彗星
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物理的特徴

彗星の本体は核と呼ばれる。核は純粋な氷ではなく、岩石質および有機質の塵を含んでいる。このことから、彗星の核はよく「汚れた雪玉」に喩えられる。核の平均的な直径は数百m程度で、小さく暗いものでは数十m、非常に大きいものでは稀に50kmほどに達する。質量は、大きさによってかなり異なってくるが、直径1km程度の彗星で数十億トン単位、10km程度の彗星で数兆トン単位であると考えられる。これは、地球の山一つ分ほどに相当する。氷の構成成分を分子数で見ると、80%以上は水 (H2O) で、以下量の多い順に一酸化炭素 (CO)、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4) と続き、微量成分としてアンモニア (NH3) やシアン化水素 (HCN) などが含まれる。双眼鏡望遠鏡で見た時に青緑色に見えるのは、これらの微量成分が太陽光で解離してできる C2(炭素が2つつながったもの)や CN などのラジカル輝線スペクトルが強いためである ⇒[1]彗星の運動と尾の方向の関係
太陽に接近すると尾が生じる。イオンの尾はほぼ常に太陽と逆の方向を向いているが、塵の尾は曲線状になる

太陽から遠いところでは、低温のため核は全て凍りついており、地球上から見てもただの恒星状の天体にしか見えない。しかし、彗星が太陽に近づいていくと、太陽から放射される熱によってその表面が蒸発し始める。蒸発したガスや塵は、非常に大きく、極めて希薄な大気となって核の周りを球状に覆う。これはコマと呼ばれる(これは「髪」という意味であり、実際に古くは日本語訳されて「髪」と呼ばれることもあった)。

そして、太陽からの放射圧太陽風により、太陽と反対側の方向に尾が形成される。尾には、ダストテイル(塵の尾)という、塵や金属から構成された白っぽい尾と、イオンテイル(イオンの尾)という、イオン化されたガスで構成される青っぽい尾がある。ダストテイルは曲線状となる。これには、核から放出された塵が独自の軌道で公転するようになり、徐々に核本体から遅れていくため、また、太陽の自転により太陽風が渦巻いていたり、太陽の光の圧力(光圧)の影響なども受けるためなどの理由がある。歴史上の大彗星の中には何本もに枝分かれしたダストテイルが扇状に広がって見えたものもある(2007年のマックノート彗星でも見られた)。これに対し、イオンテイルは、ガスが塵より強く太陽風の影響を受け、太陽の引力よりも磁場に従って運動するため、太陽のほぼ反対側に直線状に伸びていく。ただし、太陽風の乱れによって、時には折れ曲がったりちぎれたりするなど、激しい変化を見せることもある。なお、地球が彗星の軌道面を通過するとき、彗星の曲がった塵の尾と地球との位置の関係で、見かけ上太陽の方向に尾が伸びているように見えることがあり、アンチテイルと呼ばれる。しかし、実際に太陽に向かって尾が伸びているわけではない。

コマや尾は、核に比べて非常に規模が大きくなる。コマは時には太陽(直径約139万km)よりも大きくなることがある。また、尾も1天文単位以上の長さになることがある。1996年春に明るくなり、観測史上最も尾が長く伸びた百武彗星では、尾の実長は実に3.8天文単位(5億7000万km)にも達した。コマと尾はどちらも太陽に照らされ、太陽系の内側に入り込んでくると地球から肉眼で見えるようになることもある。塵は太陽の光を直接反射し、ガスはイオン化されるため明るく輝く。ほとんどの彗星は暗すぎて望遠鏡が無ければ見ることができないが、10年に数個ほどは、肉眼でも十分見えるほどに明るくなる。望遠鏡が発明される以前は、彗星は夜空の何も無いところから現れ、ゆっくりと見えなくなって消えていくように考えられていた。

驚くべきことに、彗星の核は、太陽系に存在する物体の中でも最もい物体である。探査機ジオット1986年にハレー彗星の核に接近し、核の光のアルベド(反射能)が4%であることを発見した。また探査機ディープ・スペース1号2001年ボレリー彗星に接近して観測を行い、核の表面のアルベドが2.4%から3%程度しかないことを発見した。これは、アスファルトの光のアルベドが7%なのと比較するとかなり小さい値である。複雑な有機化合物がこのような暗い表面を構成していると考えられている。太陽によって表面が熱せられると揮発性の化合物が、特に黒っぽい傾向のある長鎖の化合物を残して蒸発して飛び去ってしまい、石炭原油のように黒くなる。彗星の表面が非常に黒いため、熱を吸収して外層のガスが流出する。

1996年、百武彗星の観測から彗星がX線を放射していることが発見された ⇒[2]。彗星がX線を放射していることはそれまで予測されていなかったため、この発見は研究者たちを驚かせた。このX線は彗星と太陽風との相互作用により生じると考えられている。イオンが急速に彗星の大気に突入すると、イオンと彗星の原子分子が衝突する。この衝突により、イオンは一つか複数の電子を捕獲し、それがX線や遠紫外線光子の放出につながると考えられている ⇒[3]


彗星の崩壊と消失

最も早期に発見された周期彗星の一つであるビエラ彗星は1846年の回帰時に二つに分裂し、次の回帰では双子の彗星となって現れたものの、やがて流星群だけを残して消失した。その後も太陽からの輻射熱や物理的作用により分裂、あるいは崩壊・消失した彗星は多数観測されている。

彗星のさまざまな様相変化の予想は、非常に難しいといえる。そのため彗星核の崩壊や消失に関する理論的な研究はあまりなされていない。しかし、国立天文台の福島英雄らの観測・研究グループによれば近日点通過前の彗星頭部の崩壊前に極めて特異なコマ形状を共通して示していることや、光度観測により色指数(V-I)の変化が特異であることが報告された(2003年春季天文学会)。実際には彗星の頭部がY字やT字型からおむすびのような形に変化してゆき、集光も薄れ消失するのだという。また、この発表では、近年の彗星の中でこのモデルに合致した物としてはC/2002 O6 (SWAN) があげられ、普通の彗星のコマと違い三角形の形状をしているという報告がなされ、また、C/2002 O4 (Hoenig) も同様な消滅過程だと報告された。

例え崩壊や消失を免れても、太陽への接近を繰り返すうちに揮発成分を失って小惑星と見分けがつかなくなる可能性が高い。そのような彗星のなれの果てと思われる天体や、彗星としての活動を終えつつある天体もいくつか見つかっている。


軌道による分類

彗星
離心率と公転周期による分類
e < 1周期彗星短周期彗星短周期彗星P < 200
長周期彗星長周期彗星P ≧ 200
e ≧ 1非周期彗星非周期彗星 
特徴的な彗星大彗星


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki