」との意見が盛り込まれたことに基づく[3]。
司法制度改革審議会の議論では、各大学の要望として「7割とか8割ということが多い」が、「どの大学も7割、8割ということは制度設計としてはあり得ない」と認識されている[4]。
法科大学院の定員と新司法試験の合格者数から単純計算しても、そのような高い合格率にならないことは明白であった。合格率が5割を下回るのは明らかであるし、不合格となっても3回まで受験できることを考えると2割を下回るとする試算もある。このような新司法試験の合格率の試算などから、「才能ある人材を引き付けるには余りにもリスクが大きく、新たな法曹養成制度の中核と位置付けられた法科大学院制度を崩壊させかねない」との声明が法科大学院関係者有志(教授代表者等)からなされた[5]。なお、2006年(平成18年)に行われた第1回の新司法試験の合格率は、48.35%、2007年の第2回の合格率は、40.18%だった。当初喧伝された合格率を見込んで、企業を退職して司法試験にかける社会人入学生も少なくなかったため、合格率が想定より低い現状は、こうした社会人学生の間に人生設計そのものへの不安を広げている。(事実上、法科大学院構想は破綻した) (詳細は、新司法試験の項目の該当節参照)。
法科大学院は、旧司法試験合格者の輩出がない又は極端に少ない大学にも設置されている。
法科大学院の学費は高額なため、経済的事情により進学の機会平等が阻害される危険がある。なお、審議委員の一人は「これからの時代の高等教育制度の下で、経済的事情で、例えば大学あるいは大学院に進学できないという状況に追い込まれる人というのは、そんなにたくさんいるんだろうかと考えると、まず社会的な発展段階から考えてそんなにいるはずがない。」と指摘した[6]。しかし、この指摘には明確な根拠はない。(財力のない人を法曹界から遠ざけている)
旧司法試験による法曹養成システムと比較しても、法科大学院の期間について、法曹資格を取得するまでの年限が長くなっていることから、資格取得期間の短縮を求める意見が日本経団連[7]などから提示されている。
新司法試験合格者数は、2010年頃に3,000人とすることが予定されている。しかし、文部科学省・大学は、法科大学院卒業生の新司法試験合格率を高くするため、新司法試験合格者数をさらに9,000人まで増加させるよう主張している。この点について、実社会において法曹がどの程度の需要があるのかという具体的な議論や検証が十分に行われていないとの批判がある。
なお、2006年12月1日現在での弁護士会登録人数は23,000名余りに過ぎないが、司法書士等の隣接法律関連資格者数も広義の法曹に含めるべきであるとの意見も根強い。欧米諸国では司法書士等にあたる者はNotaryやSolicitorとして広義の法曹として扱われており、日本の弁護士の業務は英国等における狭義の「法廷弁護士」(バリシター)が担当する業務に相当することが多いためである。
日本の法科大学院の課程を修了すれば「法務博士(専門職)」の学位が得られる。これは米国のJDをそのまま訳したものである。しかし、日本と米国の国情の違いからこの学位を名ばかりのものと指摘の声も。
「過疎地への法曹の供給」ということが、この法科大学院の理念の1つであったはずであるが、実際は関東圏・関西圏に法科大学院が集中している。これは当初の理念を歪めかねないものである。しかし、人口の多いところに教育機関が多く設置されるのは当然予想されたことではある。
2005年度入試においては入学者が定員割れとなる大学院が散見された。応募人数は募集定員を上回っている。
アメリカにおいてはロースクールの修了後(司法試験は各州毎に行われ、ばらつきはあるものの)概ね7割程度の合格率[8]が確保される。それに対し、日本では法科大学院の課程を修了した者の半数以上が司法試験に合格できないシステムとなっている。
アメリカでは学部段階に法学部が存在せず、法学教育は専門職大学院であるロースクールのみで行われている。これに対して、日本の法科大学院に進学する者は学部段階で法学部を卒業している者が大半(入学者全体の73.9%(平成19年度)・71.7%(平成18年度))[9]であり、日本の制度では、法学部で学んだことを前提とすると、学部段階で4年間、法科大学院で2年(既修者コース進学の場合)、司法研修所で1年間の教育を受けて、初めて法曹となれる制度となっており、アメリカにおける一般的な法曹養成コースであるJD取得過程の期間が3年間であることに比べると長い。しかし、成文法国における法曹教育には判例法国のそれに比べて時間がかかるとの指摘もあり、一概には比較できないとも言えよう。
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法科大学院制度や司法試験制度をめぐって、各界各層から様々な意見が出されている。主な意見として次のようなものがある。
法科大学院関係者から
大学は合格率が2〜3割前後になったことで、新司法試験における競争への対策をしなければならなくなる。多様なバックグラウンドを有する学生を集めるという理念を達成することが困難になると指摘する。合格率の向上など、法科大学院の課程修了者の大半が早期に合格できるシステムを求めている[5]。
従来、法学部では、実務教育が全く行われてこなかった。そのため、司法試験に合格しても、司法研修所で再教育をしなければならなかった。それを改め、理論と実務の統合を図るために、法科大学院をつくったのであるが、現状は、理論は研究者、実務は実務家と分断されたままである。しかも、新・司法試験は相変わらず判例や法解釈が中心なので、予備校に頼る学生は少くない。