「医師」は国家資格であり、「医師国家試験」に合格して医籍登録を完了したものに厚生労働大臣より免許が与えられる。1999年に改正された医師法第16条の2に「診療に従事しようとする医師は、2年以上、医学を履修する課程を置く大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない。」と明記され、2004年度からは、臨床医として勤務するためには2年間以上の臨床研修を行うことが努力義務とされた。臨床研修を終えていない医師は、医業を続けることはできるが、病院・診療所の長となることができない。この間の「医師」を一般に研修医とも呼ぶこともある(資格名ではなく通称名)。ただし、基礎研究医や産業医、社会医学者、法医学者などはこの義務はない。しかし、これらの分野でも認定医取得条件や求人に2年間の臨床研修を義務づけている場合もある。
一般的には、病院や診療所といった医療機関で医業(医療行為)を行う医師(臨床医)が多いが、医療機関以外では保健所(地域保健法施行令第4条第1項では、保健所の所長とは保健所の医師と規定されている)、基礎研究医、産業医、社会医学者、法医学など直接医療行為を行わない医師もいる。
2007年2月現在、医師免許に更新制度はなく、通常は生涯にわたって有効である。医療過誤、犯罪等による資格停止・剥奪は厚生労働省医道審議会により決定される。
近年、医療事故・医療過誤として報告される事例が増加の一途をたどっているため、医師免許の更新制度導入が主張されている。2005年3月、政府の規制改革・民間開放推進会議は、医師免許更新制の導入について2005年度中に検討し結論を出すとの答申を予定した。政府判断により実際の答申からは外されることになったが、規制改革会議側は引き続き議論する考えを示した。
日本の医師免許は診療科ごとに交付されるものではなく、医師は法律上はすべての診療科における診療行為を行うことができる、とされている。
近年では医療の進歩と共に技術的に高い次元での専門化・細分化傾向が強まり、日本においても各診療分野の学会が「学会認定医」、「学会専門医」などの学会認定専門医制度を導入しており、一般診療者への技術度の目安として広まりつつある。しかし、これらは法的には「肩書き」に過ぎず、所持していなくても診療科を標榜することは可能。(但し、麻酔科を標榜するには厚生労働省の許可を得なければならない。(医療法第70条2項、及び医療法施行規則第42条の4に基づく))
また、「医師」には「一人医療法人」という制度があり、「医師」一人でも医療法人が設立できる。
日本で医師の資格を規定する根拠となっている法は「医師法」であり、医師法第17条に「医師でなければ、医業をなしてはならない。」とある。
「医師」という名称が示すように、古くは医療行為は医師のみで行われてきたものであり、医療におけるあらゆる分野の高度な専門知識や技術を、すべて医師が身につけて、提供できることが理想であるのはいうまでもない。ただし、現在、医療は専門化・細分化しており、医師が一人で患者に質の高い医療を提供しようとするには限界があり、医師は、医療チームのリーダーとして、他の医療従事者と協力して医療を行うことが求められる。ただ、現在でも、離島や過疎地、地域医療の場では医師一人だけで様々な医療行為を完結させる必要があることも多く、法律上、「医師」の資格により医業に属する全ての医療行為を行うことが認められている。よって「医師」は必要であれば調剤、看護、保健指導、X線写真やCT、MRIなどの撮影、臨床検査、リハビリテーション、透析、鍼灸などの医療行為も、自らの手で直接行うことが可能である。「医師」が「薬をだせない」「看護ができない」「レントゲンが撮れない」「臨床検査ができない」「リハビリテーションを行うことができない」「透析ができない」などということはなく、実際これらの業務を医師が行っている施設も少なくない。
歯科医師、薬剤師、はり師・きゅう師との関連では、具体例としては以下のようになる。
「口腔外科」に属する医療行為は「歯科医業」であると同時に「医業」でもある部分については医師、歯科医師双方が行うことができる。(「歯科医業」は大きく「歯科」と「口腔外科」に分けられ、「歯科」に属する医療行為は「歯科医師」にのみ認められている。したがって、医師が「歯科医院」を開設することはできない。また、医師が口腔外科の専門医となっても、口腔外科を標榜することは認められてはいない。)
医師は、医師法第22条および薬剤師法第19条の定める要件を満たす場合には、処方箋を交付せずに、直接薬を投与するか、もしくは、自ら発行した処方箋に基づいた調剤を行うことができる。(他の「医師」や「歯科医師」が発行した「処方箋」に基づく調剤は「薬剤師」にのみ認められており、医師が行うことはできない。また、医師が「薬局」を開設することはできない。)
漢方の処方や鍼灸の施術などの東洋医学的な医療行為はすべて、医師自らが行うことができる。(ただし、医師が「鍼灸治療院」を開設することはできない。)
薬剤師、看護師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、臨床工学技士、救急救命士などのコ・メディカルの資格者は、それぞれの関係する法により許可されている範囲で、限定的な医療行為を行うことが認められている。
IT関連技術の進歩に伴いパソコンが急速に普及し、各医療機関ではレセコン(レセプトコンピュータ)だけでなく電子カルテも次第に普及しつつある。しかし、患者の重大な個人情報を取り扱うレセプト及びカルテであるだけに、個人情報漏洩事件が頻発する現在、周辺整備をなおざりにしたまま拙速にITを本格導入すれば、医療現場は混乱するのみならず、日本の医療が崩壊するとの指摘さえある。
本来、診療を行う為に掛かるコストを支払う診療報酬にIT関連機器(レセコンや電子カルテ等)導入の為の費用は全く考慮されず、その全てを医療機関側が負担してきた。2005年、国は医療制度改革大綱にレセプトのオンライン化の義務化を盛り込んだが、2006年度の診療報酬改定でも初診料の電子化加算(3点、30円に相当)を新設したのみで、約650億円と試算される財源については全く触れていない。誰でもインターネットを通じて様々な医学情報を容易に得られるようになり、ことに先端医療や新興感染症など最新の情報については、場合によっては医師と患者の知識の逆転現象さえ珍しくなくなった。
従来、医師会等を通じてのみ情報を得ていた全国各地の医師同士も、各種掲示板、メーリングリスト(ML)を通じて横断的に双方向性に情報・意見交換できるようになった。学会等ではなかなか得られない臨床現場で役立つ医学・医療の経験・知識が、全国的に共有される意義は大きい。
1999年冬のインフルエンザ流行時、medpract-ML(実地医療研究ML)という医療系MLを通じてアマンタジンの有効性が初めて全国的に注目され、その後、迅速診断法や抗インフルエンザ薬などの情報も、医学会や医師会に先んじて様々な医療系MLに流れ、全国各地の医師同士の実体験が共有された。