国語国字問題
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当用漢字表

当用漢字とは、1946年(昭和21年)11月16日に内閣から告示された漢字の全廃を目的に漢字を制限するための表に掲載された1850字の漢字を、狭義には指す。広義には、関連するいくつかの告示を総称する。同表では、日常使用しないとされた漢字は制限され、公用文書や一般社会で使用する漢字の範囲が示された。

従来、複雑であったり多様であったりした字体を簡素化する試みも、一部の文字で行われた。ただ、中国簡体字のように漢字の構成要素ごとに体系的に変更を行うのではなく、慣用を参考に個別の文字を部分的に簡略化しただけであった。

漢字の読みを制限する試みも行われたが、当初の当用漢字音訓表は「魚」の読みを「ギョ」と「うお」に制限し「さかな」の読みができなくなるなどの不合理が散見され、1972年(昭和47年)6月28日に当用漢字改定音訓表として改定されている。

今日見られる「交ぜ書き」の問題も、同表に端を発する問題である。同表によれば、当用漢字で書けない言葉は言い換えて表現することになっていたが、実際には漢字を仮名で書いただけで元の言葉が引き続き使われる事がかなり多くあり、漢字と仮名の「交ぜ書き」が多数生ずることとなった。顕著な例としては「改ざん」「破たん」「隠ぺい」「漏えい」「覚せい剤」「き裂」「は虫類」などがある(「交ぜ書き」せずに全て漢字で表記した場合はそれぞれ「改竄」「破綻」「隠蔽」「漏洩」(「漏泄」(ろうせつ))「覚醒剤」「亀裂」「爬虫類」となる)。これら「交ぜ書き」はその使用が強制されているわけではなく、随筆や小説などの文学ではほとんど用いられないが、一部の新聞社や放送局などのメディアは、それぞれの業界団体を通じて、特に「交ぜ書き」表現を多用している。マスコミがこうした「交ぜ書き」を使用する理由としては、文面を読みやすくすることによって購読者や視聴者を獲得するという戦略が挙げられる(極端な例としては、低学年にも分かりやすいように常用漢字さえも「交ぜ書き」の対象としているテレビ番組がある)。また当用漢字制定当時には、戦前から行われていた難読字のルビ振りが当時の活版印刷においては組版作業のコスト増大を招いていたことから、漢字制限・漢字撤廃がこれらのコストの低減に役立つという経済的理由もあった(新聞各社は当用漢字の導入と同時にルビを廃止している。漢字の字数も読みも制限されていれば、振り仮名は不要である、という理屈である)という。実際、国語審議会の動きには新聞社など大手マスコミが大きく関わっていたといわれている。

国語審議会1956年(昭和31年)7月5日、当用漢字の適用を円滑にするためとして、当用漢字表にない漢字を含む漢語を同音の別字(異体字関係にあるものを含む)に書き替えてもよいことを決定し、「同音の漢字による書きかえ」として報告した。

従来複数の書き方が存在したものを一本化する方向で例示したものには次のようなものがある(括弧内が当用漢字表にない漢字を含む書き方)。

注文(註文)

遺跡(遺蹟)

更生(甦生: 本来の読みは「そせい」→蘇生)

知恵(智慧)

略奪(掠奪)

妨害(妨碍、妨礙)

意向(意嚮)

講和(媾和)

格闘(挌闘)

書簡(書翰)

一般には複数の書き方があったものの専門用語としては当用漢字表にない漢字を含む書き方をしていたものについて当用漢字表内の漢字に書き替えることを認めたものには次のようなものがある(括弧内が当用漢字表導入以前の書き方)。

骨格(骨骼)医学用語

奇形(畸形)医学用語

また、その漢語においては使われることのなかった当用漢字表内の漢字に書き替えることを認めたものには次のようなものがある(括弧内が当用漢字表導入以前の書き方)。

防御(防禦)

扇動(煽動)

英知(叡智)

混交(混淆)

激高(激昂)

これらの「交ぜ書き」「書き替え」には、熟語本来の意味が不明瞭になってしまうという問題点がある。漢字は「音」と「意」で成り立っており、熟語はそれを組み合わせ、意味を表したものである。例えば「破たん」という熟語で、「破」は「やぶれる」という意味であるが、「たん」の意味を問われたとして、平仮名の「たん」では何の意味を成すことができない。また、「沈澱」の書き替えである「沈殿」だと、「殿」の意味を問われたとしても、「殿が沈む」など全く意味を履き違えてしまう可能性がある。「書き替え」の中には支障の少ないものもあるが(「掩護」→「援護」など)、大抵は音を仮借しただけのものであり、こうしたことから、「交ぜ書き」「書き替え」は、「自ら日本語文化、熟語の成り立ちを破棄しているに等しい行為である」とか、「乱れた日本語表現を合理化主義の中で合法化してしまった」などと批判されることがある。

しかし、今日漢字表記の在り方が見直されつつあり、「交ぜ書き」を用いず、表外の漢字を多用したり、またその漢字にはルビを表記するメディアが増加してきた。これは、近年のコンピューター社会においてワープロの変換文字など表外字に触れる機会が増大したことで、漢字表記が見直されてきたためであるとも言われている。(表外漢字字体表の項で詳述)


当用漢字別表と人名用漢字別表

当用漢字のうち881字は、小学校教育期間中に習得されるべき漢字として、1948年(昭和23年)2月16日に当用漢字別表という形でまとめられた。いわゆる「教育漢字」である。

人名については、1948年(昭和23年)施行の戸籍法第50条には「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない」とある。この範囲は当初は法務省令によって平仮名、片仮名、当用漢字であるとされており、当用漢字以外の漢字は新生児戸籍の届出の際に使用することができなかった。しかし、1951年(昭和26年)には人名用漢字別表として92字が内閣から告示され、当用漢字外の漢字も一部認められることになった。この人名用漢字別表は数度の改訂を経て1997年の改訂後、285字を含むものとなった。(但し、必ずしも追加だけが行われたわけではない。常用漢字表制定の際、人名用漢字のうち8字が常用漢字に追加されたため、人名用漢字からは外された。)

また、札幌高等裁判所で、戸籍法の規定にある常用平易な文字であるのに人名用漢字別表に含まれないために子供の名として使用できなかったことを不服とした裁判で訴えが認められたことも要因の一つか、2004年9月27日付で488文字が追加された。当初は578文字の追加が見込まれていたが、パブリックコメントの結果、人名にふさわしくない漢字(怨・痔・屍など)が削除された。


当用漢字に対する批判

漢字全廃を目的とした当用漢字はしばしば批判されている。1958年から雑誌「聲」に連載された『私の國語教室』で福田恆存は、既に漢字制限は不可能である事が明らかになっている、と指摘した。1961年には表音主義者が多数を占め、毎回同じ委員が選出される構造となっていた国語審議会の総会から、舟橋聖一塩田良平宇野精一山岸徳平等、改革反対派の委員が退場する事件となった。

1962年、国語審議会の委員に選出された吉田富三は、「国語は、漢字仮名交りを以て、その表記の正則とする。国語審議会は、この前提の下に、国語の改善を審議するものである。」を審議の前提とするよう提案した。

1965年森戸辰男・国語審議会会長は記者会見で、「漢字かなまじり文が審議の前提。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki