死刑制度の是非については世界的に多くの議論があり、死刑制度を設けている国と設けていない国がある。また、法律上は死刑制度を設けていても実際には死刑を執行していない国もある。また、一般犯罪においては死刑を廃止し、国事犯(外患誘致やスパイ行為など)や軍事法廷(軍法会議)における脱走罪・敵前逃亡・利敵行為などに対してのみ死刑を残している国もある。
根拠
目的刑論(一般予防論・特別予防論)
応報刑論 (敵討ち)
粛清
一般予防説に従えば、「死刑は、犯罪者の生を奪うことにより、犯罪を予定する者に対して威嚇をなし、犯罪を予定する者に犯行を思い止まらせるようにするために存在する。」ということになる。
特別予防説に従えば、「死刑は、矯正不能な犯罪者を一般社会に復して再び害悪が生じることがないようにするために、犯罪者の排除を行う。」ということになる。
日本やアメリカなど、死刑対象が主に殺人以上の罪を犯した者の場合、死刑は他人の生命を奪った(他人の人権・生きる権利を剥奪した)罪に対して等しい責任(刑事責任)を取らせることということになる。
一般的な死刑賛成論者は予防論と応報刑論をあげるが、応報論の延長として敵討つまり、殺人犯に対する報復という発想もある。近代の死刑制度は、被害者のあだ討ちによる社会秩序の弊害を国家が代替することで無くす側面も存在する。国家の捜査能力が低い近代以前は、むしろ仇討ちを是認あるいは義務としていた社会もあり、それは被害者家族に犯罪者の処罰の責任を負わせて、以て捜査、処罰などの刑事制度の一部を構成させていたという側面もある。
殺人などの凶悪犯罪では、裁判官が量刑を決める際に応報は考慮されている。死刑反対派は、近代刑法はこのような応報刑を否認する事を基本原理としていると主張するが、懲役刑の刑期の長短などが実際には応報に基づいておこなれている。
日本では日本国憲法下で初めて死刑を合憲とした判決(死刑制度合憲判決事件、最高裁判所昭和23年3月12日大法廷判決)において、応報論ではなく威嚇効果と無力化効果(隔離効果)による予防説に基づいて合憲とされた。
歴史的には、イギリス等のように窃盗罪といった微罪、もしくは不倫した女性といった道徳に反する罪に対しても死刑が適用されたが、21世紀現在、死刑を存置する国家では概ね他人の生命を奪う犯罪のうち、特に凶悪な犯罪者に対し死刑が適用される傾向がある。ただし国によっては麻薬密売や児童人身売買といった生命を奪わない犯罪や、戦時に軍隊からの脱走兵に対し適用される場合がある。
日本において死刑判決を宣告する際には、永山則夫連続射殺事件で最高裁(昭和58年7月8日判決)で示した死刑適用基準の判例を参考にしている場合が多い。そのため永山基準と呼ばれ、第1次上告審判決では基準として以下の9項目が提示されている。
犯罪の性質
犯行の動機
犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性
結果の重大性、特に殺害された被害者の数
遺族の被害感情
社会的影響
犯人の年齢
前科
犯行後の情状
以上の条件のうち、たとえば4項では「被害者2人までは有期、3人は無期、4人以上は死刑」といった基準があるようにいわれるが、実際の判例では保険金目的殺人や営利誘拐殺人などでは被害者1人でも死刑(例:吉展ちゃん誘拐殺人事件)になるため、金銭がらみの殺人犯は極刑になる場合が多い。その一方で、被害者4人以上でも新宿西口バス放火事件(死者6人)や深川通り魔殺人事件(死者4人)では、「心神喪失者の行為は罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。」という刑法39条に拠って、加害者の犯行時は心神耗弱であったことが認められ、法律上の刑の減軽として刑法68条1号の規定により、無期懲役の判決が確定する場合もある。
また戦前に発生した最悪級の殺人事件であるが東京市電運転手連続殺傷事件(死者7人負傷者10人)でも加害者に対する朝鮮人差別が一因にあるとしたためか、無期懲役が判決されている。また、東京地下鉄サリン事件の実行犯である林郁夫は、自首が情状酌量の要素として認められたためか、無期懲役となっている(サリンを製造しただけでも死刑判決を受けているオウム真理教幹部もいる中で、実行犯としては唯一、死刑を免れている)。そのため犠牲者数だけで死刑が適用されるわけではなく、犯罪の性質も含めて判例に依拠しつつ判断しているといえる。
そのため犠牲者1人であっても犯行態様が極めて残虐であり、共に同等の責任を負うべきであるとして共犯2人が死刑になる場合(例:福岡病院長殺人事件)もある。また2004年に死刑判決が確定した警察庁広域重要指定118号事件では犠牲者2人に対し犯行グループ6人のうち3人(死刑求刑は5人)の死刑が確定しており、犠牲者よりも多くの犯人が死刑を宣告される場合もある。このように犠牲者よりも多くの者が死刑が言い渡されるのは、残虐な殺人行為に応分の処罰が必要であると判断された為であるといえる。ただし、何が「残虐」で、何が「残虐」でないかは極めて主観的な問題であり、客観性に乏しく、個別の事件で基準の違いが大きすぎるため、公正さが欠けている部分がある。また同じような罪状であっても厳罰化と寛容化といった時代的要因も存在するため、判断のバラつきもある。
個別の刑罰の抑止効果は、死刑、終身刑およびほかの懲役刑も含めて、統計上効果が実証されていない。一般論として、死刑反対派は死刑による犯罪抑止効果の統計的証拠がないこと、死刑賛成派は死刑代替終身刑による威嚇効果が十分でないことを指摘する。抑止効果の分析方法には地域比較と歴史的比較がある。地域比較では国や州の制度の違いによって比較が行われる。
地域比較としては、アメリカの死刑制度の無い州に比べて死刑制度のある州の凶悪犯罪発生率は統計的に高い。反対派はこれは抑止効果の不在とし、賛成派はこれは高い犯罪率に対する州政府の対応の結果であると主張する。先進国で死刑を実施している国としては、日本、アメリカ、シンガポール、中国台湾などがあるが、アメリカでの犯罪率が高く他国は犯罪率が低いという事情もあり、国家や州の比較、すなわち地域比較そのものに意味がないとの意見もある。
時代的比較では、死刑が廃止された国での廃止前・廃止後を比較する試みがされる。しかし制度や社会環境の変化も伴うため、分析者によってさまざまな結論が導き出されている。ただし廃止後に劇的に犯罪が増加・凶悪化した典型的ケースはこれまでにはない。劇的に犯罪が減少したケースもない。
精神状態が健常な死刑囚に聞き取りを行った際に、ほとんどの者が死刑に多少なりとも恐怖を感じていると告白しているため、死刑囚個人に対しては威嚇効果がある。死刑という制度自体が犯罪の抑止効果があるかは前述でも述べられているが不明である。
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の宮?勤元死刑囚も恐怖を手紙で訴えている。