安定同位体
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同位体標識化合物

製造された各同位体は、使用用途に合わせて目的化合物に取り入れる必要がある。その行為を同位体標識といい、同位体標識された化合物を同位体標識化合物(または同位元素標識化合物)という。

同位体標識化合物の名称は、化学名の後に、標識部位、標識核種名が続く。例えば、化学式13CH3COOHの酢酸は酢酸-2-13Cとなり、化学式CH13COOHの酢酸は酢酸-1-13Cと、化学式13CH313COOHで部位の特定が必要ない場合は、酢酸-13C2と表される。また、同位体標識化合物ごとのCAS登録番号も存在する。

同位体標識化合物の合成は、特にその分子の一部分の原子だけを標識する場合、その化学合成による標識は非常に困難である。


利用方法
ポジトロン断層法(PET診断)
ガン診断に用いられるポジトロン断層法の試薬には、放射性同位体フッ素18(半減期約108分)で標識した18F-FDGが用いられている。またその原料として、酸素の安定同位体、酸素18原子で標識した-18O (H218O) が製造されている。
NMR構造解析
同一原子であっても同位体核種により核スピンが異なる。このことを利用して、高分子のタンパク質NMR構造解析には、安定同位体で標識したアミノ酸溶媒の利用が欠かせない。重水素、炭素13、窒素15などの安定同位体が用いられている。
地球惑星科学
前述の通り、地球惑星科学の研究分野では、物質の同位体比を質量分析器で測定する事により、物質の起源、変遷の解析や、年代測定を行う事ができる。そこから、地球の古環境やマントルなどの地球深部の物質の移動などが解き明かされてきた。また極微量ながら、保持する希ガスなどの同位体比が太陽系物質ではありえない粒子が、原始的な隕石から発見されている[2]。その同位体比から超新星爆発赤色巨星星周など太陽系外に起源を持ち、原始太陽系の高温時代を生き残った粒子だと考えられている。
代謝測定
重水、水-18Oあるいは13Cで標識した試薬を生体内に投入すると、生体内で代謝が進むことにより、呼気や尿などから13C、18O、重水素(D)を天然存在比よりも多く含んだ二酸化炭素や水分などが採取できる。この採取した物質の同位体比を測定する事により、生体内の代謝状況を解析できる。この安定同位体を用いた代謝測定の技術は、胃内にその存在の有無が確認できるピロリ菌の呼気検査や、エネルギー代謝測定が不可欠な肥満科学やスポーツ科学などに利用されている。同様に、炭素の放射性同位体で生成した二酸化炭素をマーカーとして代謝測定することは、動物のみならず、植物の光合成に関する試験等でも用いられる。
ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT)
ホウ素の同位体10Bの原子核に中性子を照射すると、核反応により高エネルギーのリチウムの同位体7Li原子核とヘリウム4He原子核を放出する。そこで、このホウ素10を特定の化合物に標識しガン細胞に選択的に取り込ませると、ガン細胞を選択的に中性子照射により破壊することができる。このガン治療法をホウ素中性子捕捉療法 (Boron Neutron Capture Therapy, BNCT) といい、日本国内では京都大学原子炉実験所[3]武蔵工業大学原子力研究所[4]日本原子力研究開発機構の3箇所で実施できる施設があったが、現在(2007年段階で)は京都大学と日本原子力研究開発機構の2箇所にこの治療法が行える原子炉が存在する。BNCTの課題として、中性子源に原子炉が必要ということで、汎用性に乏しかったが、NEDO-PJに参加する京都大学・森義治教授が、原子炉を使わずに中性子線を発生する小型加速器(百平方メートル程度の大きさ)のアイデアを2006年イタリアで開かれた国際学会で発表。[5][6][7]


同位体の入手方法
安定同位体
日本国内での、安定同位体および安定同位体標識化合物で市販されているものは、一般試薬と同等の法規で入手可能である。
放射性同位体
日本国内での、放射性同位体および放射性同位体標識化合物は、民間企業から販売されているものもある。ただし、購入者に専用の施設および資格の保有が必要な場合がある。


関連項目

同重体

同位体の一覧

分割した同位体の一覧(英文)

原子量


脚注^水-18O製造JST
^隕石中の希ガスの同位体異常とプレソーラー粒子の説明
^京都大学原子炉実験所
^武蔵工業大学原子力研究所
^BNCTの説明図JAEA
^http://wwwa.jnc.ne.jp/ffid0000/ FFAG・DDS研究機構
^http://www.nedo.go.jp/activities/portal/gaiyou/p05003/p05003.html NEDO-次世代DDS型悪性腫瘍治療システム研究開発事業


外部リンク

日本アイソトープ協会

同位体COE(名古屋大学)


参考文献

日本化学会編 『化学総説 23 同位体の化学』学会出版センター、1979年、ISBN 4-7622-2181-3

和田英太郎 『生物界におけるδ15N,δ13Cの分布 −その40年史』

酒井均、松久幸敬著『安定同位体地球化学』1996年、東京大学出版会、ISBN 978-4130607131

J.ヘフス著、和田秀樹/服部陽子訳 『同位体地球科学の基礎』シュプリンガージャパン、2007年、ISBN 978-4-431-71245-9


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki