時効
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時効の停止

時効の完成を猶予する制度。

未成年者又は成年被後見人の不在( ⇒158条

離婚による夫婦間の権利( ⇒159条

相続財産( ⇒160条

天災等( ⇒161条 )時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。


時効の効力(時効の援用)

時効は当事者が援用しなければ裁判所は時効の効果を前提とした裁判をすることができない( ⇒145条除斥期間との相違点)。時効による利益を享受するか否かをその利益を受けるべき者の意思に委ねるという考え方であり、時効により本来なら得ることのできなかった利益を得ることを潔しとしない「武士道精神」を尊重するのに適した「良心規定」として、フランス法にならって導入されたといわれる。こうした趣旨から、時効が援用された場合の効力は時効を援用した本人にしか及ばない。これを時効の相対効という。また援用とは逆に、時効が完成した後で時効の利益を受けないという意思表示、つまり時効利益の放棄をすることもみとめられている( ⇒146条反対解釈)。放棄も援用と同様、放棄した本人にしかその効力は及ばない。


援用の法的性質

民法は、時効期間の経過によって「権利の得喪変更」が生じるという体裁を採っている( ⇒162条、 ⇒167条などの文言を参照)。そうすると、実体法上権利は得喪変更を生じているのに手続法上は援用がなされるまでこれが生じていないということになるのか。これが援用の法的性質の問題である。時効の法的構成に関する議論とも絡み合いながら、学説は区々に分かれる。大まかにいえば、1,2の学説は実体法説を、3の学説は訴訟法説を前提とする。
攻撃防御方法説(確定効果説)古い大審院判例がこの見解を採用していたといわれる。時効によって権利の得喪変更は確定的に生じ、援用が必要とされるのは弁論主義の表れの一つにすぎないと論ずる。しかし、弁論主義の対象となるのは時効に限られないのに、なぜ時効だけを、しかも実体法である民法にわざわざ規定したのかを説明できないと批判される。

不確定効果説時効によって生ずる権利の得喪変更は不確定的なもので、これが援用によって確定すると論ずる。「良心規定」という位置づけと一貫した説明が可能であるが、民法の文言と整合しないきらいがある。
解除条件説時効によっていったん生じた権利の得喪変更が、時効利益が放棄されると確定的に覆ると論ずる(つまり、援用がなされないことを解除条件として、時効による権利の得喪変更が生ずる)。

停止条件説通説・判例がこの見解を採用するといわれる。時効による権利の得喪変更は、援用を停止条件として生ずると論ずる。


法定証拠提出説時効は実体法上の権利の得喪変更原因ではなく、訴訟法上の証拠方法であり、援用はこの法定証拠の提出であって、援用が必要とされるのは弁論主義の表れの一つにすぎないと論ずる。しかし、民法の文言に全く整合しないという批判や、攻撃防御方法説と同じ批判が向けられている。


援用権者

時効は誰でも援用できるわけではない。時効の利益を受けるかどうかを当事者の良心に委ねるというのが制度上の建前だからである。時効の援用をすることができる者のことを援用権者という。民法の規定では、時効を援用することができるのは「当事者」だけであると規定している( ⇒145条)。
この当事者という概念は解釈によって拡張され、裁判例でも保証人(保証を参照)などは古くからこの「当事者」にあたるとされてきた。他にも裁判例によって援用権者であると認められたものとして物上保証人や抵当不動産の第三取得者がある。


時効利益の放棄・喪失

146条は、時効の利益(援用権)はあらかじめ放棄することはできないと規定している。これは債務者の足下を見てあらかじめ時効利益の放棄を約定させておくといった弊害を防ぐためである。この規定の反対解釈として、時効が完成した後で時効利益を放棄することはできるということになる。

時効利益の放棄は時効が完成していることを知りつつもあえて放棄するという意思表示である。ところが、時効完成を知らずに消滅時効の対象となっている債務を承認したり、債務の存在を前提とする行為(自認行為)をしてしまう場合もある。かつての裁判例は、時効完成後の債務の承認は「時効利益の放棄」であると考え、しかも時効が完成したことを知った上で承認したと推定するという立場を取っていた。しかし「時効完成を知っていた」という推定は経験則から逸脱するものだとして学説の批判を浴びた。

その後裁判所は態度を改め、時効が完成した後に債務を承認する場合は時効完成の事実を知らないのが通常であり、以前のような推定は許されないと判示した。しかしながら、時効完成後いったん承認等を行った場合には、信義則上もはや時効を援用することは許されないとして、結論としては従来通り時効援用を認めなかった。これは、一度は債務の存在を認めておきながらたまたま時効が完成していたことを知るや否や一転して時効を援用するという態度は矛盾しており、また相手方ももう時効が援用されることはないという期待を抱くのであってそれを裏切ることは許されない、という考えによる。

このようにして時効の援用が不可能になることを時効利益の喪失という。時効利益の放棄とは時効が再進行するかどうかが異なる。つまり、時効利益が「放棄」された場合には再度時効が進行するということは無いが、「喪失」の場合には再度進行する。この考えは裁判例も採用し、学会の通説ともなった。


関連項目

取得時効

消滅時効

除斥期間


刑事法上の時効

確定した刑の執行を消滅させる刑の時効( ⇒刑法31条)と、一定期間公訴されなかった場合に以後処罰されなくなる公訴時効がある。一般に刑事事件の「時効」と言われるのは後者。時効完成までの期間は対象となる犯罪の法定刑が基準となる(刑事訴訟法250条)。

公訴時効が認められる根拠は、

事実状態の尊重や犯罪による社会的な影響の減少、証拠の散逸があげられる。

長期の捜査は納税者の負担になること。

長期逃亡は一種の社会的制裁を受けている。

などがあるが、人命を奪う殺人事件などに対し時効があるのはおかしいという意見もある。

また、内閣官房長官安倍晋三(当時)は、北朝鮮による拉致に間接的に関与したとされる国内在住の中華料理店経営者の時効について、「拉致は現在進行中であり、時効は成立しない」との認識を表明している。

NIKKEI NET:原さん拉致「時効は成立せず」官房長官


事例

札幌信金OL殺人事件の容疑者が2005年12月19日午前0時をもって時効が成立した。

1978年に小学校教諭を殺害した事件で、被疑者の警備員の男が刑事上の時効が成立するのを待ち、被害者の遺体を自宅などで見つからないよう隠し続け、公訴時効も成立した2004年8月に警察に自首した時効女性教師殺人事件


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki