アイザック・ニュートンは、彗星を固く締まった頑丈な固体だとした。つまり非常に長い楕円軌道を描き、その軌道と方向がかなり自由な惑星の一種であって、その尾は、太陽熱で着火または加熱された頭部、つまり彗星の核から放出された非常に希薄な蒸気だと考えていたのである。 また、ニュートンにとっては彗星は、惑星の水分と湿気を維持するために不可欠なものだと思われた。つまり、彗星の蒸気と放出ガスが凝縮したものから、植物が生まれ腐敗し乾燥した土になるために使われるすべての水分が再供給、補充されるとした。ニュートンは、すべての植物は液体から増え、それが腐敗して土になると考えていたためである。だとすると乾いた土の量は絶えず増加するので、その惑星の水分は絶えず供給されていない限り絶えず減っていき、遂には無くなるはずだと考えたのである。ニュートンは、われわれの空気の最も精妙で最上の部分を構成する、生命と全ての存在に絶対不可欠な精気が、彗星によってもたらされるのではないかと考えた。また、彼の推測によると、彗星は太陽に新しい燃料を補充していて、その発光体から全ての方向に絶えず送られる流れによって太陽の光を回復させているとした。
「巨いなる沸き立つ尾より振るえては
あまたの珠玉に潤いを甦らせる
その長き楕円の風の吹くところ
傾く太陽に新たな燃料を与える
星界を照らすがため天空の火を養う」[2]
18世紀以前に、彗星の物理的構造について正しい仮説を立てていた科学者もいた。1755年、イマヌエル・カントは、彗星は揮発性の物質で構成されていて、それが蒸発することが原因で近日点付近で彗星が明るくなるのだという仮説を立てた[3]。1836年には、ドイツの数学者フリードリッヒ・ベッセルが、1835年のハレー彗星の回帰で蒸気の流れを観察したことから、彗星から蒸発した物質の反動は、彗星の軌道に大きな影響を与えるのに十分なほど大きい可能性があると指摘し、エンケ彗星の非重力的な運動はこの仕組みによるという説を唱えた。
しかし、彗星に関連した他の発見により、1世紀近くこれらの説はほとんど忘れ去られていた。1864年から1866年の期間中、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリはペルセウス座流星群の軌道を計算し、軌道の類似性から、スウィフト・タットル彗星の破片がペルセウス座流星群の原因であるという仮説を正確に立てた。彗星と流星群との関連は、1872年に劇的に示されることとなった。1846年の回帰で2つに分裂したのが観察され、次の1852年の回帰では現れなかったビエラ彗星を原因とする、激しい流星群の活動が観察されたのである。これを基にして、彗星は表面を覆う氷の層と、緩く堆積した小さな岩石のような物体から構成されているとする、彗星の構成の「砂利の堆積」モデルが現れた。
20世紀半ばまで、このモデルは数々の欠点に悩まされてきた。特に、僅かな氷しか含んでいない物体が、どうやって何回かの近日点通過を経た後も蒸気の蒸発により明るく見え続けることができるのかを説明できなかった。1950年、フレッド・ホイップルが、「彗星は氷と塵からなる」という『汚れた雪玉』を提唱した。岩石主体の天体に僅かに氷が混じっているのではなく、氷が主体の天体に塵や岩石が混じっていると言うのである。この「汚れた雪球」モデルはすぐに受け入れられるようになった。
アメリカ航空宇宙局 (NASA) の打ち上げたICEは1985年にジャコビニ・ツィナー彗星に接近し、彗星への近接探査を行った最初の探査機となった。翌1986年には、日本の宇宙科学研究所(ISAS)、欧州宇宙機関(ESA)、ソ連・東欧宇宙連合(IKI)が打ち上げた計5機の探査機にICEを加えた6機が連携してハレー彗星の核を観測した(ハレー艦隊)。ジオットが核を撮影したところ、蒸発する物質の流れが観測され、ハレー彗星は氷と塵の集まりであることが確かめられ、ホイップルの説が実証された。その後、NASAの工学実験探査機ディープ・スペース1号は2001年7月21日にボレリー彗星の核に接近して詳細な写真を撮影し、ハレー彗星の特徴は他の彗星にも同様に当てはまることを立証した。
その後の宇宙飛行ミッションは、彗星を構成している物質についての詳細を明らかにすることを目標に進められている。1999年2月7日に打ち上げられた探査機スターダストは、2004年1月2日にはヴィルト第2彗星に接近して核を撮影するとともにコマの粒子を採取し、2006年1月15日には標本を入れたカプセルを地球に持ち帰った。標本の分析により、太陽の近くのような高温下で形成されるカンラン石が発見された。このため、彗星の形成理論の再構築が必要となるかもしれない。
2005年7月4日には、探査機ディープ・インパクトが、核内部の構造の研究のためにテンペル第1彗星にインパクターを衝突させた。この結果、短周期彗星であるテンペル第1彗星の成分は長周期彗星のものとほぼ同じであることが判明した。さらに、塵の量が氷よりも多かったことから、彗星の核は「汚れた雪玉」というよりも「凍った泥団子」である、と見られている。
これまでに行われた近接探査
ICE… (21P) ジャコビニ・ツィナー彗星、(1P) ハレー彗星
さきがけ、すいせい、ベガ1号、ベガ2号… (1P) ハレー彗星
ジオット… (1P) ハレー彗星、(26P) グリッグ・シェレルップ彗星
ディープ・スペース1号… (19P) ボレリー彗星
スターダスト… (81P) ヴィルト第2彗星
ディープ・インパクト… (9P) テンペル第1彗星