人間がはじめ溺れ始めると、息を無意識に吸おうとする。それが結果としてパニックを招く。何とか空気を吸おうと必死にもがくため、動悸を早めてしまい、もっと空気を必要とさせる。動くために必要な酸素がどんどん消費されるため、頭に回る酸素を少なくさせてしまい、さらに正常な判断ができなくなってしまう。そして、徐々に無意識に近い状態になっていく。
人間がもし水を飲んでしまったり、飲みそうになった場合は、さらにちゃんと飲み込もうとするだろう。それゆえ、もし無意識な状態の人間であれば、従順なまでに水をどんどん飲み込んでしまうのだ。もし水が喉の中の喉頭あるいは声帯に入れば、気管が凝縮して、侵入を拒む。肺には普段、この水の侵入を防ぐ機能が働いているが、一度水が肺の中に入ってしまえば、この機能は途端に無意味になる。
しかし、肺に水が入る前に死んでしまうと、肺には空気が入っているし、飲み込むという運動がないので肺には水が入らない。このことを「乾燥した水死」と呼ぶ。しかし、この水死は前述のと比べると圧倒的に少ない。また前述の水死を「濡れた水死」と呼ぶ。
酸素欠乏のため、徐々に無意識の状態に陥り、肺の中では化学変化がおきる。つまり、心臓の働きを止めてしまうのである。この心停止で、血液の循環もとまり、酸素も全身に循環されなくなる。心停止は臨床による死としても知られる。まだ、この状態になっても助かる可能性はあるが、脳は酸素を必要とするので、脳に重大な障害を残し、いずれは脳死と呼ばれる状態になる。生き残ったとしても遷延性意識障害になる可能性が高い。
体が成長過程にある子供の場合、鼻と耳とをつなぐ耳管が大人より太く短い。その為、息継ぎに失敗すると耳管の奥まで水が入り、耳管の奥にある中耳内の圧力が高まり中耳の内出血を起こす。更に、症状が進むと三半規管の麻痺を起こしてめまいを発症(大人でいうとひどく泥酔した状態)し、症状がひどくなると意識を失って、呼吸出来ずに溺死に至る。この要因は、泳ぎが上手な子供に多い。
溺れた人を水死させないためには、早期の発見、意識確認と早期の通報と早期の応急救護が必要である。一般的に、心臓停止では3分たてば死亡率が50%、10分たてばほとんど生存が見込めなくなる。他には呼吸停止の場合、10分で死亡率が50%、30分たてば殆ど生存は見込めない。しかも、救急車に通報をして1分以内に救助にくる可能性は皆無に等しい。
応急救護措置の簡単な流れ(ずっと、意識がない場合)
負傷者に意識があるか、ないか確認する。
助けを求め、気道を確保する。
十分な呼吸をしているか、負傷者の口に自分の耳を持っていき確認する。
呼吸がない場合、2回人工呼吸をする。
また、反応があるか、ないか確認する。呼吸、咳、動き。
反応がない場合、心臓マッサージと人工呼吸を30:2の割合で行う。
それを4回続けた後、循環のサインがあるか確認する。
それでも反応がない場合、救急車が来るまで、続ける。
ただし、第三者が不慣れな応急救護のためかえって、事故者の症状を悪化、死亡させてしまうこともあるので、まずその場に医者や看護師がいないかを確かめ、その人の指示に従うことが必要である。なお海外においては、善意による応急手当てで容態を悪化させてしまっても、法的な責任を負うことはない(善きサマリア人の法)が、日本においてはそのような法律は存在しない。そのため、善意による応急手当であっても、傷害罪として警察によって逮捕、起訴されるリスクを負う可能性がある。
ただし、善意の応急処置によって事故者の容態を悪化させたとしても、重大な過失がなければ民法698条の規定により、事故者やその家族からの損害賠償請求が認められることはない(緊急事務管理)。しかし応急処置において重大な過失があり、事故者の容態を悪化させた場合は、損害賠償請求を受けて法廷で争う可能性がある。
事件性のある水死体は色々調べられる。例えば、2004年(平成16年)11月奈良で起きた小学一年生殺害事件がそうである。被害女児の死因は溺死であった。そのときの彼女の気道や胃や肺などにたまった液体や付着物が調べられた。その液体が風呂の水なのか、どこどこの湖の水であるとかが調べれば分かる。動物性プランクトン(アメーバ、ミジンコetc)や植物性プランクトン(珪藻類など)や藻などである。
また事件性のある水死体の特徴として、生前に犯人に付けられた損傷が肉体膨張などにより認識しづらくなり、また流されているときについた損傷なのか(木などの漂流物や、水中動物とか)分からなくなる。
水死、溺死は自殺の手段としても知られる。いわゆる、入水自殺というものである。有名なところで太宰治や一緒に自殺した山崎富栄などがいる。しかし、自殺志願者の中には、死後自分の体が水分を吸い、全身がブクブクに膨張し誰だか分からないような醜い姿になることを嫌がる人間も多い。加えて、体内部で腐敗したガスのせいで浮上してしまうことがあり、自分の体が、自分が死後野次馬の視線に晒されることも嫌っている。季節や水温やらの状況にもよるが、腐敗ガスによる浮揚力は20kg?30kgのおもりをつけても浮く力がある。
また自分の遺体がどこに流れ着くか分からず、それが他殺遺体なのか自殺遺体なのかの判別も難しく、ただ目立つだけの自殺である。
水死に関わる裁判は多く起きている。特に、学校のプールを管理する教師や行政や、部活をやっていて溺れた場合などの子供を管理する監督者に対する過失が問われる裁判が起きており、中には水死した子供の親に対して過失相殺が認められる事例も多く見られる。
海水浴の場合
単独で、一人でできるだけ行かない。
ビールなど飲酒後は絶対に泳がない。
自分の泳ぐ力を鍛錬し、また自分の泳ぐ力を過信しない。
波が人を飲み込む力を侮らない。
海の場合、急に深くなっている場所もあるので細心の注意を払う。
子供がいる場合、絶対に目を離してはならない。
天候や水温に常に注意を払う。
「遊泳禁止」の場所では泳がない。
台風や低気圧などで海が荒れている時に泳がない。
プールの場合
鼻の奥に「ツーン」とする痛みを感じたら、中耳の奥に水が入り込んでいて、めまいを発症する前兆なので、たとえ泳ぎが上手くても直ちに泳ぎを中止する。
学校やレジャー施設のプールでは、たとえ子供がプールの底に沈んでいても他の子供には事態の深刻性が把握できないので、担当教諭やプール監視員は特に注意が必要である。発見したらただちに子供をプールサイドに引き揚げ、人工呼吸などを施す。
給排水口には近づかない。
川の場合
自分がいる場所で雨が降っていなくても、ダムの放流・川の上流部での悪天候による短時間での突然の水位の急激な上昇に注意する。