宇宙世紀0153年、地球圏を統治している地球連邦政府は形骸化し、宇宙に存在する各サイドは連邦政府の統制を離れた独自の道を歩み始め、各地で紛争が勃発する「宇宙戦国時代」に突入していた。
そのなかでもサイド2に存在するザンスカール帝国はギロチンによる恐怖政治と、救済と慰謝を基調とするマリア主義を掲げて急激に民衆の支持を獲得し、地球に向けてベスパと呼ばれる帝国軍を派遣した。ベスパはヨーロッパの都市 ラゲーンを制圧下に置いた後、地球侵攻のための拠点とする。また、ザンスカール帝国への抵抗活動を続けている組織 リガ・ミリティアの構成員たちも、それに対抗してヨーロッパで散発的な抵抗を始める。
こうした中、ヨーロッパの都市 ウーイッグ近くに存在するカサレリア近辺にてパラグライダーを操っていた主人公の少年 ウッソ・エヴィンはベスパのMS(モビルスーツ) シャッコーとリガ・ミリティアに所属する小型戦闘機との戦闘に巻き込まれ、シャッコーに引っかかり取り付いた挙句、パイロットを引き摺り落としてMSを奪ってしまう。
これを発端に、その後ウッソはリガ・ミリティアと共に、数奇な運命をたどることになる。
宇宙世紀を舞台としたTVシリーズのガンダムとしては第4作にして最後のシリーズ(2008年現在)。主人公の設定は13歳と従来のシリーズから更に引き下げられた。これはSDガンダム世代の小学生に受け入れ易くするためである。同じ理由から旧作ガンダムを知らない世代でも理解できるよう、旧作とはほとんど関連を持たない内容になっている[1]。
物語序盤は明朗活発な主人公 ウッソ・エヴィンが幼馴染のシャクティ・カリンや憧れの女性 カテジナ・ルースを守るためにガンダムに乗り込み、トリッキーな戦法で敵を打ち負かすというシンプルな活劇としての方向付けがなされていた。だが終盤に近づくにつれ、宗教を背景とした民族主義などの難解なテーマが取り入れられるようになる。
また本作は、ギロチンが登場して首を切り落としたり、登場人物が悲惨な戦死を遂げるなど、他の富野由悠季監督作品にも見られるような暗く重い内容となった。そのようなシーンは次回予告ではっきりと描かれることが多く、「予告で名前を言われたキャラは死ぬ」とまで言われた。また、敵キャラクターも人間として描きこみ、単なる悪役とはしなかったそれまでのガンダムシリーズに比べ、本作では敵側に属するキャラクターには、かなり人命を軽視した残忍かつ冷酷な性格をしたものが多かった。
主役機 Vガンダムのデザインにはカトキハジメを起用、シンプルなデザインながらも合体変形機構を持った玩具性の高いものとなった。とりわけ視聴者の子供たちが真似て描くことができるシンプルさを要求されたという。また敵モビルスーツもファンに「ネコ目」と呼ばれたカメラアイやビームローター、車輪型のアインラッドといった従来とは一線を画す設定が取り入れられた。放映中や番組終了直後にはガンプラが多数販売されたが、その後はMG等のリメイクはされていない。
キャラクターデザインには逢坂浩司を起用した。他のガンダムシリーズとは違った優しいキャラクターのラインが特徴的で、ストーリーとは直接は関係の無いような細かな人物の動きも豊富である。監督である富野は自身の作品を褒めることが珍しい(本作についても「一番嫌いなガンダム」であると発言している)が、これらの部分が本作の救いであったと後日語っている。
また富野は本作の結末について、『機動戦士Vガンダム大辞典』では「とっても好きなエンディングなんですよ」と語っているが、『∀の癒し』では「現実に対する恨みつらみをこめたもので、何より作品として終わらせるというものになっていない」とも語っている。
音楽は千住明が担当した。アニメとしては当時珍しいフルオーケストラを起用した本作のサウンドトラックは、ガンダムファンからも千住ファンからも評価が高い。曲の収録風景を見学に行った富野は「幸せだ」と感じたという(富野は、スタッフはもちろん作曲家を褒める事もほとんどない)。千住は「Vガンダムを担当するに当たって、自分のもつ引き出しをすべて出し切るつもりで臨んだ」と語っている。また千住はアルバム「機動戦士Vガンダム〜交響組曲第二番 THOUSAND NESTS」(演奏:ポーランド放送管弦楽団、指揮:アンソニー・イングリス)を自身の代表作として語っている。曲調は、14年後に千住が音楽を手掛けた大河ドラマ「風林火山」に似たものが多く、「風林火山」が放送された時はガンダム・千住ファンの間で話題となった。 オリジナルサウンドトラックはCDで3枚が発売されており、千住明の手がけたサウンドトラック以外にも、特に1巻の「野辺の花」の後半パート(『Vガンダム』の前期OPテーマ「STAND UP TO THE VICTORY〜トゥ・ザ・ヴィクトリー〜」のアレンジ版、次回予告で使用)や、挿入歌「ひなげしの旅のむこうに」「いくつもの愛をかさねて」など人気の高い曲が数多くそろっている。但し未収録曲も多く(上記の「野辺の花」のピアノバージョンなど)、ガンダム・千住ファン双方から全曲の収録CD発売が強く望まれている[2]。
ウッソ役を担当した阪口大助は当時まだ19歳の新人であり、声優デビュー作であった。また、後に『機動武闘伝Gガンダム』のドモン・カッシュを演じた関智一がトマーシュ役で[3]、『新機動戦記ガンダムW』のヒイロ・ユイを演じた緑川光などが、各話に脇役として出演しているなど、後の平成ガンダムシリーズ3部作のメインキャラを演じる声優が数多く出演していた。
制作時の仮題は『新機動戦士ビクトリーガンダム』。第1話の絵コンテはこのタイトルになっている。
当初は劇場版『機動戦士ガンダムF91』のTVシリーズ化が予定されていたが、その話はなくなり本作が制作された。当時バンダイがサンライズ買収を予定しており、サンライズ上層部は主力作品であるガンダムの人気を再燃させることで、より有利に買収を行わせようと意図していた。富野はこの事実を知らずに製作に入ったと後年述べており、そのことについて今でも当時のサンライズ上層部からの謝罪が無く許せないとも語っている[4]。
そしてバンダイの意向によってバイク戦艦やタイヤMSといった玩具的な演出を強いられるなど、作品としての質より営業サイドの意見が優先された結果、監督自身が「当時のサンライズのドキュメンタリーである」と認めるほど本作の制作現場は追い込まれていく事になる。バイク戦艦については、戦艦を出せと言うバンダイ側担当の意向を受けた富野が半ばやけっぱちで言い出したものである[5]。
富野が2クール目終わりごろ、来年もガンダムをやるかと相談を受けたとき、「本気なのか?」と尋ねたら「本気だ。