毎年数百個の小彗星が太陽系の内側を通過していくが、そのうち世間一般の話題となるような彗星は極めて少数である。大体10年に1個前後、あまり夜空に関心が無い人でも気づくほど明るくなるような彗星が現れる。そのような彗星はよく大彗星と呼ばれる。
過去には、明るい彗星はしばしば一般市民にパニックやヒステリーを引き起こし、何か悪いことの前兆と考えられた。比較的最近になっても、ハレー彗星の1910年の回帰の際に、彗星が地球と太陽の間を通ることから「彗星の尾によって人類は滅亡する」というような風説が広まった。
この当時、既にスペクトル分析によって(先述の通り)彗星の尾には猛毒の青酸が含まれていることが知られており、また天文学者でSF作家でもあったカミーユ・フラマリオンは、尾に含まれる水素が地球の大気中の酸素と結合して地上の人々が窒息死する可能性があると発表した。これらが世界各国の新聞で報道され、さらに尾鰭がついて一般人がパニックに陥ったと言われる。日本でも、空気が無くなっても大丈夫なようにと、自転車のタイヤのチューブが高値でも飛ぶように売れ、貧しくて買えないものは水に頭を突っ込んで息を止める練習をするなどの騒動が起きたとされているが、世界の終わりを信じた人はごく一部だったと受け取れるような記録もある(いずれにせよ、実際には彗星の尾は地球の大気に影響を及ぼすにはあまりに希薄だった)。
その後も、1990年にはオウム真理教の麻原彰晃がオースチン彗星の地球接近によって天変地異が起ると予言して勢力拡大を図り、1997年のヘール・ボップ彗星の出現時にはカルト団体ヘブンズ・ゲートが集団自殺事件を起こした。しかし、ほとんどの人にとっては、大彗星の出現は単に素晴らしい天体ショーである。
様々な要素により、彗星の明るさは予言から大きく外れるため、彗星が大彗星になるか否かを予言するのは難しいということはよく知られている。大まかに言うと、もし彗星の核が大きく活発で、太陽の近くを通る軌道で、最も明るいときに地球から見て太陽により不鮮明になっていなければ、大彗星になる可能性が高い。しかし1973年のコホーテク彗星は、これら全ての条件を満たしており、壮大な彗星になると期待されたにも関わらず、実際はあまり明るくならなかった。その3年後に現れたウェスト彗星は、ほとんど期待されていなかった(科学者がコホーテク彗星の予報の大失敗の後、予報をするのに慎重になっていたのかもしれない)が、実際は非常に印象的な大彗星となった。
20世紀後半には大彗星が出現しない長い空白期間があったが、20世紀も終わりに近づいたころ、2つの彗星が相次いで大彗星となった。1996年に発見され明るくなった百武彗星と、1995年に発見され、1997年に最大光度となったヘール・ボップ彗星である。 21世紀、初頭から大彗星が、それも2個も同時に見ることができるというニュースが入った。2001年に発見されたNEAT彗星と2002年に発見されたLINEAR彗星である。しかしどちらも最大光度は3等に留まり、大彗星とはならなかった。2006年に発見され、2007年1月に近日点を通過したマックノート彗星は予想を上回る増光を起こし、昼間でも見えるほどの大彗星となった。近日点通過後は南半球でのみ観測されたが、尾が大きく広がった印象的な姿を見せた。
今までに知られている数千もの彗星の中には、とても変わったものもある。エンケ彗星は木星の内側から水星の内側にまで入る軌道を回っているし、シュワスマン・ワハマン第1彗星は木星と土星の軌道の間に収まった不安定な軌道を回っている。土星と天王星の間を不安定な軌道で回っているキロンは、最初は小惑星に分類されていたが、後に希薄なコマが発見されたため、現在では彗星と小惑星の両方に分類されている。同じように、シューメーカー・レヴィ第2彗星は最初は小惑星1990 UL3と呼ばれていた。地球近傍小惑星の中には、揮発成分を使い果たした彗星の核だと考えられているものもある。
また、その他の彗星や、惑星の衛星の中にも、軌道や成分などから元は彗星だったと考えられるものがある。彗星が発見時には小惑星として観測される例が最近になって増えている。なかには、小惑星帯の小惑星として発見されたものが彗星だと判明するケースもあり、これらはメインベルト彗星と呼ばれている。
彗星によっては、短時間の間に急激な増光(アウトバースト)を起こす事がある。特にホームズ彗星が2007年10月下旬に起こした大増光は印象深い。2日足らずの間に17等から2等級まで(約40万倍)明るくなり。肉眼でも"明るい星"として容易に見ることができた。その後、この増光で放出されたと思われるダストが球状に広がり、その直径は太陽よりも大きく広がった。ホームズ彗星は一時的に太陽系最大の天体となったのである。
今までにいくつもの彗星の核が分裂するのが観測されてきた。ビエラ彗星が有名な例である。ビエラ彗星は1846年の回帰の際に2つに分裂した。1852年には2つに分裂した核が回帰してきたのが観測されたが、その後2度と出現しなかった。ビエラ彗星の核は恐らく粉々に砕けてしまったのだろう。その代わり、本来彗星が回帰するはずであった1872年と1885年に、1時間当たりの出現数が数万個にも達する壮大な流星雨が観測された。この流星群はアンドロメダ座流星群と呼ばれ、毎年11月5日前後に地球がビエラ彗星の軌道に突入するために起こる。現在ではほとんど出現はないが、稀に突発的な1時間当たり数十個の出現が観測されることがある。
崩壊・消滅した彗星としては他にシューメーカー・レヴィ第9彗星が有名である。この彗星は1993年に、木星の周りを回る軌道をとっているのを発見された。その後計算すると、1992年に木星に非常に接近したために捕らえられたのだと分かった。この接近で既に彗星の核は分裂し、少なくとも21個の破片に分かれていた。そして分裂した核は1994年7月16日から7月22日までに、相次いで木星の大気に突入した。人類が地球の大気圏外で2つの物体が衝突するのを観測したのはこれが初めてであった。
1908年のツングースカ大爆発はエンケ彗星の破片が地球に衝突したのではないかとする仮説がある。
最近のケースでは、シュワスマン・ワハマン第3彗星が1995年の回帰時に4個に分裂し、その後さらに分裂(いくつかは消滅)して2006年には30個以上の破片になっていた。
周期彗星
ハレー彗星 - 周期彗星第1番。周期約76年。
エンケ彗星 - 周期彗星第2番。周期約3.3年で、周期彗星中最短。
池谷・張彗星 - 周期彗星第153番。