毒物及び劇物取締法では、人間にとって毒にあたる工業用・産業用・実験用の物質を、生命により重篤な影響を及ぼす毒物(医薬用外毒物)と、毒物ほどではないが不都合を与えうる劇物(医薬用外劇物)に分類して、その取扱いに制限を加えている。
また、薬事法では、医薬品に指定されている物質のうち、効能を示す量と毒性を示す量の差が小さい物を毒薬、劇薬としてその取扱いに制限を加えている。(一般では「毒薬」は「生物を殺す薬」を指す場合が多い。しかし、法令上及び医療の世界では「治療や検査等に用いられる医薬品のうち、その毒性の高さから指定を受けているもの」を示す。つまり、医師から処方された「毒薬」を日常的に服用している患者も普通に多数存在している。意味の混同に注意)
そのほか、有毒物質は種類により食品衛生法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)、労働安全衛生法、農薬取締法などによって規制される。
毒性物質のいくつかは原料や反応の中間体など様々な形で利用されている。最も単純かつ明快で非人道的ながら幅広く用いられた用法は「毒殺」など暗殺の手段であるが、その一方で苦痛を引き起こさない毒は安楽死にも使われる。また殺虫剤や抗生物質は選択毒性を利用して特定生物のみを環境中から排除するために用いられる。かつては船舶の船底や定置網にフジツボなど海洋生物が付着するのを防ぐ意図で有機スズ化合物を含む塗料が用いられたが、これは環境汚染を引き起こすとして禁止されるようになった。
毒性物質の利用例として工業製品の製造や日常生活等で目にするもののいくつかを挙げる。
アルシン(毒物) ? 半導体の製造(n型シリコン膜の形成)
アンモニア(劇物) ? 窒素肥料の製造
シアン化ナトリウム(毒物)、シアン化カリウム ? めっきの溶液
ジボラン(毒物) ? 半導体の製造(p型シリコン膜の形成)
テトラクロロエチレン ? ドライクリーニングの溶剤
鉛二酸化鉛 ? 鉛蓄電池の電極
二硫化炭素(劇物) ? ビスコース(レーヨンを得るための中間生成物)
人体に影響を及ぼす成分であることを逆に利用することで医療の世界で医薬品等として用いられている物質もある。以下はその例である。
ボツリヌス菌が産生する毒素を極めて微量に筋肉内へ注射すると、筋肉の動きが抑えられる。ボトックスという名称で知られており、局所ジストニアなど攣縮性疾患の治療や美容外科に用いられている。
ナス科の植物(ハシリドコロ等)に含まれる自然毒の成分であるアトロピン及びスコポラミンは、日本薬局方に収載されている医薬品でもある。
蛇毒は、血栓防止薬などとしての利用が研究されている。
なお植物に含まれる他の生物に影響を与える成分が、「たまたま人間の役に立つ」場合もあり、これらはいわゆる薬草となる。
単体
フッ素 (F2)、塩素(Cl2)、オゾン(酸素の同素体、O3)、リン(白リン・黄リン、P4)など
セレン (Se)、ヒ素 (As)など
カドミウム (Cd)、水銀 (Hg)、鉛 (Pb)、タリウム (Tl) など
プルトニウム (Pu)、ポロニウム (Po) など
無機化合物
塩化水素(HCl)、フッ化水素 (HF)、シアン化水素 (HCN)、硫化水素 (H2S)、一酸化炭素 (CO)など
シアン化カリウム(青酸カリ、KCN)、シアン化ナトリウム (NaCN)、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ、NaOH)、アジ化ナトリウム (NaN3)など
塩化水銀(II)(昇汞、HgCl2)、二クロム酸カリウム (K2Cr2O7)、塩化金酸 (HAuCl4)、硝酸銀 (AgNO3) など
有機化合物(生物由来)
アコニチン、イボテン酸、エキサイトトキシン、エラブトキシン、クラ−レ、コルヒチン、サキシトキシン、シガトキシン、シクトキシングラミシジン、テタヌストキシン、テトロドトキシン、ドウモイ酸、トリゴネリン、ニコチン、パリトキシン、ボツリヌストキシン、ムッシモール、リシンなど