勾留
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勾留延長

裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、10日間を限度に勾留期間を延長することができ(刑事訴訟法208条2項前段)、これを勾留延長という。

ここにいう「やむを得ない事由」とは、事件の複雑困難、証拠収集の遅延又は困難等により、勾留期間を延長して更に捜査をするのでなければ起訴又は不起訴の決定をすることが困難な場合をいう(最高裁昭和37年7月3日判決民集16巻7号1408頁)。また、同判決は、牽連(けんれん)する他の事件との関係も相当な限度で考慮に入れることができるとしているが、ここにいう「牽連する他の事件」とは、勾留事実と同時期に敢行された同一・類似の手口の余罪など、勾留事実の犯情を判断するために必要な犯罪事実をいうと考えられている。

延長期間は、通じて10日間を超えることができないが(同項後段)、これを超えない限り、何度でも延長できる。このため、請求より短い期間しか延長が認められなくても、検察官は、準抗告により不服を申し立てることができないとされている(前橋地裁昭和59年12月15日決定刑裁月報16巻11=12合併号756頁)。


接見交通

弁護人等との接見交通
勾留されている被疑者は、弁護人又は弁護人選任権者(刑事訴訟法30条)の依頼により弁護人となろうとする者(以下、本稿において「弁護人等」という。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる(同法39条1項)。検察官、検察事務官又は司法警察職員は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、この接見又は授受に関し、日時、場所及び時間を指定することができる(同条3項本文、接見指定権)。しかし、この接見指定権の行使のあり方については、「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなもの」(同項ただし書)となっている場合が多いとの批判が絶えない。

弁護人等以外の者との接見交通
勾留されている被疑者は、弁護人等以外の者とも、法令の範囲内(具体的には、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律115及び116条、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則67条?75条)で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる(刑事訴訟法207条、80条)。しかし、裁判官は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被疑者と弁護人等以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、若しくはこれを差し押さえる(差押を参照)ことができる(接見等禁止)。ただし、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押さえることはできない(同法207条、81条)。実際の接見等禁止においては、弁護人等以外の者との接見及び物の授受を禁じる例が多いが、その場合でも、糧食、現金、衣類、寝具、公刊物などの授受を禁じないのが通例のようである。


被告人の勾留


要件

被告人の勾留の要件(犯罪の嫌疑、勾留理由、勾留の必要性)は、前記被疑者の勾留と同様である(刑事訴訟法60条)。


手続


勾留中の被疑者が起訴された場合

勾留中の被疑者について、これと同一の事実によって起訴(公訴提起)がされたときは、起訴の日から、何らの手続を経ることなく、当然に被告人の勾留(2か月)が開始する(刑事訴訟法208条1項、60条2項)。

したがって、被疑者勾留から被告人勾留に移行する際、裁判官が改めて勾留理由や勾留の必要性について審査・判断するわけではなく、勾留質問も行われない。


勾留されていない被疑者が起訴された場合

受訴裁判所(起訴を受けた裁判所)は、職権で、被告人の勾留をすることができる(刑事訴訟法60条1項)。検察官に請求権はない。ただし、第1回公判期日前は、受訴裁判所が記録を見て犯罪の嫌疑等について審査・判断することは予断排除の原則に反するおそれがあるので、裁判官が行う(同法280条1項)。

もっとも、在宅の被疑者が起訴された場合は、起訴後も在宅のままで審理が行われ、裁判官ないし裁判所が職権で勾留を行うことはしないのが通常である。

しかし、主に次のような場合には、検察官が、起訴の際、起訴状に「求令状」との記載をし、それを契機に、裁判官が職権で勾留するか否かを判断するのが実務上の取扱いである(いわゆる「求令状起訴」、「求令起訴」)。
逮捕中求令状
逮捕された被疑者が、まだ勾留されていない段階で起訴された場合は、検察官は、起訴状に「逮捕中求令状」との記載をする。この場合、裁判官は、勾留質問を行い、職権で勾留するか判断し、勾留しないときは直ちに釈放を命じる(同法280条2項)。
勾留中求令状(令状差替え)
A事実で勾留中の被疑者を、これとは別のB事実で起訴し、B事実について被告人勾留を求める場合、検察官は、起訴状に「勾留中求令状」の記載をする。なぜなら、勾留は公訴事実(被疑事実)ごとに行われるので、A事実とB事実に同一性がない場合、A事実についての勾留はB事実についての勾留として引き継がれず、改めてB事実について勾留するか否かを判断する必要があるからである。裁判官は、勾留質問でB事実について被告人の陳述を聴いた後でなければ勾留することができない(同法61条)。


勾留期間

被疑者勾留から被告人勾留に当然に移行する場合は、勾留期間は起訴の日から2か月である(刑事訴訟法60条2項)。起訴後に裁判官ないし裁判所が職権で勾留した場合は、勾留期間は勾留の日から2か月である。

裁判所(第1回公判期日前は裁判官。刑事訴訟法280条1項)は、特に継続の必要があるときは、勾留期間を1か月ごとに更新することができる(勾留更新)。更新の回数は、次の場合には制限がないが、それ以外の場合は1回に限られる(刑事訴訟法60条2項ただし書)。

被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したものであるとき(89条1号)

被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯したものであるとき(89条3号)

被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき(89条4号)

被告人の氏名又は住居が分からないとき(89条6号)


保釈

保釈を参照。なお、日本においては、保釈は被告人についてのみ認められ、逮捕中や勾留中の被疑者については認められていない。


救済


勾留理由開示

勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる(憲法34条後段、刑事訴訟法82条)。勾留されている被疑者は、勾留状を発付した裁判所の裁判官に、同様の請求をすることができる(刑事訴訟法207条による82条の準用)。

請求は被告人・被疑者自身が行うことができるし(刑事訴訟法82条1項)、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、請求することができる(刑事訴訟法82条2項)。勾留の理由の開示の請求は、請求をする者ごとに、各別の書面で、これをしなければならない(刑事訴訟規則81条1項)。被告人以外の者が請求をする場合には、その書面に「弁護人」「配偶者」などと記載する必要がある(刑事訴訟法81条2項参照)。なお、同一の勾留について、勾留理由開示の請求が2つ以上ある場合には、勾留の理由の開示は、最初の請求についてこれを行い、その他の請求は、勾留の理由の開示が終った後、決定でこれを却下しなければならないものとされている(刑事訴訟法86条)。そこで、実務上は、弁護人が2名以上いる場合でも、形式上、請求はそのうち1名のみが行うことが多い。

勾留の理由の開示の請求があったときは、裁判長・裁判官は、開示期日を定めなければならない(刑事訴訟規則82条1項)。勾留の理由の開示をすべき期日とその請求があつた日との間には、やむをえない事情がある場合を除き、5日以上を置くことはできない(刑事訴訟規則84条)。たとえば、弁護人が月曜日に請求書を出した場合、期日は、当日(月曜日)から土曜日までの間で定めなければならないことになる。したがって、実務上、弁護人が勾留理由開示請求書を提出した場合、ただちに裁判所との間で日程調整を行うのが通常である。

勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない(憲法34条後段、刑事訴訟法83条1項)。法廷は、裁判官及び裁判所書記官が列席してこれを開く(刑事訴訟法83条2項)。被告人・被疑者及びその弁護人が出頭しないときは、原則として開廷することはできない(憲法34条後段、刑事訴訟法83条3項本文)。なお、検察官の出席は必要とされていないため、実務上は検察官が出席することはほとんどないが、一部の重大事件などでは検察官が出席することもある。

法廷においては、裁判長・裁判官は、勾留の理由を告げなければならないものとされている(刑事訴訟法84条1項)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki