学名
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慣例として命名者と年号の間にカンマを打たないので、例えばコレラ菌であればVibrio cholerae Pacini 1854となる。

命名者の名前は、特に有名で大量に命名している著者の場合、Linnaeusを"L."、Thunbergを"Thunb." のように略す慣習がある。植物では標準的な略記法が書籍(Authors of Plant Names)にまとめられているのでそれにしたがうのが良い。一方、現在の国際動物命名規約のもとでは略記は不適当であるとされている(Appendix B.12)。

命名後に属名が変わった場合は、はじめの命名者名(動物の場合、出版年号も)を、ヒョウPanthera pardus (Linnaeus, 1758) のように、丸括弧に入れて表記する。この場合、最初にリンネが命名したときにはネコ属で、Felis pardus Linnaeus, 1758 だったものが、後にOkenによってヒョウ属に移されたことを示す。命名者と別属に移動した人物の両方を引用したい場合、括弧付き命名者名のあとに括弧なしで続けて Panthera pardus (Linnaeus) Oken または Panthera pardus (Linnaeus, 1758) Oken, 1816 のように記述する。動物の場合、属の移動者まで記述する事は希だが、植物の場合は非常に頻繁に見られる。属を移動した人物のみを引用する記法はない。

動物においては、Papilio adippe [Denis & Schiffermuler], 1775 のように命名者が角括弧に囲まれている場合がある。これは当初の命名時に命名者が匿名・不明であり、のちに命名者が判明もしくは外的証拠により推定された事を示す。ただし動物の場合、匿名での命名が有効なのは1950年以前の発表に限られる。なお植物の場合、外的証拠による命名者の推測は現在でも有効で通常の命名者と同じ扱いとなり、角括弧は用いない。


命名の先取権

同一の種に別々の人物が異なる学名を命名して記載論文を発表した場合、原則として先に発表された学名が有効となる。 逆に、別々の種に同じ学名が命名されてしまった場合にも、原則として先に発表された学名が有効となる。これを先取権の原則という。同一の種が異なる名を持つことはシノニム(異名・同物異名)、別の種が同じ名を持つことはホモニム(同名・異物同名)と呼ばれる。

ただし、先に発表されていた学名が、長い年月のあいだ誰にも気づかれることなく使用されず、その後に発表された学名のほうが広く知れわたっていて長く使用されていたと判明することもありうる。このような場合、学名の変更はその生物にかかわりのある分野へ大きな混乱を及ぼすおそれがある。これを避けるための措置が命名規約に明記されている。動物の場合、一定の手続きに従って審査を受け、それが受理されれば、先に発表された学名を遺失名として扱い、後から発表された学名をこれまでどおりに使用することができる。遺失名の決定は、審査会の強権発動によってのみ行われる。植物の場合、その可能性がある学名をあらかじめリストアップして対処している。

本来、ホモニム(同名)は先取権の原則や規約の規定により必ず回避されなければならないが、動物命名規約と植物命名規約は互いに独立しているため、界を越えたホモニムは今のところ規制する事が出来ない。実際に、属レベルでは植物と動物に同名属の存在が数例知られている。


命名と模式標本

学名が指し示す対象は、厳密にはその「種」ではなく、記載者が記載論文で指定した「模式標本(タイプ標本とも)」そのもののみである。

たとえば、記載者がある、ごく身近で一般的な種「A」に「a」という学名を命名するために指定したつもりの模式標本が、後に、非常に近縁で紛らわしく、たいへん珍しい別の種「B」であると判明した場合には、これまで広く使用されよく知られていた学名「a」は、種「B」に使用され、なじみのある種「A」には、別の有効名を探すか、新たな種として記載する必要がある。

この、模式標本と学名との完全な対応関係は、日本の和名には見られない独自のシステムである。


生物分類単位

属と種以外の分類群の単位にも、同様にラテン語形式の学名がつけられている。


上位分類

ドメインなどの、属よりも大きな区分には、最初の1文字が大文字で、それ以外は小文字の名前を用いる。 これらは属名や種小名の字体(一般にイタリック体)と同じ字体は用いない。 これらの分類群の学名を属名+種小名の前に続けて書くことはあまりしない。

さらに細分が必要な場合には、大・上・亜・下・小の接頭辞(Magn-, Super-, Sub-, Infra-, Parv-)をつける。(例:下目、上科、亜科、等)

また、科の下に"Tribe"を立てることもある。この階級に対する訳語は動物学と植物学で異なり、動物学では、植物学では連と呼ばれる。


下位分類

生物分類の基本単位は「種」だが、さらに亜種・変種・品種と、細目に分類することがある。

亜種名等は、種小名と同様の形式(一般にイタリック体ですべて小文字)で表記し、 属名+種小名の後に続けて書く。

属名+種小名+「ssp.」または「subsp.」+亜種名(ssp, subsp: subspeciesの略)

属名+種小名+「var.」+変種名(var: variantの略)

属名+種小名+「f.」+品種名(f: formaの略)

この表記を「3名法」とよぶ。ssp.等の符号は属名や種小名の字体(一般にイタリック体)にしない。なお、亜種や変種の無かった種に新たにそれらが作られた場合、元になった種には、種小名の後ろに基本亜種(変種)を示す亜種名(変種名)としてもとの種小名が繰り返される。これは新亜種(変種)の記載によって自動的に生じるものである。

なお、動物の場合、上に示した ハイイロオオカミ Canis lupus lupus のように、subsp.等の符号抜きで亜種小名を記すのが通例である。また、亜種より下位の階層である変種や型は、1961年以降、「国際動物命名規約」の適用から除かれ、現在で分類学上は意味を認められない。

園芸方面では、園芸品種名を下記のように引用符で括ったり、符号cv.(複数形はcvs.)で表記することがある。

属名+種小名+「‘園芸品種名’」

属名+種小名+「cv.」+「園芸品種名」(cv: cultivarの略)

園芸品種名は書かないが園芸品種であることを表記するには下記のようにする。

属名+種小名+「cv.」


属と種の間の分類

属と種の間には「亜属」があるが、植物や菌類では属の下に節(Section)、節の下に系を用いることがある。属>(亜属>節>亜節>系>亜系>)種となる。

亜属等は特に表記しなくとも問題ないが、表記したい場合には

属名+ (亜属名) +種小名

属名+ (「Subgen.」+亜属名) +種小名   (Subgen.: Subgenusの略)

等のようにする。 亜属名等は属名と同様の形式で表記する。() で括るためこれをカウントして、亜種、変種などの時のように「3名法」と呼ぶことはない。Subgen.等の分類名は属名や種小名の字体(一般にイタリック体)にしない。分類名を表記しないと、亜属名なのか節名なのか分からないため表記されることがあるが、表記しなくても間違いではない。特に動物では節や系を用いることはほとんどないため、表記しないのが普通である。動物の場合、属名と種小名の間に() でくくられた属名と同様の形式の名称があれば、自動的に亜属名であると見なされる。


雑種

雑種は次のように表記する。ここで属名はXxx,Xxx1,Xxx2等と書き、種小名はyyy,yyy1,yyy2等と書くことにする。
種間雑種(同属他種との雑種)
「Xxx yyy1」と「Xxx yyy2」の雑種は、「Xxx × yyy3」という形式にする。(掛け算の記号「×」は雑種を意味する記号。エックスと間違わないこと。 yyy3は雑種につけた種小名である。)上記のような表現では、どういう種と種の雑種かわからないので、それを明記したい場合は、「Xxx yyy1 × Xxx yyy2」という形式にすることもある。
属間雑種(他属との雑種)
「Xxx1 yyy1」と「Xxx2 yyy2」の雑種は、 「× Xxx3 yyy3」という形式にする。(Xxx3は雑種につけた属名、yyy3は雑種につけた種小名である。)


属の変更

属が変更された種については、次のようになる。まず命名者については、命名者名が括弧でくくられ、その後に変更者の名前を書くことになる。また属名には性があり、基本的に種小名の語尾は属名が男性のときには-us、-is、女性のときには-a、-is、中性のときには-um、-emとなる。そのため属の変更によって種小名の語尾が変化することがある。


その他 記号、略号など


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki