彗星
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彗星の名前と符号


彗星の名前

彗星の名前は、過去2世紀に渡って、いくつかの異なる慣習に従って決められてきた。系統的な慣習が採用されていなかった時代には、彗星の命名は様々な方法によっていた。ハレー彗星は、彗星の軌道を決定したエドモンド・ハレーの名前から採られた。同じように、2番目の周期彗星として知られているエンケ彗星は、最初の彗星の発見者ピエール・メシャンではなく、軌道を決定した天文学者であるヨハン・フランツ・エンケの名前が付けられている。

18世紀末から20世紀初頭の明るい彗星の中には、3月の大彗星 (Great March comet) などと名づけられたものもある。いくつかは単に大彗星 (Great comet) で区別がつかないので、「1811年の大彗星」(『戦争と平和』に登場する彗星)などとも呼ばれる。

20世紀初頭、彗星の命名として、発見者の名前を付けるという慣習が一般的になった。これは現在まで続いている。彗星にはその彗星を独立発見した人の名前が先着順で3名まで付けられる。1990年代に入ると、人工衛星(IRASSOHOなど)や、国際規模の彗星および小惑星の掃天プロジェクトチーム(LINEARNEATなど)による彗星の発見が相次ぐようになり、数多くの彗星に、これらの自動捜索プロジェクト名が付くようになった。例えば、IRAS・荒貴・オルコック彗星は、赤外線衛星IRASと、日本のアマチュア天文家の荒貴源一、イギリスジョージ・オルコックによって独立発見された。現在では、自動捜索プロジェクト名でない彗星のほうが少ない。

同じ発見者が複数の彗星を発見しても、名前で区別はされない。だから、たとえば「SOHO彗星」という名前の彗星は1000を超える。彗星を一意的に示すには、後述する符号を使う必要がある。ただし、〜第1彗星、〜第2彗星、などを末尾につけて区別することもある。

なお、キロンなど少数の彗星が、小惑星として発見され、小惑星の命名規則に基づいて命名された後に彗星であることが判明している。逆に見失われていた彗星が小惑星として再発見された例もあり、彗星としての名前のまま小惑星としても登録されている(彗星・小惑星遷移天体を参照)。


旧方式符号

1994年までの彗星の系統的な符号の付け方としては、まず最初にその彗星が発見された年と、その年内の発見順を示す文字からなる仮符号が与えられた。例えばベネット彗星の仮符号は1969i で、1969年の9番目に発見された彗星であることを意味する。彗星の軌道が確定すると、彗星には、近日点通過の年とローマ数字からなる確定符号が与えられた。ベネット彗星の確定符号は1970 II となる。確定符号は、日本語に訳して、1970年第2彗星などとも言う。確定符号が付くと、仮符号は使われない。

彗星の発見数が増加してくると、この方法の運用に綻びが生じてきた。観測技術の進歩により1年の発見数が25を超え、仮符号に使うアルファベットが足りなくなり、また近日点通過から1年以上経って発見されるものも出てきて、確定符号の近日点通過順という原則も崩れてきた。そこで1994年に国際天文学連合は新しい命名方法を採用し、1995年から実施された。


新方式符号

符号は発見が報告された年、月、発見報告順を元にして付けられる。例えば、ヘール・ボップ彗星の場合は「C/1995 O1」(シー/1995 オー1)と記載される。
最初の「C/」は「Comet」を意味し、発見報告直後の全ての彗星にはこの符号が付けられる。発見報告後の観測により、周期彗星(なお、本節に限り、「周期彗星」を「公転周期200年以下または複数の近日点通過が観測された彗星」と定義する)だと分かった場合、記号は「P/」(Periodic) に変更される。周期彗星でない場合は「C/」のままである。また、消滅した、または、長期間観測されない周期彗星には「D/」、軌道を求めることができなかった彗星には「X/」を付ける。2006年7月現在、「D/」が付いた彗星は24個、「X/」が付いた彗星は54個ある。彗星と思われていた天体が小惑星だと分かった場合は「A/」、衛星だと分かった場合は「S/」を付ける。小惑星として発見された天体が過去の彗星と同定され「A/」がついた例はあるが(ブランペイン彗星)、「S/」に変更された天体はまだ無い。

「1995」は、発見が報告された年を表す。

「O」は発見が報告された時期を表す。1月前半(15日まで)が「A」、1月後半(16日から)が「B」、というように、1年を24に分けて表す。ただし、「I」は「J」や「1」と紛らわしいので飛ばし、「Z」は使わない。この規則は、小惑星と共通である。

「1」は、その時期の中での発見報告順を表す。ヘール・ボップ彗星は、1995年7月後半に発見が報告された最初の彗星であることが分かる。

彗星が分裂した場合、「-A」、「-B」などが末尾に付けられる。

2回目の回帰が観測された彗星、または遠日点でも観測できる彗星、あるいは4回のが観測されたケンタウルス族彗星には、「P/」(または「D/」)の前に公式通し番号が付けられる。例えば、スパール彗星が回帰して2005年に再発見されたときの符号は「171P/2005 R3」で、同時に、最初の発見は「P/1998 W1」から「171P/1998 W1」に変更された(再発見には別の符号が付くことに注意)。複数回の発見を区別する必要がないときは、「171P/Spahr」と表現される。2006年11月現在、182P/LONEOS まで番号が付けられている。

1994年以前の彗星にも、新方式符号が遡って付けられる。例えば、前述のベネット彗星の新方式符号は C/1969 Y1 となる。つまり、1994年以前の彗星は、符号が3つあるということになる。

なお、従来は発見者が発見した順に「テンペル第1彗星」「ヴィルト第2彗星」というように番号(接尾数字)が付けられていた(接尾数字と、公式通し番号の順とは一致しない)が、1995年頭より新発見の彗星には接尾数字が付けられなくなり、2000年には過去の彗星からも接尾数字が廃止された[1]


彗星の記録と信仰バイユーのタペストリーに描かれたハレー彗星 右上に記号化されたハレー彗星が見える。中世ヨーロッパにおいては彗星 (star with hair, stella crinita) は差し迫った不運を警告するものと捉えられていた。

彗星はしばしば王や高貴な人物の死や、大災害といった不吉なことの前兆と考えられ、昔の人はその出現を恐れた。で卜占を記した甲骨文などの古代の資料からは、人間が彗星の出現に数千年の昔から気づいていたことが分かる。彗星の出現を記録した有名な古記録として、1066年イングランドノルマン・コンクエストを記録した『バイユーのタペストリー』にハレー彗星が描かれていることが挙げられる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki