なお、広東省内でも、東部、北部、西部には?南語や客家語が優勢な地域が広がっており、中部でも中山市などにこれらの方言島が存在する。
韻母の体系にタイ語やチワン語などと共通する特徴がみられ、古中国語の語彙が残存している比率が他の方言よりも高いため、もともとはタイ語系の基層の上に、古中国語がかぶさってできたクレオール言語であったと考えられる。音韻的にも入声や鼻音韻尾を有し、白文異読が少ないなど、中古音との整合性が高い。
一方で、広州は清代から他の地域に先駆けてイギリスなどの外国との接触が始まったため、英語からの借用語も少なくない。特にイギリスの植民地支配を長く受け、英語を併用していた香港の広東語には、英語からの借用語が多く使われている。同様にポルトガルに統治されていたマカオの広東語には少量のポルトガル語からの借用語がある。
統語論的には、オーストロ・アジア語族の言語と同じように、修飾辞が被修飾辞の後ろに付く単語(「鷄公」、「椰青」、「豆腐潤」など)が少なくないこと、二重目的語の順序が異なること、数詞を伴わない量詞(類別詞)で名詞を限定するなど、他の中国語の方言と異なる部分がある。(なお、前記の逆修飾は古中国語でも見られる。「舜帝」→「帝舜」など。)
唯、発音・文字からして、ヨーロッパ人からは距離が非常にある言語として、欧州の人から見て習得が最も困難な言語のひとつであり 又、世界で最も多くのアルファベット数を使う言語として見る事も出来る。
広東語の内部には以下の下位方言が含まれる。本項の説明では、これらの内、主に広州市街および香港市街の粤語について記述している。広州、香港ともに郊外には、発音や語彙の異なる下位方言(番禺話や圍頭話など)が用いられている地域がある。広州市街の方言は、以下の各下位方言を含む広東語地域における標準語としての役割を果たしている。
粤海方言片
広州方言(廣州話、廣府話、省城話)
香港粤語
南番順方言(南海話、番禺話、順徳話)
中山方言(中山話、石岐話)
莞宝方言片
東莞話
宝安粤方言(圍頭話)
羅広方言片(肇慶話)
四邑方言片(台山話)
高陽方言片(陽江話)
桂南方言片(広西話)
?潯粤語(南寧話)
梧州粤語(梧州話)
勾漏粤語(玉林話)
欽廉粤語(欽廉話)
呉川話(湛江話)
?家話(水上話)
論争が行われている方言片
龍門本地話(客家語に入れる説もある)
?州話
平話(広東語と対等の大方言とする説もある)
香港市街の広東語を例に説明する。この項目ではYale式の声調表記を番号に変えて発音を示している。国際音声字母(IPA)には[ ]を付けて示し、表には該当する漢字の例を付す。
広東語の音節は、他の中国語同様に声母(語頭子音)、韻母、声調に分ける事ができる。
現代の香港の広東語の例では、下記の表に示す19種に加えて0声母を加えた計20種の声母がある。
広東語(香港標準粤語)の声母表両唇音唇歯音歯茎音後部歯茎音硬口蓋音軟口蓋音声門音
非円唇円唇
閉鎖音無声無気音b [p] 巴d [t] 打g [k] 加gw [kw] 瓜
無声有気音p [p?] 怕t [t?] 他k [k?] ?kw [k?w] 誇
鼻音m [m] 麻n [n] ?ng [?] 牙
摩擦音f [f] 花s [s] 紗(s [?] 紗)h [h] 蝦
破擦音無声無気音j [ts] 渣(j [t?] 渣)
無声有気音ch [ts?] 茶(ch [t??] 茶)
側音l [l] ?
接近音y [j] 也w [w] 話
上記の声母に加えて、広東語の子音としては入声の音節末に見られる内破音がある。内破音には両唇(-p [p?])、歯茎(-t [t?] )、軟口蓋(-k [k?])の3種がある。また、非入声の音節末には両唇(-m [m])、歯茎(-n [n])、軟口蓋(-ng [?])の3種の鼻音韻尾を持つものがあり、意味の弁別に使われている。
s-、j-、ch-は歯茎音で発音される場合と後部歯茎音で発音される場合があり、現在はこの違いは意味に影響しないが、20世紀前半までは意味の弁別に使われていた。
両唇閉鎖音
b- [p]: 無声無気両唇破裂音
p- [p?]: 無声有気両唇破裂音
-p [p?]: 両唇内破音
m-, -m [m]: 両唇鼻音
f- [f]: 無声唇歯摩擦音
歯茎閉鎖音
d- [t]: 無声無気歯茎破裂音
t- [t?]: 無声有気歯茎破裂音
-t [t?]: 歯茎内破音
n-, -n [n]: 歯茎鼻音
s- [s]: 無声歯茎摩擦音(または[?]:無声後部歯茎摩擦音)
歯茎破擦音