なお、旧借地法では、借地上に建てられている建築物について石造り、土造り、レンガ造りなどの堅固建物と、木造などそれ以外の材質の非堅固建物という区別を設け、前者の所有を目的とする借地権の契約期間が30年未満の場合には一律60年とし、後者の契約期間が20年未満の場合には一律30年として規定していた(旧借地法2条)。しかし、この区別は建築技術発展に伴って合理性を失い、借地借家法には受け継がれなかった。
借家契約の存続期間は、当事者の合意によって定まる。 ⇒民法第604条(賃貸借契約の期間を20年以下と規定している)の適用が排除されているため、期間の上限はない( ⇒29条2項)。
期間の定めをしなかった場合は、各当事者はいつでも解約申入れをすることができる( ⇒民法617条1項)。また、借家契約の契約期間が1年未満である場合も、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる(29条1項)結果、同様にいつでも解約申入れをすることができる(解約申入れについては後述)。
民法における原則では、契約期間が定められている場合ならば、その期間が過ぎれば契約は終了し、さらに契約を更新するかどうかは当事者次第である。また、契約期間が定められていない賃貸借契約は借主・貸主どちらからでも解約を申し入れることができ、その申入れから所定の期間を過ぎると契約は終了する(民法617条1項)。しかしこれでは賃借人が突然家や土地を追い出されて生活の拠点を失うおそれがあるため、借地借家法には更新を容易にし、解約を制限する制度が整備されている。
すなわち、借地借家法は、期間の定めのある借地・借家契約については、直接的又は間接的に契約更新を強制している。このように、当事者(特に賃貸人)の意思に関わらず法律の規定によって契約が更新されることを法定更新という。また、期間の定めのない借家契約についても、賃貸人からの解約申入れに正当事由を要求するなどして一方的に契約を終了させないようにしている。
借地権の存続期間が満了する場合に、建物が存在するときは、借地人は、契約の更新を請求することができる。これに対し、地主(賃貸人)が遅滞なく異議を述べなければ、契約は法定更新される( ⇒5条1項)。貸主がこの異議を述べるには、正当事由が必要である( ⇒6条)。
また、借地権の存続期間が満了した後、借地人(又は転借人)が土地の使用を継続している場合も、建物が存在するときは、地主が遅滞なく異議を述べなければ、契約は法定更新される(5条2項、3項)。この異議にも正当事由が必要である(6条)。
正当事由の判断は、借地人と貸主の双方がその土地の使用を必要とする事情のほか、立退料の支払も考慮することができる(6条)。
期間の定めのある借家契約については、何もしなければ自動的に契約が更新されるという制度が採られている。すなわち、当事者が契約期間満了で契約を終了させようとする場合は、契約期間が満了する1年前から6か月前までに、相手方に対して契約を更新しないこと(更新拒絶)を通知しなければならず、この通知がない場合には、これまでと同様の条件(ただし、新たな借家契約は期間の定めのないものとされる)で契約が法定更新される( ⇒26条1項)。賃貸人がこの更新拒絶の通知を行うためには、正当事由が必要となる( ⇒28条)。
また、正当事由がある更新拒絶の通知を行った場合であっても、借家人(又は転借人)が期間満了後もその建物に住み続けているときは、賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、契約は法定更新される(26条2項、3項)。この異議には、正当事由は要求されていない。
正当事由の判断は、借地契約と同様であるが「建物の現況」が考慮要素として挙げられている。
期間の定めのない借家契約の場合には、民法の原則により、いつでもどちらからでも解約を申し入れることができる( ⇒民法617条1項)。また、期間の定めがあっても、契約期間が1年未満である場合には期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる結果(29条1項)、同様に解約を申し入れることができる。
ただし、建物賃貸人からの解約申入れについては、第1に、解約申入れから契約終了までの猶予期間(解約申入れ期間)が、民法617条1項2号所定の3か月から、2倍の6か月に延長されている( ⇒28条)。なお、借家人からの解約申入れについては明文の規定がないが、民法617条を任意規定と解すると、特約で借家人からの解約申入れ期間を4か月等に延長することが可能になる。もっとも、仮に任意規定だとしても、消費者契約法により、3か月よりも長い解約申入れ期間は無効となる可能性がある。
第2に、正当事由が必要とされる(28条)。
賃料額の改定に際しては賃貸人と賃借人の地位の違いとそれによる交渉力の差が大きく現れる局面である。よって借地借家法は地代や家賃が経済事情の変化によって現状に見合わない額となった場合(高すぎるという場合も低すぎるという場合もある)には、当事者の双方が借賃増減額請求権を取得する。借地では ⇒11条、借家では ⇒32条に規定がある。これを行使するとその場で直ちに額が変更される。つまり借賃増減額請求権は形成権である。もちろん具体的な額は裁判などによって決定されることになるが、請求権を行使した時点から賃料が変更されたものとして扱われる。こうすることで紛争解決を引き延ばし、引き延ばしている期間の賃料を現状の額で据え置こうとする戦術は無意味化する。
例えば20万円の家賃が諸般の事情を考慮した場合に異常な高値であったとする。そこで借家人が1月に「賃料を10万円にせよ」という内容の借賃増減額請求権を行使した。家主はその額について難色を示したため裁判となり、結果7月に「賃料を15万円とする」という決定が出たとする。すると賃料は1月の時点から15万円であったとして扱われ、賃借人は1月以降の賃料を15万円で支払うことになる(7月から賃料が15万円になるわけではない)。
なおこうした賃料額の決定を巡る裁判を起こすには、まず調停を行わなければならない。これを調停前置主義といい、民事調停法24条の2及び24条の3に規定されている。
借地契約が終了した場合、借地契約であれば借地上の借地人が立てた建物が残存する場合がある。この場合、その建物を賃貸人に買い取るよう請求できるのが建物買取請求権である( ⇒13条)。建物買取請求権は形成権である。つまり、これを行使すれば賃貸人の意思に関わらず建物の売買契約が成立してしまう。この規定の趣旨は借地人が投下した資本について回収する機会を与え、建物を取り壊すことによる国民経済的損失を防止し、請求権が行使されれば買取を当然に認めることで契約の更新を間接的に強制することにあると説明される。しかしこの制度は現代社会の実状に適合しないという批判もある。つまり、借地人の保護は契約存続によって図るべきであって買取による資本投下まで保護する必要はないとか、戦後復興を成し遂げた日本において建物の取り壊しを規制するほどの住宅難は存在しないとか、建物それ自体の価格は安いため契約更新を強制する効果がないという指摘である。
賃貸借契約が賃借人の債務不履行によって解除された場合には、賃借人は買取請求権を行使できないとするのが裁判例の立場である。ただし学説には異論も多く、買取を認めるのが多数説である。
また、第三者の建物買取請求権というものもある。これは賃借権の譲渡を地主が承認しない場合に、その借地上の建物などを取得して借地権を譲り受けようとする者はその地主に対して建物等の買取を請求できるというものである( ⇒14条)。