委員会設置会社は、執行役の権限強化による経営の迅速な実行を可能にするため、あるいはアメリカ企業を親会社にもつ企業が親会社と組織構造を連携させたり、外国人投資家へのアピールを狙って導入され始めたが、2002年から2005年までの東証一部上場企業の時価総額合計の伸び率は30%近いのに対して委員会設置会社のそれはマイナスとなっており、投資家の評価が高いとは言えない状況である。
一方、監査役をおく既存の体制をとる会社は、委員会設置会社に移行しなくても経営の効率性が図れる、あるいは移行すると監査機能が形骸化するなどを移行しない理由とするが、それらの会社でも社外取締役や執行役員制度の導入がますます進んでいる。
問題点
士気の低下従来的な人事制度では、大手企業の場合、平社員を振り出しに最終的には取締役、社長などへ昇格することがひとつの目標としている場合が多い。社外の者が取締役になることで、社内のモラール(士気)の低下などが危惧される。
人材の確保委員会設置会社においては最低2名の社外取締役が必要となるが、アメリカと比べて経営者の労働市場が流動的でない日本において経営を監督できる資質をもった社外取締役を確保できるのか危惧される。
監査体制の不徹底業務執行と意思決定が執行役に集中するうえ、執行役と取締役の兼任が認められているため(ドイツでは認められていない)、業務執行を監視する委員の選定を行う取締役会は、執行役が多数を占めることが可能であり通例である(兼任を認めるアメリカでも取締役の過半数が社外取締役であることが要求される)。また、執行役は委員との兼任もできる(監査委員を除く)。このように、日本の委員会設置会社の制度は業務の執行と監督が分離しているか疑わしく、たんに執行役の権限が強大となるばかりで、取締役と独立した監査役を置く従来型と比べて適正な監督が望めないのではないかとの批判がある。
社外取締役の実効性権限が集中する執行役に対する監督を行う委員会のメンバーの過半数を社外取締役とすることが監督体制の要となっているが、社外取締役は常勤しないし、親会社・取引先の関係者など執行役からの独立性が疑われる者もその資格を満たすため(アメリカでは経営不祥事以降この点が改善されている)、社外取締役による監視機能の実効性には疑問があるとの指摘がある。
本稿では、委員会設置会社の定めの新設及び廃止の手続き並びに2006年の会社法施行に伴う登記について説明する。
委員会非設置会社は定款を変更して委員会設置会社となることができる( ⇒915条1項・ ⇒911条3項22号参照)。この場合、監査役・監査役会を置いている場合、廃止しなければらず( ⇒327条4項)、監査役は任期満了により退任する( ⇒336条4項2号)。また、取締役会を置いていない場合、取締役会設置会社となり(327条1項3号)、会計監査人置いていない場合、会計監査人設置会社となる(327条5項)。なお、委員会設置会社となった場合、従前の取締役及び会計参与は任期満了により退任する( ⇒332条4項1号・334条1項)。会計監査人は退任しないので注意が必要である。
委員会設置会社においては特別取締役による議決の定めをすることはできない( ⇒373条1項)。また、特例有限会社には委員会を置くことができない(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律17条1項。以下整備法という。)。
委員会設置会社の定めの新設は定款変更であるから、株主総会の特別決議によらなければならない( ⇒309条2項11号・ ⇒466条)。
登記事項は以下のとおりである(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ア(イ))。
委員会設置会社の定めを設定した旨、指名委員・監査委員・報酬委員の氏名、執行役の氏名、代表執行役の氏名及び住所
従前の取締役等が退任した旨
取締役等が就任又は重任した旨
取締役のうち社外取締役である者について社外取締役である旨(既にその登記があるときを除く)
変更年月日
登記記録の具体例については、2006年4月26日民商1110号依命通知第4節第5-6(1)を参照。
登記の事由(商業登記法 ⇒17条2項3号)は「登記の事由 委員会設置会社の定めの設定」のように記載する。
登記すべき事項(商業登記法17条2項4号)は以下のとおりである。
委員会設置会社となった旨及び変更年月日
取締役が退任・就任・重任した旨及び取締役の氏名並びに変更年月日
代表取締役が退任した旨及び代表取締役の氏名・住所並びに退任年月日
指名委員・監査委員・報酬委員が就任した旨及び各委員の氏名並びに就任年月日
執行役が就任した旨及び執行役の氏名並びに就任年月日
代表執行役が就任した旨及び代表執行役の氏名・住所並びに就任年月日
また、以下の事項を記載しなければならない場合がある。
取締役のうち社外取締役である者について社外取締役である旨
監査役設置会社の定めを廃止した旨及び変更年月日、監査役が退任した旨及び監査役の氏名並びに退任年月日
監査役会設置会社の定めを廃止した旨及び変更年月日
会計参与が退任・就任・重任した旨、会計参与の氏名又は名称及び計算書類等の備置き場所並びに変更年月日
特別取締役による議決の定めを廃止した旨及び変更年月日、特別取締役が退任した旨及び特別取締役の氏名並びに退任年月日
取締役会設置会社となった旨及び変更年月日
会計監査人設置会社となった旨及び変更年月日、会計監査人が就任した旨及び会計監査人の氏名又は名称並びに就任年月日
登記すべき事項を記録した磁気ディスクを提出する場合[1]、「登記すべき事項 別添FDのとおり」のように記載し、OCR用紙に記載した場合(1993年12月27日民四7783号通達第7-1)、「登記すべき事項 別紙のとおり」のように記載する。
添付書面(1961年9月15日民甲2281号回答、一部)は株主総会議事録( ⇒46条・54条4項)、取締役会議事録(商業登記法46条)及び就任を承諾したことを証する書面(商業登記法54条1項・2項1号)並びに印鑑証明書(商業登記規則61条2項ないし4項)である(2006年3月31日民商782号通達第2部第3-10(2)ア(ウ)参照)。通数も記載しなければならない(1961年9月15日民甲2281号回答)。会計参与の重任・就任の場合、登記事項証明書もしくは会計参与が公認会計士又は税理士であることを証する書面も添付しなければならない(商業登記法54条2項2号・3号)。会計監査人設置会社となった場合については会計監査人設置会社も参照。
登録免許税(商業登記法17条2項6号)は委員会設置会社の定め新設の分が申請1件につき申請1件につき3万円であり(登録免許税法別表第1-24(1)ワ)、各委員等の就任及び取締役等の就任・重任・退任の登記の分が申請1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)である(同法別表第1-24(1)カ)。なお、監査役設置会社の定めを廃止した場合又は特別取締役による議決の定めを廃止した場合もしくは会計監査人設置会社の定めを新設した場合(複数の場合が混在する場合も同様)、別途申請1件につき3万円を納付しなければならない(同法別表第1-24(1)ネ)。