捜査は長引き、犯人逮捕まで2年の歳月を要した。捜査が長引いた理由には次のようなものがある。
人質は事件発生後すぐに殺害されていたが、警察はそれを知らなかった。
警察は人質が殺害されることを恐れ、報道各社と報道協定を結んだ。
当時はまだ、電話を逆探知することが法的に許されていなかった。
身代金の紙幣のナンバーを控えるのを忘れてしまっていた。
結局は、マスコミを通じて情報提供を依頼することとなった。
事件発生から2年が経過した1965年3月31日、警察は捜査本部を解散し、「FBI方式」と呼ばれる専従者をあてる方式に切り替えた。警察庁科学警察研究所の鈴木隆雄に録音の声紋鑑定依頼をしたが当時は技術が確立されず、刑事の地道な捜査から犯人からの電話の声が容疑者の一人、小原保(1933年1月26日 - 1971年12月23日)と良く似ているとされたことや、小原のアリバイに不明確な点があることを理由に事情聴取が行われる。
容疑者だった小原は1965年7月に犯行を認め、まもなく逮捕された。
最終的に小原を自供に追い込んだのは、刑事平塚八兵衛による、徹底的なアリバイの洗い直しと供述の矛盾を突くねばり強い取り調べの結果であった。小原はそれ以前にも何度か捜査線上に浮かび取り調べを受けたものの、アリバイを崩せなかったことと取り調べをはぐらかすような供述によって、逮捕に至らなかったのである。平塚の場合も与えられた取り調べ期間の最終日にようやく「落とす」ことにこぎ着けた。
こうして犯人は逮捕されたが、小原の供述から吉展ちゃんは誘拐直後に殺害されていたことがわかり、寺院の墓地から遺体で発見された。
1966年3月17日、東京地裁が死刑を言い渡すが、弁護側が計画性はなかったとして控訴。
同年9月から控訴審として計3回の公判を行うも、11月に東京高裁でも控訴が棄却される。弁護側が上告したが、最高裁は1967年10月13日に上告を棄却し死刑が確定する。4年後の1971年12月23日に死刑が執行された。享年38歳。
小原の処刑間際の言葉として、「今度、生まれてくるときは真人間に生まれてきますからと、どうか、平塚さんに伝えてください」と言い残した事が知られている。この言葉は、当時、府中署の「3億円事件」の特捜本部にいた平塚八兵衛に、看守によって電話で伝えられた。
死刑確定後、ある僧侶に短歌を勧められ、同人誌『土偶』に福島誠一というペンネームで投稿。1980年に出版された歌集『昭和万葉集(講談社)』に彼の短歌が掲載され、3年後の1983年、『氷歌―吉展ちゃん事件から20年 犯人小原保の獄中歌集(中央出版)』が出版。
この事件の捜査に当たって犯人を取り逃がすという失敗を犯してしまった。直後に狭山事件も発生し、ここでも捜査陣が犯人を取り逃がしてしまうという失態を再び演じたことで警察に対する批判が沸き起こり、狭山事件においてその後の捜査の強引さに結びついたと言われている。
またこの事件を一つのきっかけとして、1964年に刑法の営利誘拐に「身の代金目的略取」という条項が追加され、通常の営利誘拐よりも重い刑罰を課すように改められた。
この事件に題材をとり本田靖春は小説『誘拐』を執筆、第39回文藝春秋読者賞と第9回講談社出版文化賞を受賞し、テレビドラマ化(1979年、『戦後最大の誘拐事件 吉展ちゃん事件』。小原役は泉谷しげる)もされた。
なお刑事ドラマなどでの容疑者取調べの際、カツ丼が定番メニューとなったのはこの事件がきっかけという説があり、小原が幼いころから貧しかったためにカツ丼の様な高級品は食べたことがなく食べさせた途端に自供したという。しかしながら、小原を自供に追い込んだ刑事平塚八兵衛の回想にもそうした話は一切出てこない(小原が拘置所の食事の準備を物音から察知して「食事の時間だから房に戻せ」と言ったという話が出てくる)ことから、他の事件の話を擬したものか都市伝説である可能性が高い。現在は供応行為として自白の任意性が否定されるため、このような事は絶対に行われない。
小原が逮捕された翌朝の1965年7月5日にNHKが放送した「ついに帰らなかった吉展ちゃん」は、ビデオリサーチ・関東地区調べで59.0%の視聴率を記録した。これは2007年現在もワイドニュースの視聴率日本記録である。
1965年3月、この事件を主題とした楽曲『かえしておくれ今すぐに』(作詞:藤田敏雄、作曲:いずみたく)がフランク永井、ザ・ピーナッツ、ボニージャックス、市川染五郎(現・松本幸四郎)の競作で発売された。事件の犯人に訴えかけたこの楽曲は、日本の音楽史上、おそらく空前絶後の「たったひとりの人物に聴かせるために作られ、発売された歌」であり(小原は留置場のラジオで、この歌を聴いていたという)、小原の逮捕・犯行自供後はラジオ等で流れることもなくなった(ザ・ピーナッツのバージョンのみ、CD化されている)。
関連項目
天国と地獄 (映画) - 小原が犯行に当たってヒントにしたといわれる。
鈴木隆雄 - 元科警研副所長。警察で当時、声紋鑑定をしていなかった事を説明している。
金田一春彦
外部リンク
⇒「無限回廊」吉展ちゃん誘拐殺人事件
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