日本武道館は、職業として音楽活動を行う者の多くが「ここで観客席を満員にしてコンサートを行う」ということを長期的な大目標にする、歌手たちにとってのある意味では聖地的な存在である。
日本武道館ほどの規模の施設でコンサートを成功させるには、単純な知名度、歌唱力のみならず、歌手・エンターテイナーとして総合的な高い能力が要求される[32]。そのため、長いキャリアを持ちビッグネームとして認知される一般芸能人や大手芸能事務所に所属するアイドルタレントでさえ、武道館公演を興行として成功させるのは容易なことではないとされる。よって、日本武道館でコンサートを何度も成功させることは、単純な収益以上に、集客力や興行力などの歌手としての能力が『本物』であることを芸能業界の内外に誇示する意味を現在でも持っている。
声優業界で最初に武道館コンサートを成功させたのは、1990年代のアイドル声優の代表的存在であった椎名へきるである(1997年)。上述したような背景があるだけに、椎名の声優としての初の武道館コンサートの成功は、声優界・芸能界の両方に驚きと衝撃を与えた(2002年・2003年・2004年にも開催)。特に声優界では、この椎名へきるの成功もあってか歌唱力をセールスポイントとするアイドル声優が次々と登場し、中でも水樹奈々は、声優として2人目の武道館ライブを2005年・2006年の2年連続で実施し成功した。2008年3月には田村ゆかりが声優として3人目となる武道館単独公演を行い、これも成功した。
逆に芸能界では、日本武道館コンサートを成功させることは依然として難しく、歌手にとってはステータスシンボルともいえるイベントであり、場合によっては歌手自身のみならず所属する芸能事務所の後援会やファンクラブの動員力さえ必要とする状況である。このため反応は様々に分かれ、「一般のアーティストよりも発声がしっかりしている」「意外と歌が上手い」「声優業界の販売戦略を謙虚に学ぼう」と言う人々から、「たかが声優、たかがアニメ音楽」と反発する人々[33]まで様々な意味で芸能界に衝撃を与えることになった。特に水樹は元々が演歌歌手志望であるだけに歌唱力にも定評があったが、それまで音楽業界全般に広範に知られた存在ではなかっただけに、「たかが若手声優のアニメ音楽」という気持ちで確認程度のつもりで水樹の歌を聞き、かえって衝撃を受けた人物もいるとされるなど、影響はアニメ業界のみならず各方面に及ぶことになった。現在では、業界紙で「TOP10入り常連の人気声優アーティスト」[34]、という紹介がなされるなど、歌手としての認知も進んでいる。
舞台公演等に行かなければ見ることが出来なかった素顔の声優たちも、近年はメディアの発達等により、ラジオ・テレビ・雑誌・インターネットなど比較的一般的なメディアにおいて生の演技やトーク等を見ることが多くなりつつある。
声優自身が作品の登場人物に扮して、舞台で公演した例としては、『水色時代』『サクラ大戦シリーズ』『HAPPY★LESSON』『HUNTER×HUNTER』『スクールランブル(一部分)』『アニメ店長』が挙げられる。とくに『サクラ大戦』の場合、主要キャラクターが「帝国歌劇団」という劇団に所属しているという設定であり、原作の広井王子は、当初から現実の舞台公演も視野に入れてキャスティングした旨語っている。
しかしアニメファンや吹き替え作品のファンにとっては、本来「影の存在」だった声優が表舞台に姿を見せるようになったことに対して、キャラクターや作品のイメージが壊れると感じ、嫌悪感を持つファンも多い。特にアニメの場合は絵と人間との比較となるため、両者間のギャップが大きい場合がほとんどである。
ただし、当人が声優業をレパートリーの一つとしか考えておらず、実際は俳優や歌手として活動しているのに、単にアニメファンが声優活動しか知らないだけ、という事例もままあるので注意が必要である。特に、舞台俳優や歌手・タレント出身者は、声優としての知名度が出てきても、可能な限り元の活動を継続している者が大半である(例えば、アニメ声優・歌手の印象が強いベテランのささきいさおは、実際はオリジナルソングの歌手活動と舞台演劇が主体であり、また俳優および声優としては"佐々木功"、歌手としては"ささきいさお"の名義を近年まで使い分けていた)。
もっとも、近年の若手では声優自身が露出することを前提とした養成・キャスティングも広く行われており、本人の個性やルックス、キャラクターとの一体感も重視されていること、またキャラクターとの年齢差もそれほど大きくないことから、ベテランと言われる世代に比べればギャップは少なくなっている。役柄と本人のギャップも個性・魅力のうちであるという見方もある。
また、声優(特にアイドル声優)の登用に際して演技力が軽視されるようになってきているのではないかと危惧する向きも多い。
現在では従来のように舞台俳優をホームグラウンドとしながら声優も併せてこなす者に比べ、前述のようなアイドル化した声優や本当に声優活動に絞って仕事を行う者も増えてきている。しかし現況ではアニメファン・声優ファンという特定のファン層が確立しているため、若い声優たちはもっぱら彼らを対象とした活動を中心とする傾向にある。
テレビ出演に関しては歌手活動をしている声優が音楽番組にゲスト出演することがたまにあるが、1995年にテレビ東京が関東ローカルで、当時の声優ブームにあやかり、「声・遊倶楽部」という司会・ゲスト・アシスタント・レポーター等の出演者の全てが声優という声優専門のバラエティ番組を制作したり、2000年代にテレビ朝日が全国ネット単発特番枠で人気声優のランキング番組を何度か放送したりしている。しかし、近年ではローカル局の方が番組の幅が広いことや、BS・CSの普及もあり、声優がレギュラー出演する番組はローカル局やBS・CSの方が多くなってきている。一方で、報道関係番組のナレーションを受け持っている声優はテレビ出演は控える傾向になる。これは、報道番組のイメージを壊さないためであることが一番の理由である。
本来、声優の多くは裏方の形で、その姿を表に出さないものとされ、その関係もあって容姿はあまり考慮されないといった事情があった。しかしアイドル声優などのように、メディア露出が可能な声優が多く出る一方で、容姿には魅力的要素にかけるが、その喋り方や声楽の面で、多くのファンを獲得する声優も少なくない。
そのような事情もあり、アニメ作品(または近年のコンピュータゲーム)では架空のキャラクターがベテラン声優の声をあてられることで、愛好者筋に注目されるアイドルとして、実在のアイドルに匹敵する人気を博す場合もある。キャラクターグッズや関連商品の販売も含めて、そのような「声優込みで完成されたアイドル像」を形成している場合には、極めて高い商品価値を持つといえる。実際に、アニメソングやゲーム音楽の域を出ないながら、オリコンチャート入りを果たした声優の仕事も存在する。また、声優のおみむらまゆこは旧名の麻績村まゆ子時代に実体を持たないバーチャルアイドル声優として登場していたが途中から路線変更で普通のアイドル声優となった。
しかしアニメ作品が、マニアや一部愛好者、あるいはおたくの好むもの…という風潮も残っており、マイナーアイドルの域を脱せない部分があるのも事実である。そこで架空の、理想的な容姿を持つキャラクター像を3次元コンピュータグラフィックスなどで生成し、これにベテラン声優が声をあてて、理想的なアイドル像を合成しようという動きも見られる。ホリプロのような芸能事務所でも、1990年代中頃より、この方面を模索している。
これらはバーチャルアイドルと呼ばれ、現行ではビジュアル面に特化したグラビアアイドル的な活動を見せるキャラクターも少なくない一方、声優とセットでコンピュータゲームやテレビCMといった一連の映像作品に登場する動きも見られる。