新字体
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簡略化のしかた

新字体は、明治期から続く文字改革の流れで誕生した。しかし、このときにすべて新しく考案されたのではなく、それ以前から広く手書きに使われていた誤字・譌字略字を正式な字に昇格させたものが多い。漢字は字形が繁雑なため、戦前から筆記時には多くの略字が通用していた。現在、「門」「第」がしばしば略字「?」「?」で書かれるのと同様である。また、個別に簡略を行ったため、「しんにょう」を例とした部首の省略は、「道」「通」は簡略化されているが「遜」「逕」など、画数が多い、余り使われないような漢字は簡略化がなされていない。


行草書の楷書化

漢字の行書体及び草書体を活字体として楷書体化し、新字体にしたもの。圖→図、觀→観、晝→昼など。

「門」の略字(冂の上部中央に短い縦棒)も書き順は違うが行書に由来する。中国大陸の簡体字では略字・「?」を採用しているが、日本ではふつうに活字おいては使わない。


字体の統一

2通り以上の字体が使われていた漢字を統一したもの。「島」の字には「嶋」「嶌」という字体もあったが「島」に統一された。(「?」は本字)

手書きの形に合わせたものもある。「道」などの「しんにょう」は活字では点が2つ、筆記では1つで書かれていたため、1つに原則的に統一。

「青」は「月」の部分が活字では「円」、筆記では「月」と書かれていたため、「月」に統一。 (「円」の場合は圓と書かれていたので、月とかぶってしまうことはない。)

「葛」の字は、葛飾区における字体が「葛」(人葛、くさかんむりに曷)であるが、葛城市の字体は「葛」(ヒ葛、くさかんむりに「喝」の旁部分)である。JIS漢字の例示字体は「葛」(ヒ葛)であるが、Microsoft Windows Vistaにおいて「葛」(人葛)に変更されている。

「半」「尊」「平」などは、「ソ」の部分が活字では逆の「八」となっていたが「ソ」に原則、統一された。「絆」「鮃」などは現在も「ハ」の形のままであるが、筆記でこれに倣う必要はない。

ただし、これは徹底したものではなく、固有名詞ではある程度許容されている。「しんにょう」の「点の数」は人名など「司馬遼太郎」の「遼」や「辻邦生」の「辻」は二つ点である。また、「半」「平」が「ハ」か「ソ」かについても、「佐藤」や「加藤」の「藤」は「ハ藤」、「ソ藤」といって戸籍では区別されている。 (藤については草冠の+ +形や月の点が斜めにうたれているケースもある。)


音符の交換

漢字の大半は形声文字である(指事文字象形文字など形声文字以外の漢字もあるが、全体の10%にも満たない)。形声文字には事物の類型を表す意符と発音を表す音符がある。「青」「清」「晴」「静」「精」「蜻」「睛」がみなセイの音をもつのは音符が「青」であるためであり、「清」の場合、部首の「さんずい」が意味を、「青」が音を表している。

繁雑な音符をもつ漢字を、同じ音を持つ別の音符に置き換えて作られた新字体がある。たとえば「囲」はもともと「圍」であったが「韋」も「井」も同じイと読む(ただし「井」は訓)ため簡単な井に変更された。竊→窃、廰→庁、擔→担、證→証なども同様。なお「魔」や「摩」を「广+マ」、「慶」「應」を「广+K」「广+O」、「藤」を「くさかんむり」にト、「機」を「木キ」と書く人がいるが、それもこれを応用した略字といえよう。


繁雑部位の削除

漢字の一部分を削ってしまうのである。「応」は「應」と書いたが「イ隹」を削除、「芸」は「藝」であったが中間にある「?」部分を削除、「県」は「縣」から「系」を削除、「糸」は「絲」であったのをひとつにし、「虫」は「蟲」をひとつにした。だが、これにより後述の通りもとあった別字と重複したり、本来の部首まで削られたがために部首が変更された漢字も数多く存在する。


筆画の増加

中には筆画が増えたものがある。「歩」がそうであり、旧字では「?」であった。このため「頻」や「?」といった字も「頻」「渉」というように1画増やされている。「卑」や「免」「致」「雅」「緯」なども増加している。


部首の変化

簡略化のために部首が変わった字もある。「闘」がそれであり、もともと部首は「門(もんがまえ)」ではなく「鬥(たたかいがまえ)」で、もとの形は「?」である。この部首の文字には勝鬨(かちどき)の「鬨」や「鬩(せめぎあ・う)」などがある。現在、多くの辞書が「門」の部に「闘」を掲載している。

また、「声」「医」などは本来の部首を取り除いてしまった(「声」は「聲」から「耳」、「医」は「醫」から「酉」がそれぞれ部首である)ため辞書での扱いが変わった。多くの辞書では「声」は「士(さむらい)」の部、「医」は「匸(かくしがまえ)」(「匚(はこがまえ)」と統合されていることもある)の部に掲載されている(が、旧字体の部首から「声」を「耳部」、「医」を「酉部」に分類する辞書も存在する)。


既存の字との衝突

主に上記のように簡略化されているが、既にある別の字と重なってしまったものもある。


藝と芸

「藝」は新字体において「芸」になったが、もともと「芸」(ウン)という漢字があったため、意味も音も異なる二つの字の形が一致してしまった。多くの場合、一致してしまう既存の漢字はほとんど使われない死字であり、支障はない。しかし、芸の場合、奈良時代末期に石上宅嗣が設けた公開図書館芸亭(うんてい)がある。日本史図書館学の教科書などでは芸亭の芸のくさかんむり「(?)」を4画のくさかんむり「?(++)」にして区別をすることが多い。ただし本来「芸」(ゲイ)と「芸」(ウン)の字体は全く同じである。なお、芸(ウン)は「書物の防虫に使用される薬草」を意味し、転じて中国では「文学、教養」を想起させる文字として人名などに使われる。簡体字では上述した音符の交換により、北京語で、「藝」と同音の「乙」を使って「?」と略す。


豫と予、餘と余

「豫定」「豫告」の「豫(あらかじめ)」は「予」と略され、「餘剰」「餘分」の「餘(あまり)」は「余」と略された。しかし、「予」「余」はどちらも「わたし」という一人称 *yu を表す文字である。


蟲と虫

本来「虫」(キ)は爬虫類を、「蟲」(チュウ)は昆虫などの小さな虫を表す別の字であった。「蟲」を「虫」と略したたため、虫の字は本来の意味と蟲の字の意味の両方を持っていることになる。


絲と糸

」(ベキ)は細い糸を表し、「絲」(シ)が糸全般を表す別の字であったが、「絲」を「糸」と略したため、「糸」が糸全般を表すようになった。ただし、中国大陸の簡体字では「絲」は「?」であり「糸」でないため、中華料理の青椒肉絲は日本でも「絲」のままで書かれることが多い。


豐と豊

「豐」は「ゆたか」という意味であり、音は「ホウ」。「?」が音符となっている形声文字である(中国では「?」が「豐」の簡体字になっている)。「豊」は「れいぎ」という意味で音は「レイ」。「礼」の旧字体「禮」の旁になっている。「豐」が「豊」に変更されたため両者が衝突することになり、音が「レイ」かでそうでないかで区別する(後述する「體」も、「タイ」の音は「豊」に因む転音である)。が、「豊」は単独の漢字で使用されることが殆どないので問題は殆ど起こっていない。蛇足ではあるが、「艶」の旧字体の偏は「豐」、音は「エン」である(「艶」は純粋な会意文字なので、「エン」の音は「豐」に因んでいない)。


缺と欠

「缺乏」の「缺(ケツ)」は「欠」となったが、「欠」は「ケン」と読み、「欠伸(あくび)」の意味がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki