有形力の行使が被害者の身体に現実に接触する必要があるのかどうかという点も問題となる。 例えば、人を狙って石を投げたがたまたま当たらなかった場合である。この場合、暴行罪が成立していないと考えると、暴行の未遂を処罰する規定はないので、不可罰という結論になる。 しかし、人に傷害を加える危険のある行為をしている以上、それがたまたま当たらなかったとしても暴行罪の既遂として処罰できるとするのが学説の多数説であり、そのため、身体的接触は必要ないとされている。
さらに、もともと人の身体を狙ったわけではない有形力の行使についても、判例は暴行罪の成立を認めている。そのような例として、当てるつもりはなく単に脅すつもりで日本刀を振り回したケース(最決昭和39年1月28日刑集18巻1号31頁)や、驚かすために人の数歩手前を狙って石を投げたケース(東京高判昭和25年6月10日高刑3巻2号222頁)がある。
暴行罪の「暴行」の概念は前述の通りであるが、これは「狭義の暴行」と言われる。暴行の程度は4段階あり、「最広義の暴行」は騒乱罪などの、人や物に向けられた暴行を、「広義の暴行」は公務執行妨害罪などの、人に向けられた間接的な暴行(人の身体に向けられることを要しない)を、「最狭義の暴行」は強盗罪などの、人の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行をそれぞれ意味する。
暴行の故意で暴行行為を行ったところ、過失によって傷害の結果が発生した場合(暴行致傷)には、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」という刑法208条の文言には該当しないため、暴行罪としては処罰されない。 するとこのとき、傷害の故意はないので過失傷害罪が成立するにとどまることになる。しかし、過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」となっており、暴行を加えたが傷害結果が発生しなかった際に適用される暴行罪の「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」にくらべて軽い。 どちらも暴行の故意がある点では同じであるのに、傷害に至った場合には刑が軽く、傷害に至らなかった場合には重いという不均衡が生じることになる。
このような刑の不均衡を解消するために、判例・通説は暴行の故意で傷害の結果が生じた場合には、傷害の故意がなくても、傷害罪を適用できるとしている(最判昭和25年11月9日刑集4巻11号2239頁)。従って暴行致傷は傷害罪で処罰される。
また同様に、暴行の故意で傷害結果を発生させ、さらに人を死亡させた場合(暴行致死)には、傷害致死罪に該当することになる。
正当業務行為(刑法35条)に当たるときには違法性が阻却されるので犯罪にはならない。 暴行が正当業務行為になる典型例として、スポーツがある。一方、体罰がどの範囲で許容されるかについては議論がある。
マスメディアでは強姦を指して、「暴行」と言い換えることが多い。詳細は強姦#表記を参照。
参考文献
西田典之 『刑法各論(法律学講座双書)第四版 』 (弘文堂 2007年)
前:
傷害罪
刑法「第二編 罪」
208条
次:
危険運転致死傷罪
ウィキブックスに ⇒刑法各論関連の教科書や解説書があります。 カテゴリ: 刑法
更新日時:2008年8月31日(日)12:29
取得日時:2008/09/01 07:15