重い原子であるウラニウムやプルトニウムの原子核分裂反応を使った核分裂炉に対して、軽い原子である水素やヘリウムを使った核融合反応を使ったのが核融合炉である。現在、日本を含む各国が協力して国際熱核融合実験炉ITERのフランスでの建設に向けて関連技術の開発が進められている。ITERのように、核融合技術研究の主流のトカマク型の反応炉が高温を利用したものであるので、特に熱核融合炉とも呼ばれることがある。
太陽のような恒星が輝くのは、すべて軽い元素の核融合反応による熱エネルギーによるものである。核融合炉が「地上の太陽」と呼ばれる由縁であるが、これら恒星は自身の巨大な重力で反応を維持できるのに対して、地上で核融合反応を起こするためには極めて高温にするか極めて高圧にする必要がある。
核融合反応の過程で高速中性子をはじめ、さまざまな高エネルギー粒子の放射が発生するため、その影響を最小限に留めて、安全に反応を継続する技術の開発や、プラズマの安定的なコントロ?ルの技術、超伝導電磁石の技術、遠隔操作保守技術、リチウムや重水素、三重水素を扱う技術、プラズマ加熱技術、これらを支えるコンピュータ・シミュレーション技術が必要とされ開発が続けられている。また、巨大科学に属する核融合炉の開発には莫大な資金投資が必要とされるので、今後は各国国民に上手に説明する技術も必要とされる。
原子核融合も参照
原子番号28ぐらいまでの軽い元素では、核子一個あたりの結合エネルギーが比較的小さいので、原子核融合によって余分なエネルギーが放出される可能性がある。しかし、原子核の電荷が互いに反発して反応を阻害するため、実際にエネルギーを取り出して利用できるような形で反応を起こすことが可能なのは、電荷がごく小さい水素やリチウムなどに限られると見られている。実際に核融合反応で発電するためには、原子核が毎秒1000km以上の速度でぶつかりあう必要がある。これを臨界プラズマ条件と呼び、この速度の実現には、D-T反応(重水素と三重水素の反応)では「発電炉内でプラズマ温度1億℃以上、密度100兆個/cm3とし、さらに1秒間以上閉じ込めることが条件」と、いうことになる。2007年10月現在、この条件自体はJT-60及びJETで到達したとされているが、発電炉として使用出来るまでの持続時間等には壁は高く、炉として実用可能な自己点火条件と言われる条件を目指し挑戦がつづいている。
利点
核分裂による原子力発電と同様、二酸化炭素の放出がない
核分裂反応のような連鎖反応がなく、暴走が原理的に生じないこと
水素など、普遍的に存在し、かつ安価な資源を利用できること また自然界中の無尽蔵の重水素やリチウムを活用していく構想があること
原子力発電で問題となる高レベル放射性廃棄物が継続的にはあまり生じないこと ただし炉壁のクズは高レベル放射性廃棄物となり、古くなって交換されるダイバーターやブランケットといったプラズマ対向機器も定義にもよるがほとんど高レベルに近い放射性廃棄物になる
従来型原子炉での運転休止中の残留熱除去系のエネルギー損失やその機能喪失時の炉心溶融リスクがないこと
などが挙げられる。
欠点
超高温で超真空という物理的な条件により、実験段階から実用段階に至るすべてが巨大施設を必要とするため、莫大な予算が掛かること
技術的困難による実現可能性への疑問 つまり1億度程度の高温でなければ十分な反応が起こらず、そのような高温状態では物質はプラズマ状態となり通常の容器に安定して収納することができず、そもそもこのような高温に耐えられる融合炉の材料が無い点等にある そのため磁力線を利用してプラズマを保持する磁気閉じ込め方式などが開発された
炉壁などの放射化への問題解決が求められること(後述)
放射能の危険性は炉心と燃料の三重水素(トリチウム)において依然として無視できないこと
安全性・危険性
反応の停止
核融合反応は核分裂反応と違って反応を維持するのが技術的に大変困難であり、あらゆる装置の不具合や少しの調整ミスが自動的に核融合反応の停止に結びつき、簡単には反応を再開出来ない。これは安全にとっては良い特性であり、現在の核分裂を使った商業用原子炉の根本的な危険性とは無縁である。
放射性廃棄物
核融合反応で発生する中性子は、核融合炉壁及び建造物を放射化する。放射化された核融合炉周辺の機械装置や建物が安全に本来の機能を発揮出来るような設計が求められる。たとえばITERにおいては2万トンの低レベル放射性廃棄物を発生させると推測されている(東海発電所の廃止措置に伴う物と同程度の量)。今後建設されるそれらの建物はすぐに廃棄できず既存の原子炉と同様30年程度の冷却期間が必要だと予想される。地層処分などの問題は現在の原子炉と同じ様に、費用の問題や環境汚染対策が必要である。古くなったダイバータやブランケット、灰は定期的に放射性廃棄物として発生するのでこれらの処理も必要となる。これらの発生頻度を最小化する部材技術の開発が求められる。また、三重水素の燃料化プロセスでも放射性廃棄物への配慮が必要となる。
三重水素の放射性
三重水素は放射性物質であり正しく管理される必要がある。特に環境への漏洩阻止は重要である。三重水素は容易に通常の水素と置き換わるので、漏洩した場合には三重水素を含む水や有機物が自然界で生じ、これらは生物の体内に容易に取り込まれる。三重水素水が生物に取り込まれた場合、通常の水と化学的な相違点は僅かであるため特定の臓器などに蓄積されたり体内で濃縮されたりする事はほとんどなく、通常の水と同じように排出される。生物が三重水素水を取り込んだ場合に半分が排出されるまでの時間(生物学的半減期)は、人の場合10日から14日程度とされる。また、三重水素を含む有機物を取り込んだ場合には、その有機物に見合った蓄積性と濃縮性を示す。ただし、三重水素は拡散しやすいため一点に留まらず、また水素が地球上に遍在するために三重水素が環境に放出されても希釈が早く生物濃縮なども受けにくい。このため、特定の食品などに濃縮されることなどは考えにくい。
三重水素の核兵器への転用
三重水素は初期の核融合爆弾にも用いられたが、後に、入手性/取り扱いともにより容易な重水素化リチウムが利用されるようになったため、わざわざ三重水素が水爆に利用されることは考えにくい。また、現在の技術では核融合爆弾の起爆には原子爆弾を用いる外に手段が無いため、既存の核保有国以外が製造することは容易ではない。ただし、通常の放射性物質同様、三重水素を原料にした汚い爆弾は容易に作ることができる。
運転中の放射線
核融合炉の運転中はプラズマから強烈な中性子線が放射されるため、さまざまな防護措置をとってもある程度漏れることが予想されている。現状、ITERで予定される運転中の放射線は、敷地境界で1年間に約0.1ミリシーベルト以下と自然放射線の10分の1に当たる量である。
超伝導電磁石
超伝導電磁石とそれを支える構造支持体は運転中に連続して大きな力を受け続け、起動や停止時にはその変化に応じた力学的ストレスを受ける。また異常に応じて磁力を突然切る場合は、瞬間的に大きな変化に耐えねばならず、中性子を浴び続ける構造支持体が脆化しても支えきれるだけの安全度を確保することが求められる。