歴史を通じて見ても、歩兵はほとんどの軍隊において核となる存在であった。これは歩兵の持つ戦闘能力の柔軟性や多様性による部分が大きい(安価な戦力という側面もある)。
馬がまだ貧弱な品種ばかりで車輪もようやく発明されたばかりの古代社会においては騎兵部隊や戦車部隊といった兵種はごく限られた貴族が担当するのが常であり、従って騎馬民族を除く殆どの文明の主力の部隊は歩兵だった。そもそも新大陸や太平洋の諸島のように車輪どころか馬とその他の大形の家畜すら知らない文明であれば歩兵のみが戦力となり機動力や突進力、兵站面での運搬能力がそこで大きく削がれた。それは外部から車輪や大型の家畜が持ち込まれるまで、それこそ現代に至るまで続いた。古代ギリシアでは、ポリス(都市国家)の市民を担い手とする重装歩兵が誕生し、ファランクスと呼ばれる密集隊形を組んで戦う戦術が用いられるようになった。ペルシャ戦争においては、この戦術によりペルシャ軍を何度も打ち破っている。ギリシアではこの他にもパノプリア(完全な鎧の意)やぺルタステス(軽装兵)といった歩兵も登場した。古代ローマは、これをいわゆるローマ軍団におけるレギオンという形でより洗練された編制、隊形、戦術に発展させ、その構成要員も数千人にまで達するようになった。
民族大移動によりローマ帝国が崩壊すると、ヨーロッパにおいてはその後一千年程、歩兵に代わり騎兵が優位を占める時代となった。しかし、その後の長弓の発達を背景に、百年戦争のクレシーの戦いやポワティエの戦いにおいて、よく訓練された弓兵、歩兵によりフランス騎士団が大打撃を被ったことが転機となった。これ以降、騎兵はより軽装に、より機動性が重要視されるようになり、一方歩兵は再び軍隊における最も重要な存在に復権した。
その後、マスケット銃などの初期の銃火器が登場したが、長弓は、それらよりも射程・命中率・攻撃力の集中・発射速度の点で優れており、銃火器と並行して数百年の間使用されつづけた。しかし長弓は効果的に使うためには非常な熟練を要する武器であり、実戦で戦えるまで訓練するのには長い時間がかかった。このような欠点とは反対に、テルシオ隊形や三兵戦術の研究が進み、また数週間から数ヶ月訓練した多数の人員と豊富な資金と銃や火薬の製造所さえあれば編制可能なマスケット銃兵の部隊が用いられるようになった。また中世末期より産業化が進行し、田園的な貴族制は廃れて、都市に人と富が集中したことが、訓練は十分ではないものの大規模な歩兵部隊の迅速な招集を可能にした。
騎兵の機動性の向上、強い打撃力に対応して、歩兵にとっては槍が身を守る為の重要な武器となった。当初はマスケット銃兵に槍兵(パイク兵)が混成され、発砲の合間銃兵を護衛していたが、銃剣が普及するようになり銃兵に刀剣戦闘力が付加されるに至り、槍兵は姿を消し、近代の歩兵の姿が確立され始めた。
歩兵の輸送手段は、それまでは徒歩や船、馬であったが、19世紀より鉄道が使われ始め、1890年代以降いくつかの国では自転車が採用された(馬もしばらく併用されている)。第二次世界大戦では日本陸軍の歩兵が自転車で移動し、大成功を収めた。機動性における大きな革新は、1920年代以降より始まり、自動車を使った自動車化歩兵の部隊が生まれた。この頃から、移動中の兵士の安全を確保することの重要性が認識されるようになり、移動時に装甲車を使用する機械化歩兵が編成されるようになった。
現代の歩兵は、装甲車や火砲、ヘリコプター等航空機に支援されて行動するが、依然として地上の特定の地域を占領、確保することができる唯一の兵種である。このため戦争遂行にとって必要不可欠な存在でありつづけている。また個人が携帯出来る武器の火力が大きくなり、ゲリラ戦や市街戦などの非対称戦争が増加する傾向から歩兵に高度に専門的な訓練を施した特殊部隊が各国で配備されつつある。
歩兵は作戦行動中は主に徒歩で活動する兵士の総称であるので、その装備や技能、運用形態や戦術的役割によっていくつかに分類ができる。
ここでは現代における師団・旅団レベルにおける歩兵の基本的な分類を述べる。(Field Manual 100-5を参考)
軽歩兵 (light infantry)
最も基本的な歩兵であり、比較的に軽武装の歩兵を指す。ほとんどの地形、天候に左右されることなく戦術的に運用することができる。徒歩や装甲兵員輸送車(APC)などで移動し、交戦地域で速やかかつ柔軟に展開することができる能力を持つ。その特性ゆえに市街戦などの複雑な地形における戦闘の主要な戦力であると考えられている。
空挺兵 (airborne infantry)
航空機で戦略的な長距離を迅速に移動し、空港施設に頼ることなくパラシュート降下で着陸が可能な歩兵を指す。交戦地域に展開した後は軽歩兵と同様の能力を発揮する。
空中強襲歩兵 (air assault infantry)
ヘリコプター等の航空機で輸送され、交戦地域に速やかに展開、撤収する空中機動作戦が可能な作戦的、戦術的機動力を有する歩兵を指す。敵の支配地域に潜入し、後方連絡線を切断、重武装の部隊に対する奇襲、破壊工作を実行することができる。
レンジャー (ranger units)
特殊な作戦において運用されることを想定して訓練され、どのような極限状況においても特別に高度な戦闘力を発揮することが可能な歩兵である。