役員は、会社の実質的所有者である社員(株主)とは必ずしも一致しない。会社法では、株式会社の所有者である株主と、会社の経営者が異なる事を原則としており、これを「所有と経営の分離」という。これは、広く資本を集めるために、株主には出資額での有限責任のみを求め、経営は経営能力のある人に委任できるようにするためである。
特に株式が自由に譲渡できる公開会社である株式会社においては、取締役の資格を定款で株主に限定することができない( ⇒331条2項)。ただし、株式が自由に譲渡できない非公開会社の場合や、公開会社であっても所有者と経営者が結果的に一致することまで妨げるものではなく、現状としてほとんどの株式会社では所有者と経営者が同一の場合が大多数である。
会社との契約関係は、従業員が会社とは雇用契約を締結するのに対して、役員は会社とは委任・準委任契約としての性質を持つ任用契約を締結する。労働者ではあるため労働基準法の適用はされる事となるが、雇用契約ではなく委任・準委任契約であるため、労働基準法においては残業代の支給を強制しない管理監督者として分類される。また、法人税法においても法人税法上の役員(法人税法で規定される、実質的には会社の使用人である使用人兼務役員以外)の場合は、固定給以外の臨時給与(事前届出済の利益連動型給与を含む定期同額給与以外)は損金不算入という規定がある。
会社法には、取締役、監査役、執行役など下記の役職を役員として規定している。しかし、一般に使われる社長、専務及び常務などの役職は法定されているものではなく、法律上は設置する義務はない(日本の会社法に規定のない内部的職制を参照)。
とはいえ社長や専務等の呼び方は世間一般的に常勤役員であることを指すものである。社長と呼称する者は代表権があるものと推定させたり(表見代理)、専務や常務等の呼び方は序列を意識させたりするものであるため、代表権の無いものを社長と称したり、専務と常務の序列を入れ替えて称したりすることは、会社の統制上は避けるべき行為といえる。なお中小企業において、会長とは、創業者や前社長を指す場合が多く、代表権が無い場合があるため注意すべきである。
役員に関する規定
選任及び解任の株主総会の決議( ⇒341条) - 役員選任のための決議
役員等の第三者に対する損害賠償責任( ⇒429条)
会社の組織をどのようにするかで権限が異なるため、会社法における取締役の一義的な定義は困難である。
会社法の原則形態である取締役会非設置会社においては、取締役とは会社において内部的な業務執行を行うとともに、対外的に会社を代表する必要的常設機関である( ⇒348条・ ⇒349条)。この場合、取締役は1名以上でよい。
これに対して、取締役会設置会社においては、取締役は取締役会の構成員である。この場合、取締役は3名以上でなければならない( ⇒331条4項)。
会社法の規定によるものではないが、社長や専務などの内部的職制を有する取締役を役付取締役、そうではない取締役を平取締役と呼ぶことがある。
代表取締役は、取締役会設置会社と任意に代表取締役設置を決めた取締役会非設置会社において、内部的な業務執行を行うとともに、対外的に会社を代表する機関である( ⇒349条・ ⇒363条)。
取締役会設置会社においては、設置が義務づけられている必要的常設機関である。一方、取締役会非設置会社においては、原則として各取締役が会社の代表権を有している(会社法349条1項・2項)ため、代表取締役は定款に定めることで任意に設置できる(会社法349条3項)。また、委員会設置会社においては、取締役には業務執行権がなく( ⇒415条)、代表権は代表執行役が有するため、代表取締役は設置できない。
代表取締役の人数については、1人と誤解されていることがあるが、法律上は人数に制限が無く、複数選出された場合は各代表取締役が会社を代表する。
社外取締役とは、株式会社の取締役であって、当該株式会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人ではなく、かつ、過去に当該株式会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人となったことがない者のことである(会社法2条15号)。
社外の者が取締役会のメンバーになることで、会社の業務執行の適正さを保持させる趣旨である。しかし、この定義に当たれば社外取締役なので、業務執行をしていなければ就任から何年経っても社外取締役であるし、親会社の役員も子会社の社外取締役になりうる。
委員会設置会社においては、社外取締役が必ずいなければならず、各委員会の過半数が社外取締役でなければならない( ⇒400条3項)。
執行役は、委員会設置会社の業務執行をおこなう機関である( ⇒418条)。執行役員とは異なる。
委員会設置会社においては、業務の決定と執行機関が分離され、前者は取締役会が、後者は執行役が担当する。この場合、取締役には業務の執行権限はないが、取締役と執行役を兼任することは可能である。
代表執行役は、委員会設置会社において執行役から選任され、会社を代表する権限を有する機関である( ⇒420条)。取締役会の構成員ではない点を除いて、委員会設置会社以外の取締役会設置会社における代表取締役に相当する。1人の場合もあるが、1人とは限らない。
監査役は、取締役の業務執行を監査する会社の機関である( ⇒381条)。委員会設置会社を除く取締役会設置会社と、取締役会非設置会社のうち会計監査人設置会社には設置が義務づけられる( ⇒327条)。監査役を設置している会社のうち、監査役に業務監査権を認めている会社を監査役設置会社という(会計監査しかできない監査役が設置されていても、会社法上は監査役設置会社ではない)。また、監査役で構成される監査役会を設置することもできる。監査役会設置会社では、監査役は3名以上で、その半数は社外監査役でなければならない( ⇒335条3項)。