責任の意味についても争いがあるが、「本人を道義的に非難できること」と解するのが通説である。
構成要件該当性があれば、原則として「責任」はあると推定されるので、ここでは、責任を問えない特殊事情(責任阻却事由)がないかが吟味される。
例えば3歳の子供が他人の物を壊しても、器物損壊罪は成立しない。14歳未満の者には刑事責任能力がないとされる(刑法41条)ので、責任阻却事由が成立し「責任」は成立せず、無罪という結論になる。
責任の有無を判断する要素は以下のとおりである。
事実的要素として、
責任能力の有無・程度
責任故意の有無・程度
構成要件的故意 があり且つ
違法性に関する事実の表象 があり且つ
違法性の意識の可能性 があること
責任過失の有無・程度
責任故意の成立要件が欠如すること 且つ
主観的注意義務違反 があること
規範的要素として
適法行為の期待可能性の有無・程度
どれか1つでも欠ければ「責任」は成立せず、無罪という結論になる(責任故意が成立しない場合には故意犯は成立せず、責任過失が成立しない場合には過失犯は成立しない)。
実行に着手したが、これを遂げなかった場合を未遂といい、ある種の犯罪では未遂行為も未遂罪として犯罪として処罰される。(刑法43条)
未遂罪のうち、自己の意思により犯罪を中止した場合を中止犯という。
ある種の重大な犯罪では、準備行為も予備罪として犯罪が成立する。
これらはいずれも構成要件段階での問題であり、別途、違法性・責任の検討を要する。
以上は、1人で犯罪を行った「単独正犯」についての説明であるが、複数の者が犯罪に関与した場合(広義の共犯)として、共同正犯や教唆犯や従犯がある。
共同正犯とは、二人以上共同して、犯罪を実行すること(刑法第60条) であり、共同正犯では、犯罪の一部を実行したにすぎない者も、犯罪全部について正犯としての責任を問われる(一部実行全部責任)。
例えば、数人が共同して1人の被害者を殺したり、数人が共同して強盗を行う場合である。
共同正犯には、「実行共同正犯」(狭義の共同正犯)の他に、判例・実務上「共謀共同正犯」という類型が認められている。
この領域には様々な議論があるが、ある有力な立場によれば、
実行共同正犯(狭義の共同正犯)の要件は、
各人の構成要件的故意または構成要件的過失と
各人の共同実行の意思と
各人の実行行為(犯罪実現の現実的危険性ある行為)であり、
共謀共同正犯の要件は、
各人の構成要件的故意または構成要件的過失と
各人の共同実行の意思と
謀議と
各人の構成要件実現に向けての共同行為と
一部の者の実行行為(犯罪実現の現実的危険性ある行為)である。
例えば、数人で殺人の謀議を行った場合、一部の者がナイフで刺し、他の者は見張りをしていたにすぎない場合でも、共謀共同正犯の要件を満たすなら全員について殺人罪の共謀共同正犯が成立する。
60条の文言を限定的に解すれば共謀共同正犯の概念は認めがたいが、60条の文言を緩やかに解すれば60条により共同正犯の一種として共謀共同正犯を認めることができる。
実質的論拠としては、例えば、共同正犯で一部実行全部責任が認められるのは、相互利用補充関係をもって犯罪が実現される点で法益侵害の危険が増大したからであり、相互利用補充関係をもって犯罪が実現されるなら共同正犯と認めうるということができる。
狭義の共犯として、教唆犯と従犯がある。 教唆犯とは、ある者を唆せて、犯罪を決意させ実行させる犯罪である。 教唆の故意と教唆行為と被教唆者の実行行為と被教唆者の構成要件該当性と違法性を要件とするのが通説である(共犯従属性説?制限従属形式)。
従犯とは、正犯者の犯罪実行を助け容易にさせる犯罪である。 幇助の故意と幇助行為と被幇助者の実行行為と被幇助者の構成要件該当性と違法性を要件とするのが通説である(共犯従属性説?制限従属形式)。
ある者が共同正犯や教唆犯や従犯の要件を満たしていても、その者についてはさらに違法性・責任の検討を要する。その意味でこれらはいずれも、構成要件該当性レベルでの議論であり、構成要件の修正形式として位置づけられる。
本来的一罪とは、1つの構成要件によって1回的に評価される事実をいう。数個の構成要件該当性があるかにみえる場合、構成要件該当性判断の最後に、本来的一罪か否かという罪数処理が考慮される。
例えば、着衣の相手の胸をナイフで刺す行為には、衣服を損傷させる意思もあったといえるから器物損壊罪の構成要件該当性があるかにもみえるが、衣服の損壊は殺人罪に吸収され(吸収関係)殺人罪の構成要件該当性しか認められない。
詳細は、本来的一罪の項を参照のこと。
ただし、本来的一罪の議論は瑣末的事項ととらえる傾向があり、特殊な事例でない限り議論せずに済ますのが一般的である(上記の例では一般に、器物損壊罪には言及しない)。
犯罪が成立する場合は、法定刑から、刑法第72条に従って加重・減軽されるが、1人の者について成立する犯罪が複数あるときは、併合罪であるか、科刑上一罪であるかを判断しなければならない。
科刑上一罪刑法第54条には、観念的競合と牽連犯がある。
一個の行為で数個の罪名に当たる場合は、観念的競合とされる(例:ピストルを1発撃ったところ、2人が死亡したとき2個の殺人罪が成立する)。
数罪について一方が他方の手段・結果の関係にある場合は牽連犯と呼ばれる(例:住居侵入罪と窃盗罪)。
これらは科刑上一罪(54条)と呼ばれ、数個の犯罪のうち、法定刑が最も重い罪の刑が基準となる。
併合罪とは、確定裁判を経ていない2個以上の罪をいう(45条)。
例えば、ナイフで甲を刺した直後にナイフで乙を刺し、甲も乙も死んだ場合、甲に対する殺人行為と乙に対する殺人行為があり2つの行為であるから観念的競合ではなく、2つの行為は手段・結果の関係にもないため併合罪となる。併合罪では、懲役や禁錮にあたる犯罪が数個あったときは、刑の長期は、47条により最も罪の長期の1.5倍となる(併合罪加重)。