最も早期に発見された周期彗星の一つであるビエラ彗星は1846年の回帰時に二つに分裂し、次の回帰では双子の彗星となって現れたものの、やがて流星群だけを残して消失した。その後も太陽からの輻射熱や物理的作用により分裂、あるいは崩壊・消失した彗星は多数観測されている。
彗星のさまざまな様相変化の予想は、非常に難しいといえる。そのため彗星核の崩壊や消失に関する理論的な研究はあまりなされていない。しかし、国立天文台の福島英雄らの観測・研究グループによれば近日点通過前の彗星頭部の崩壊前に極めて特異なコマ形状を共通して示していることや、光度観測により色指数(V-I)の変化が特異であることが報告された(2003年春季天文学会)。実際には彗星の頭部がY字やT字型からおむすびのような形に変化してゆき、集光も薄れ消失するのだという。また、この発表では、近年の彗星の中でこのモデルに合致した物としてはC/2002 O6 (SWAN) があげられ、普通の彗星のコマと違い三角形の形状をしているという報告がなされ、また、C/2002 O4 (Hoenig) も同様な消滅過程だと報告された。
例え崩壊や消失を免れても、太陽への接近を繰り返すうちに揮発成分を失って小惑星と見分けがつかなくなる可能性が高い。そのような彗星のなれの果てと思われる天体や、彗星としての活動を終えつつある天体もいくつか見つかっている。
彗星
離心率と公転周期による分類
e < 1周期彗星短周期彗星短周期彗星P < 200
長周期彗星長周期彗星P ≧ 200
e ≧ 1非周期彗星非周期彗星
特徴的な彗星大彗星
サングレーザー(クロイツ群)
成因上の関連彗星・小惑星遷移天体
地球近傍天体
太陽系外縁天体
分類上の関連太陽系小天体(小惑星)
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彗星は、太陽を焦点の1つとする楕円、放物線あるいは双曲線の軌道をとり、軌道によって分類される。楕円軌道を持つ彗星は、太陽を周期的に周回するもので、周期彗星と呼ばれる。周期彗星が太陽の近くへ戻ってくることを「回帰」という。放物線軌道あるいは双曲線軌道を持つ彗星は、二度と戻って来ないと考えられ、非周期彗星と呼ばれる。これは英語では「single-apparition comets」とも呼ばれる。
ただし、惑星や近傍恒星の重力や、非重力効果により、実際の彗星の軌道は不安定である。特に、周期数百年以上の彗星の楕円軌道は、わずかな軌道の変化で周期が大きく変わるので、周期どおりに戻ってくるとはかぎらない。また、後述するとおり、起源や特性からも、周期の長い周期彗星は非周期彗星に近い。このような理由により、彗星を、周期彗星と非周期彗星ではなく、公転周期200年以下の短周期彗星と、200年以上の長周期彗星に分けることが多い。その場合、非周期彗星は長周期彗星に含める。周期彗星、長周期彗星、非周期彗星の3つに分けることもある。
軌道の特徴惑星の軌道、カイパーベルト、オールトの雲の位置関係
左上図には内惑星と小惑星帯、オレンジ色の木星軌道が描かれている。右上図には紫色の冥王星軌道とカイパーベルトが見える。左下図にある空色に塗られたオールトの雲はこれらとは比較にならないほど遠方に広がっている。
短周期彗星はエッジワース・カイパーベルトを起源に持つと考えられ、ハレー彗星以外に大型の彗星は少ない。一方、長周期彗星の起源はオールトの雲にあると考えられ、大彗星になるものが多い。特に、以前の観測記録が無い大型の彗星は、太陽系の起源を知る上で重要な手がかりとなると考えられている。
小惑星は比較的円に近い楕円軌道を描いているものが多いのに対して、彗星は非常に細長い楕円や放物線、双曲線の軌道をとるものが多い(軌道の離心率の値が大きい)。彗星がなぜ極端な楕円軌道になるような摂動を受けるのかを説明するために、様々な説が提唱されてきた。有名なものとして、銀河系の中の恒星が太陽の近くを通過したことにより、オールトの雲を含む太陽系外縁天体の軌道が掻き乱され、その一部が太陽へと落下してくるとする説や、ネメシスという太陽の連星、あるいは未知の惑星Xの存在を仮定して、その重力的影響によるものだとする説などがある。
1950年、天文学者のヤン・オールトは、長周期彗星の軌道計算を行い、遠日点が太陽から1万天文単位?10万天文単位(約0.1光年?1光年)の距離のものが多いことを発見した。そこでオールトは、オールトの雲と呼ばれる、小天体が多く集まる領域が太陽系の最外縁部に存在するという仮説を提唱した。この仮説は広く受け入れられ、それ以後彗星はオールトの雲に起源を持つと考えられるようになった。オールトの雲に存在する天体は、時々お互いに重力的相互作用(摂動)を起こし、一部が太陽の引力に捉えられて極端な楕円軌道を描くようになり、太陽に非常に接近するようになる。
現在では、彗星はオールトの雲とエッジワース・カイパーベルトに起源をもつと考えられている。いずれも、太陽系形成期に存在した原始惑星系円盤で形成された微惑星または微惑星が集まった原始惑星が残っていると考えられている領域である。太陽から3AU以遠では比較的凝固点の高い物質がすべて凍り、岩石質の物質の総量を上回るため、微惑星の主成分は氷になる。オールトの雲は、主として木星や土星が形成される付近の軌道にあった氷小天体が、形成後の木星や土星に弾き飛ばされたものと考えられ、太陽系を球殻状に取り巻いている。エッジワース・カイパーベルトは太陽系外縁部の氷小天体が惑星にまで成長できずに残ったものと考えられており、黄道面を取り巻くようにして環状に広がっている。したがって、オールト雲起源の彗星の方がエッジワース・カイパーベルト起源のものより形成温度が高いと考えられている。
彗星は質量が小さく、軌道が楕円であるため、周期的に巨大な惑星に接近し、その度に彗星の軌道は摂動を受け変わる。短周期彗星は、遠日点までの距離が、巨大な惑星の軌道半径と同じになるような強い傾向が見られる。これらは木星族、土星族、天王星族、海王星族の彗星などと呼ばれる。その中でも、木星の軌道付近に遠日点を持つ木星族の彗星が特に多い。オールトの雲からやってきた彗星は、しばしば巨大な惑星に接近し、重力の強い影響を受ける。特に木星は、他の惑星を全て合計したより2倍以上大きな質量を持っているため、非常に大きな摂動を彗星に与える。なお、もし木星や土星のような巨大惑星がなければ現実より多くの彗星が太陽系中心部に侵入し、一部は地球と衝突して生命の進化に悪影響を与えただろうという説がある(惑星の居住可能性#グッド・ジュピターを参照)