年齢主義と課程主義
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日本における展望

日本の小中学校では戦後60年間にわたって年齢主義が続いてきたが、必ずしも問題点が指摘されなかったわけではなく、改良して行こうという動きも強い。しかし、情報不足欄に記したように、年齢主義以外の制度に対する免疫が存在しない状況では、混乱が生じる恐れもあるため、改悪になってしまわないか危惧する声もある。

官僚・識者の間にも、課程主義の導入を求める声はある。町村信孝文部科学大臣は、2002年の講演会や『教育の論点』(文藝春秋刊)掲載の文章内で、10歳の大学生や20歳の中学生がいてもよいとの見解を示した。また河村建夫文部科学大臣は、2004年朝日新聞インタビューに答え、義務教育段階での原級留置は今までほとんど活用されなかったが、これからはこれについて研究しなければならないとの考えを示した( ⇒キャッシュ)。しかしながら、2005年現在はまだ現実に原級留置が増加したとの報道はない。

原級留置の適用拡大に当たっては、ちょうど少子化の時期であり、教員数、教室数は余裕があるため、明治初期のように破綻することはないといわれる。また、補習や習熟度別指導などの個別指導の技術についても、明治初期とは比較にならないほど情報が蓄積されており、当時のように破綻する可能性は低い。また前述したように、原級留置が増加しても税金負担は増えないので、導入による財政負担の増加はないと考えられる。ただし現状では、義務教育期間の終了基準は年齢主義になっているものの、無償の義務教育期間を過ぎた中学生に対しても、授業料を徴収していないという例も多いため、この取り扱いを継続するならば原級留置が増加すると財政面の負担が増えることになるが、過去の指導では「(学齢超過者は)学校の収容能力等の諸事情を考慮して(受け入れるべきである)」とされているため、学齢生徒と比較すると融通が利くので、一人当たりの税金負担は少ない。また、原級留置をせずに高等学校に進学した場合と比較しても、公立高校の授業料も低廉に抑えられているため、学齢超過の中学生から授業料を徴収しないことによる、高校生との税金負担の差はあまりない。

一方、浮きこぼれ問題もやはり存在するため、戦後約60年間にわたって禁止されていた中学校以下の学校での標準年齢者の飛び級に対しては、各界から導入の要請が強いが、上記の町村発言のようなダイナミックな飛び級はまだ不可能である。また飛び入学が可能な大学数は1998年当初は千葉大学1校だったが、2005年には5校に増加しており、徐々に広まってきてはいるが、「特に優れた資質」に限定し、例外的措置とされている。また現在の教育環境では、中学校以下の学校での飛び級のような早期教育に対してはアレルギーが強く、安易に飛び級を認めると過当競争が生まれる恐れも強く、ますます受験戦争(飛び級競争)を低年齢化させるという懸念も強い。

原級留置や就学猶予、学齢超過者の就学については、法律を改正しなくても現場の対応の変更によって対応可能である。一方、標準年齢者の飛び級や早期就学については、学校教育法などの大々的な改正が必要であるため、原級留置などと比較すると即座の導入は困難である。

このように、2005年現在ではまだ固定的な年齢主義は打破されておらず、新制学校以来長年にわたって続いている慣習はなかなか打破できていない。しかし、一部の学校では色々な先駆的な試みを始めていることもあり、新しいアプローチがなされることも期待できる。

学校教育法一条校ではなくインターナショナルスクールだが、東京都豊島区の ⇒ニューインターナショナルスクール(日本語・英語)というプレスクールから9年生まで(幼稚園から中学3年に相当)の学校では、「マルチエイジ教育」という名称で各クラスに2、3歳年齢が異なる生徒が在籍している。

2006年8月に、日本弁護士連合会は ⇒学齢期に修学することのできなかった人々の教育を受ける権利の保障に関する意見書(PDFファイルに全文がある)を発表した。この文書では、15歳以上18歳未満の新渡日外国人(いわゆるニュー・カマー)については、既存の昼間の小中学校への編入学も許可されるべきであると提言している。


日本における学校ごとの現状


就学前教育

幼稚園では、園児の年齢によって年少組、年中組、年長組に分けられており、学年の名づけ方からも分かるように年齢主義である。この段階では学校的な学習よりも、周囲の人とのコミュニケーションなどの情緒的な内容が重視されるため、年齢で区切るのが自然だと考えられている。ただし、近年は異年齢保育が注目されている。異年齢とはいっても、この年代では1歳程度の差でも、かなり発達度の差があるため効果的なようだ。通える年齢については基本的には「就学の始期まで」となっているが、就学猶予を受けた園児は引き続き通う場合もある。


初等教育

前述したように、小学校においては、中学校高等学校と同様に進級に当たっては「平素の成績を評価」とされているため、法律上は課程主義を取っているとされる。しかし現実的には年度が替わると自動的に学年が上がるような形となっており、ほぼ年齢主義での運用になっている。このため、就学猶予原級留置が行なわれることは稀であり、学年を構成するのは同年齢集団となっている。ただし異年齢になるケースも稀ながら存在し、例えば病気などのために長期欠席をした場合や、帰国生徒などのように日本語の能力に問題がある場合は、所属できる最高学年よりも下の学年に所属する場合もある。また、標準年齢=最低年齢であるため、早期教育ギフテッド教育などを目的として標準年齢児童飛び級をすることは不可能であるが、年齢主義による高年齢者に対する強制的な飛び級が行なわれる場合もある。また学齢超過者の入学は困難である。

年齢主義について、1993年神戸市立菅の台小学校長期欠席児童進級事件判決では以下のように述べられている(抜粋)。

小学校段階では年齢により、体格・精神年齢・運動能力に顕著な差があり、一年遅れると次年度の児童の間にとけ込むのに大変な努力が必要になるし、社会的な違和感に耐える必要という著しい不利益を被ることを考慮すべきである。

一般的に義務教育では年齢主義的な学年制の運用がされているが、殊に、初等普通教育においては「心身の発達に応じて」教育を施すことを目的としており、小学校の段階では年齢により、精神年齢・運動能力・体格等心身の発達に顕著な開きがあることから、年齢別の教育が最も適するといえる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki