卵膜は外層より脱落膜・絨毛膜・羊膜の三層で形成され、このうち絨毛膜と羊膜の数による区分が膜性である。特に母体内の胎盤の数の違いを表す絨毛膜の違いが重視される。絨毛膜の方が羊膜より完成が早く、ごく早期は羊膜数の判断は困難である。また妊娠週数が進行すると膜性の判断が難しくなるため、膜性診断はおおよそ妊娠12週までに医師の判断を仰ぐ必要がある。
絨毛膜
絨毛膜は、羊膜の上層に位置し胎盤の一部を形成する、卵膜のうちの第二層。(生殖補助医療によらない)自然妊娠による二卵性の場合は、確実に2絨毛膜性双胎となる。一卵性の場合、受精卵の分裂時期により1絨毛膜になるか2絨毛膜になるかの違いが出る。絨毛膜の数は胎盤の数と考えてよいため、膜性が1絨毛膜の胎児は胎盤を共有している。よって、膜性が1絨毛膜と2絨毛膜のどちらかであるかにより、妊婦の生活に多少の違いが生じることになる(妊娠時の注意事項が異なる)。
羊膜
2羊膜の双胎妊娠。一方の胎児はおそらく奥側にいるため、手前側の胎児のみが画像に映っている羊膜は卵膜の最内層であり、個々の胎児を包む膜。1絨毛膜性双胎妊娠の場合、1羊膜と2羊膜のケースが存在する。2羊膜性となる場合が多い。1羊膜の場合、同じ羊膜の中に複数の胎児が存在する。なお2絨毛膜性双胎妊娠の場合は、当然ながら2羊膜である(羊膜は絨毛膜の内層膜であるため)。
双胎妊娠の分類
絨毛膜と羊膜の組合せにより、双胎妊娠の種別が決まる。一卵性の場合、この種別は受精卵の分裂時期により決まると考えられている。
2絨毛膜2羊膜性双胎:受精3日以内に受精卵が分裂した場合
1絨毛膜2羊膜性双胎:受精3日から7日以内に受精卵が分裂した場合
1絨毛膜1羊膜性双胎:受精9日以降に受精卵が分裂した場合
双生児の性別が異なる場合、上記異性一卵性双生児を除き原則として二卵性双生児である。しかし、同性の場合はDNA検査をしない限り、卵性判断をすることは出来ない。ただし1絨毛膜性双胎の自然妊娠であれば、産まれてくる双生児は一卵性双生児である。一方、2絨毛膜性双胎の場合は一卵性と二卵性の両方の可能性がある。
卵性と膜性
双生児の卵性と膜性(絨毛膜・羊膜の組合せ)には以下のような関係がある。1卵性双生児の場合、受精卵の分裂時期により、膜性に違いが生じる。一方、2卵性双生児の膜性は、ほぼ必ず2絨毛膜2羊膜となる(生殖補助医療の種類によっては、1絨毛膜2羊膜の二卵性双生児が誕生する場合もあり、数例が確認されている[33])。
膜性と卵性1絨毛膜2絨毛膜
1羊膜一卵性発生しない
2羊膜一卵性一卵性 or 二卵性
※1絨毛膜2羊膜性双胎胎盤の場合、生殖補助医療の結果として二卵性双生児として誕生する可能性もごく僅かながら存在する。
※※2絨毛膜2羊膜性双胎胎盤の場合、融合双胎胎盤と分離双胎胎盤に分類される。
過去の卵性診断上の混乱
かつては絨毛膜や胎盤の数をもって卵性を識別していたが、これは誤りである。上記のように、2絨毛膜性双胎であっても一卵性の可能性があり、また視認された胎盤数が一つであって二卵性双生児の場合もある(視認された胎盤の数が一つであっても、検査の結果、融合性双胎胎盤であることも多い)。よって現在では、出生時に二卵性双生児と言われていても、その実は一卵性双生児であったり、一卵性と判断されていても二卵性双生児だったりするケースが多数存在している。例えば、タレントのマナカナは二卵生双生児だと本人達も信じていたが、DNA検査の結果として一卵性双生児の確率が極めて高いと判断された[34]。
双胎妊娠の膜性が1絨毛膜型である場合、在胎週数が28週(妊娠後期)を超える頃、管理入院でMFICU(母体胎児集中治療管理室)等に入室する場合が多い。一般に管理入院の期間はノン・ストレス・テスト (NST, Non Stress Test) 等の結果によって変わってくるため、個人差が大きい。数週の入院の後に自宅に戻る場合もあれば、出産時までそのまま入院が継続される場合もある。
37週0日以上の正期産になるまで妊娠を継続することが望まれるが、双胎妊娠では胎児二人分という物理的な大きさが母体の負担になる場合も多い。そのため、低出生体重児になる可能性があっても、妊娠34週を超えれば出産を選択することは双胎妊娠では珍しくない。これは妊娠34週以降であれば胎児の肺がほぼ完成し、NICUを備えた産院であれば十分な対応が可能になるからである。
アメリカ在住の妊婦の妊娠期間を調査した1998年の研究[35]では、単胎妊娠と双胎妊娠の妊娠期間は下記の表に見られるように、顕著な期間の違いが報告されている。参考に品胎(三つ子)妊娠の事例も併記しておく。一般には、双子の場合は37週過ぎ、三つ子の場合は34週過ぎの頃に出産となる場合が多いといわれている。また、1羊膜1絨毛膜の場合や品胎妊娠の場合、分娩時に臍の緒が巻きつく可能性などの危険を避けるため、帝王切開による出産が多くなる。
胎児数と妊娠期間単胎妊娠双胎妊娠品胎妊娠
平均在胎週数39.03週35.77週32.48週
在胎33週未満1.7%13.94%41.25%
在胎37週未満9.43%50.74%91.03%
特有の現象
バニシング・ツイン (Vanishing Twins)
双胎妊娠が判明した後、ごく早期の段階で一方が流産となり、結果として単胎妊娠の形になることをバニシング・ツインという。胚(胎児)が母体に吸収され、あたかも子宮内から消失(バニシング)したように見えるため、この名称がついている。研究者の中には、実はほとんどの妊娠のごく早期は多胎受精なのだが、妊娠が確認される頃に単胎になっているのではないか(バニシング・ツインを経た後に妊娠が判明しているだけなのではないか)、と仮説を立てている者もいる。
子宮内胎児死亡 (miscarried twins)
双子のうち一方の胎児だけが生存している状態。この場合、死亡した胎児を手術で取り出す必要が生じる場合もある。バニシング・ツインはこの一種。
キメラ (chimera)
本来ならば二卵性双生児になるはずだった二つの受精卵が、融合して一つの受精卵となることがある (dual identities) 。多くの場合は受精卵が成長せずに出産まで至らないが、一個体が二種類の遺伝情報を持つキメラとして生まれることもある。またバニシング・ツインで、本来は母体に吸収されてしまう胚が残った胚と融合し、キメラで生まれる場合もある。特に異性双生児として生まれるはずだった胚が融合した場合、雌雄同体 (hermaphrodite) や半陰陽が生まれる可能性も生じる[36]。
血液キメラ
融合性双胎胎盤の場合(つまり二卵性双生児の一部は)、異なる血液細胞を同時に持つ血液キメラとして生まれる可能性がある。血液キメラの場合、たとえばA型とB型の血液が混在して血管を流れている状態になる。二卵性双生児の8%ぐらいの割合[37][38]で血液キメラがいるのではないか、という調査もある。乳牛の異性多胎仔で血液キメラの場合、フリーマーチンとなる。フリーマーチンの牛は生殖能力を持たないため、牝牛であっても乳が出ず乳牛の役目を果たせないことになる[39]。
特有の問題
早産
多胎妊娠は単胎の場合より早産になりやすい。
貧血
多胎妊娠の場合、胎児が必要とする血液量が単胎より多いため、貧血になりやすい。
双胎間輸血症候群
胎盤の共有により発生する症状。1絨毛膜性と融合性双胎胎盤で血管の吻合が見られる場合に生じる。
胎児不均衡発育
発育が不均衡であっても出産は同時であるため、出産時期の設定が難しくなる。
静脈血栓塞栓症
双胎妊娠の場合、妊娠生活に安静を要求されるため、単胎より発症しやすい。