天皇は、外国元首や外交官の接受、外交官認証(公証行為)といった対外代表性をもつほか、日本国の象徴(憲法第1条)であり、また国事行為を主催することが規定されている、など事実行為として元首の機能を有しているが、すべての公的行為には内閣の助言と承認(第3条)を必要とし、天皇は国事行為には無責任であることから議論がある。公式見解では、ほぼ天皇を元首としても差し支えないとする。しかし、戦後、天皇を元首とするかが長らく争点となっていた時期があり、天皇制の議論にまで発展していた。
元首(Head of state)の概念が国家有機体説の産物である以上、社会契約説に基づく国家観のもとでは元首という概念に無理があり、それを明確にすること自体がかえって規範的に社会のあり方を規制する可能性がある[8]。 いずれの機関が日本国の元首なのかは、複数の意見がある。
大日本帝国憲法は第4条で天皇を元首と規定した。一方、日本国憲法やそのほかの法律には、天皇を元首とする規定がない。ただ、元首の案件とされる国事行為についての規定はある。日本の公的機関の見解を以下に記述する。
内閣法制局は、「立憲君主制と言っても差し支えないであろう」としている[9][10]。また、天皇は限定された意味における元首であるとする[11]。一方で、天皇を元首と呼びうるかは定義によると述べるにとどまっている[12]。
外務省は、日本は立憲君主国であるとしている。
判例においては、プラカード事件第二審において天皇は元首であると判示している[13]。
外国の大使・公使の接受を行うという意味で国を代表している側面があり、元首の性質を有しているとする立場がある。清宮四郎らがこの立場にある。
公式見解に対する反論が、いくつかなされている。
公式見解では、日本は立憲君主国であるとしている。しかし、現在の憲法に君主規定自体が無いので「立憲(による君主)」とはいえないのではないかとの反論がある[要出典]。 憲法学者芦部信喜によると、
その地位が世襲で伝統的な権威を伴う
統治権、少なくとも行政権の一部を有する
などが君主の要件とされる[14]。 1.については日本の天皇は少なくとも千年以上の歴史を持ち、伝統的な権威を持っているので当てはまるが、2.については議論の余地がある。元首の要件で特に重要なものは、条約締結権など外に向かって国家を代表する権能である。しかし、天皇は、憲法第4条で、「象徴」という「国政に関する権能を有しない」者であると規定され、外交関係では「認証」「接受」という形式的・儀礼的行為しか憲法上は認められていない。一方、憲法第1条の象徴天皇制の規定の主眼は、国の形式的象徴の役割を強調するもので、他の権能、役割を否定する趣旨であると解される、とする。
以下のような天皇を元首としない説がある。[15]
日本国には元首は存在しないとする説[16]
準元首として天皇(「元首」としては存在しない)とする説[17]
内閣あるいは内閣総理大臣であるとする説[18]
元首が宗教の首長を兼ねる例
イギリス国王 - イギリス国王とイングランド国教会の地上における唯一最高の首長を兼ねる
ローマ教皇 - バチカン市国元首とカトリック教会の首長を兼ねる
ネパール国王 - ヒンドゥー教の神とされている
ダライ・ラマ - チベット亡命政府元首とチベット仏教の法王を兼ねる
日本の天皇 - 旧憲法では国家神道(神社神道)の総攬者で天皇が現人神として言説化された。現在は皇室神道は神社神道から分離しており、天皇は神社本庁の長ではない。皇室は大嘗祭等をはじめとした多くの神道の祭祀を執り行い伊勢神宮や勅祭社に定期的に勅使を派遣している。
ここでいう「元首」は上記のものとは異なる意味である。古代ローマで元首(princeps)は、ローマの「市民の第一人者」の意味で、内戦を勝ち残ったオクタウィアヌスが共和政の形式を残して身に帯びた称号の一つである。これにちなみ、ローマ帝政の前半は元首政として時代区分される。
象徴天皇制に関する基礎的資料(衆議院憲法調査会事務局 編)h15.2 ⇒[2]
注釈^ リヒテンシュタイン家は、ハプスブルク家の重臣として家産を蓄積した。