分子
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分子の形態

大抵の分子はおおよそ数百の分子量を持つが、サイズにすると10-9m(ナノメートル)、10-20gに相当する。この大きさでは可視光の波長以下の為、顕微鏡など光学的な像として個々の分子を観察することはできない。したがって通常目にする物質は結晶やクラスターなど集団としての分子を目にしていることになる。言い換えると分子の姿は測定器を介して観測するしかなく、分子の実像は目で見た物質の形態による想定とは必ずしも一致しない。

分子の構成単位は物質の種類により一定であるが、集合体としての分子の形態は同一物質であっても物質の物理的状態(三態)の変化によってもその形態は異なる。具体的には、共有結合性物質と、イオン性物質や物性としての金属では集団としての分子の意味合いは多少異なる。

共有結合性物質においては、気体液体固体のいずれの状態においても共有結合により組織付けられた分子が単位となっている。分子のポテンシャル表面を介して内側では斥力が外側では引力が働く為、分子の単位で熱力学的な粒子として振舞っている。

一方、イオン性物質や金属は結晶やクラスターを単位としてみれぱ、電荷や表面ポテンシャルの面では巨大分子と考えられるが、(巨大)分子を構成する原子数が一定ではない[3]という点で、共有結合性物質とでは集合体としての分子の意味合いが異なる。

例えば共有結合性単体であっても分子の形態はさまざまである。たとえば炭素グラファイトダイアモンドカーボンナノチューブは原子数不定の巨大分子を形成する一方、フラーレン分子の原子数は一定である。窒素フッ素は二原子分子で安定であるが、酸素は二原子あるいは三原子で安定な分子を形成する。硫黄は八原子分子が安定であり巨大分子(ゴム状硫黄)も形成する。このように分子の構成は成分の原子の性質によりさまざまに変化する。

炭素分子

二酸素分子(O2)

オゾン(O3)

また、第18族元素以外では最外殻電子に欠員を持つ単原子分子は安定に存在しない為に複数個の原子が共有結合した多原子分子で存在する。しかし宇宙空間など高度に希釈された条件下では不安定であっても存在しうる。また、気体状態の酢酸分子の二量体を形成するなど物理化学的粒子と分子としての単位と合致しない状態もとり得る。

分子の単位質量は分子量であるが、分子量の大小により低分子あるいは高分子と区分されることがある。両者の境界はあいまいであるが、およそ分子量で103から104を境いにしてそれ以下の分子を低分子、それ以上の分子を高分子と呼ぶ。高分子の代表としてはゴムプラスチックたんぱく質DNAなどがある。


分子構造パリトキシン(C129H223N3O54)の構造式パリトキシンの分子モデル(CPKモデル)

原子間に働く静電相互作用(クーロン力)により、原子は分子として集合している。力の作用がその力の種類により方向性や距離による力の強度変化が異なる為に分子はその構成する原子の種類や配置により秩序だった構造を取る。分子の内部あるいは分子間で相互の原子に作用する力は化学結合と呼ばれる。(その分類や特徴は記事化学結合に詳しい)

言い換えるならば、同じクーロン力を元にしていても化学結合の種類と作用距離に応じて分子は構造的な特徴を現わすとともに原子、分子、結晶といったような構造的な階層を形成する。

すなわち分子の内部構造が分子間に働く相互作用に変化を及ぼすために、物質の性質はそれを構成する原子の構成比率だけでは決定づけることはできず、分子構造が物性の発現に強くかかわっている。例えば、無機化合物の一種に見られる高温超伝導は特定の精密な分子構造が要因となり発現することが知られている。

無機化合物も精密で複雑な分子構造を持つが、有機化合物においては更に多様な分子構造とそれに応じた機能を持つ。今日では有機化合物の分子構造とその構造に特有な機能により生命現象が成り立っていることが明らかとなり、生命の本質と化学構造について分子生物学の分野で研究が進められている。

分子の表示方法である化学式も分子構造をどの程度まで意識するかで使い分けられる。最も単純に原子の組成のみを示した組成式は化学構造の違い区別する必要のない場合に利用される。構造が単純で異性体など構造的な紛らわしさがない場合はトポロジカルな、つまり実際の配置を抽象化し原子の連結関係を示した示性式で表現される。更に複雑な構造においては構造式が利用される。

構造式は分子構造を抽象的に表現するが、分子動力学など原子の配置の向きや距離を厳密に識別する場合においては分子モデルが分子構造の表現方法として採用される。


脚注^ 『世界大百科事典』(参考文献)
^ カニッツァーロの再評価を発表した1860年のカールスルーエ国際会議以前は原子あるいは分子のモデルやその原子量、分子量の定義は研究者によってさまざまに提唱され、統一されていなかった。記事アボガドロの法則に詳しい。
^ もちろん原子の構成比は物質により一定である。


関連項目

原子

化学結合

共有結合

高分子

金属元素

金属

化学

物理学

分子動力学法


出典

' ⇒Molecule', "IUPAC GOLDBOOK"; P.Muller 'Glossary of terms used in physical organic chemistry.'(IUPAC recommendation 1994), Pure & Appl, Chem., Vol.66, pp.1077-1184(1994).

井口洋夫「分子」『世界大百科事典』CD-ROM版、平凡社、1998年。

長倉三郎 ほか(編)「分子」『岩波理化学辞典』第5版 CD-ROM版、岩波書店、1998年。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Smilegreen