刑事司法手続きにおいて、これまで犯罪被害者・遺族などの関与が軽視ないしは無視されてきたといわれる。通常の場合、犯罪被害者または遺族が刑事裁判の過程ないしは判決に関して取り上げられる場合は、当該手続に対する不満または判決が軽いことに対する不満を述べることが見られる。被害者・関係者の司法手続きへの関与が重視される過程において、被害者の心理面からの要請は、被告人に対し極刑を要求する姿勢などが報道されるにつれて、世論を厳罰化を肯定する方向に誘導する効果をもたらしている。
被害者や被害者遺族に対する捜査情報の開示は未だにほとんどおこなわれておらず、また新設された保証金も適用が極めて限定的で、金額も自賠責保険にも満たない少額だとの批判が多い。このような被害者救済の不十分さは、被告人を厳しく処罰することで、一面でバランスが取られることとなる。
2001年、名古屋保険金連続殺人事件遺族の原田正治は犯人の死刑に反対する嘆願書を法務大臣に提出したが、死刑は執行された。
2006年、両親を殺害した15才の少年に14年の実刑判決(遺族は少年自身)。1980年、20才の成人が両親を金属バットで殺害した事件(神奈川金属バット両親殺害事件)では懲役13年の実刑判決だったので、同様の犯罪にもかかわらず、当時の成人よりも重い判決が言い渡されたことになる。
2008年、1999年に光市で起きた母子殺人事件の犯人である1999年当時18歳の元少年に対する広島高裁(差戻控訴審)での死刑判決。
刑事裁判はあくまでも法に則り司法が量刑を与えるものであり、遺族・被害者のための報復という考えは近代民主主義国家の刑事裁判としては受容できないという説も根強い。
厳罰化の背景として指摘される国民の治安に対する不安感の増大には犯罪報道の過熱化も要因とされている[2]。
1995年のオウム真理教事件、1997年の神戸連続児童殺傷事件を発端にしてワイドショー番組でも盛んに事件報道が行われるようになった。いわゆるワイドショーなどのテレビ番組において視聴率の取りやすい報道はあからさまに恐怖を煽ったり、犯人の残虐性を強調したり、被害者の悲しみや怒りを情緒的に伝える報道であり、これまでの報道番組の事実解明重視型の報道とは大きく異なっており、実際の治安状況とは乖離した社会不安を煽っているとの指摘がある(モラル・パニック、体感治安の悪化)。
昭和の安定期に比べ刑法犯の認知件数が1.4倍にまで増加していることも事実であるが、一方で殺人件数などは低下傾向にあり、そのことを報道するメディアはほとんどない。
山口県光市で起きた母子殺人事件のテレビ報道で放送倫理・番組向上機構(BPO)から「報道が一方的だ」「遺族(被害者)側に偏って、弁護側を悪とみなしている」として勧告が出されている[3]。
「この手で殺したい」「極刑を望む」といった遺族の声を繰り返しながら肯定的にアナウンスする弊害は大きく、死刑の制度の問題として論じるべきことが感情の領域に持っていかれて「こんなひどいことをした奴は死刑で当然」という声に覆われてしまうとの批判がある[4]。
共産主義勢力の急速な縮小や暴力団の摘発も現状が限界であり、組織縮小の懸念のあった警察や、冤罪事件や裏金問題などの不祥事で批判の集中していた検察が、「世直し」的なイメージの浸透、権限や威信回復をはかるために、存在意義を強調したという説もある[5][6]。
厳罰化の事例
アメリカの三振法
危険運転致死傷罪
少年法の刑事罰対象年齢の14歳以上への引き下げ
刑法2004(平成16)年12月、刑法・刑事訴訟法の改正案が成立
重大事件に対する有期懲役刑の上限を現行の20年から30年に延長
集団性的暴行罪などの新設
殺人などの死刑にあたる罪の公訴時効期間を15年から25年に延長
殺人罪の下限を3年から5年に引き上げ
割れ窓理論?軽犯罪でも厳しく取り締まり重大犯罪の発生を防ぐ。実際に新宿・歌舞伎町や札幌・ススキノで取り入れられている。
共謀罪の制定
市民有志による繁華街などの見回りの増加またはそのような市民団体・NPO法人の増加、または地方自治体が旗振り役となって自警団的団体の設立の醸成や要請
※厳罰化の事例ではないが、最近の少年犯罪の残虐さや狡猾さを訴え、加害者が20歳未満の少年であっても実名報道を行うべきという運動もみられる
厳罰化は、社会における警察権力の増大をもたらすものであって、人権の制約を強化するものであるとの批判がなされることがある。
日本では、危険運転致死傷罪が制定され、さらに飲酒運転の処罰の厳罰化に伴い、飲酒運転に起因する死亡事故は激減し、2005年(平成17年)には10年前の半数にまで減少した。
一方で、交通事故を起こした運転者が危険運転致死傷罪による厳罰を恐れたためにひき逃げや「飲み直し」による飲酒運転の証拠隠滅が増加したという指摘[7]や、銃刀法の改正による違法拳銃所持の厳罰化によって拳銃の隠し方が以前より巧妙になり、拳銃の摘発が難しくなっているとの指摘[8]もある。
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メリット
罪をより深く自覚させる(特に交通事故犯罪の厳罰化にとっては効果的であるとされる)