なお、借地権の付着している土地の所有権を底地と呼ぶこともあるが、これは本法、民法上の正式な用語ではない。
本法は、借地人の生活・営業を保護するものであるから、ここにいう「建物」には、橋梁、広告塔、電柱、ガソリンスタンド等は含まれない。
ただし、一時使用目的の借地権には、存続期間、契約更新等に関する本法の規定は適用されない( ⇒25条)。 ここでいう一時使用とは、期間の長短ではなく、賃貸借の目的や動機などの事情からその契約を短期間で終えることが客観的に判断できる場合をいう。サーカスの興行のために土地を借りるような場合は一時使用目的に当たるとされる。
借地借家法は、上記借地のほか、建物の賃貸借契約を適用対象としている( ⇒1条。以下本稿で建物の賃貸借契約を「借家契約」といい、その賃借人を「借家人」という)。
ここにいう「建物」は、一軒家を借りている場合はもちろん、建物の一部の間借りであっても、他の部分と区画されており、構造や規模から独立的排他的支配が可能であればこれに該当する(最判昭和42年6月2日民集21巻6号1433頁)。
一時使用目的の借家契約には、本法の規定は適用されない( ⇒40条)。イベント開催中に出店を出すためだけに店舗を借りるという場合などがこの一時使用に当たる。
借地借家法では、借地人・借家人が、借地権・借家権を第三者に対抗するための対抗要件について、民法の特則を置いている。
そもそも、賃借権は貸主と借主との契約により生じる債権にすぎないため、物権のような絶対性がなく、第三者に対抗することはできないのが民法の原則である。例を挙げると、Aは地主である甲と土地の賃貸借契約を結び、その借地に家を建てて住んでいた。ある日、甲がその土地を第三者である乙に売却した。土地の新たな所有者となった乙はAに立ち退きを要求した。Aは家主である甲と建物の賃貸借契約を結び、その借家に住んでいた。ある日、甲がその建物を第三者である乙に売却した。家屋の新たな所有者となった乙はAに立ち退きを要求した。
上記の2つの例では、Aと甲との間の賃貸借契約は、あくまでその2人の間で締結されたものであるから、契約外の乙にとっては無関係である。したがって、Aは乙に対してその土地・建物についての賃借権を主張できず、乙は所有権に基づき、Aに対して明渡しを求めることができることになる(「売買は賃貸借を破る」という原則)。
もっとも、民法上、賃借権を登記していれば、賃借人は、新所有者に対してもこれを対抗することができる( ⇒民法第605条)。すなわち、甲が賃貸物件を乙に売却した場合も、賃借人Aは、予め賃借権設定登記を受けておけば、新所有者乙に賃借権を主張し、住み続けることができる。しかし、賃貸借契約においては、特約がない限り、賃借人は賃貸人に賃借権の登記を求めることはできないというのが判例・通説である(大審院大正10年7月11日判決民録27巻1378号)。そして、実際上も、通常の地主や家主は、賃借権を登記することによって得られる強力な効果を嫌い、任意に登記に協力することはない。そのため、賃借権設定登記という方法によって賃借人が新所有者に自己の権利を主張するという方法は有名無実化していた。
しかし、これでは、賃貸人が、賃料の値上げに応じない賃借人について賃貸物件を第三者に売却して立ち退かせるなどして、値上げを迫ることもできることになり、賃借人の立場は非常に弱いものになる。そこで、借地人・借家人の地位を保護するために、本法では以下のような規定が設けられている。
借地人は、その土地上に登記済みの建物を所有していれば、第三者に対して借地権を対抗することができる(10条1項)
借家人は、建物の引渡しがあったとき、すなわち借家人がその借家に居住等で占有していれば、第三者に建物賃借権を対抗することができる(31条1項)
このように、本来は債権に過ぎない賃借権だが、本法の規定により物権と類似する対外的効力を有するに至っている。これを「賃借権の物権化」という。
借地契約
借地契約において契約期間を定めなかった場合は、30年( ⇒3条本文)
借地契約において、30年より長い期間を定めた場合は、その定められた期間(3条ただし書)
借地契約において、30年より短い期間を定めた場合は、そのような合意は9条により無効であるから、30年となる
なお、旧借地法では、借地上に建てられている建築物について石造り、土造り、レンガ造りなどの堅固建物と、木造などそれ以外の材質の非堅固建物という区別を設け、前者の所有を目的とする借地権の契約期間が30年未満の場合には一律60年とし、後者の契約期間が20年未満の場合には一律30年として規定していた(旧借地法2条)。しかし、この区別は建築技術発展に伴って合理性を失い、借地借家法には受け継がれなかった。
借家契約の存続期間は、当事者の合意によって定まる。 ⇒民法第604条(賃貸借契約の期間を20年以下と規定している)の適用が排除されているため、期間の上限はない( ⇒29条2項)。
期間の定めをしなかった場合は、各当事者はいつでも解約申入れをすることができる( ⇒民法617条1項)。また、借家契約の契約期間が1年未満である場合も、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる(29条1項)結果、同様にいつでも解約申入れをすることができる(解約申入れについては後述)。
民法における原則では、契約期間が定められている場合ならば、その期間が過ぎれば契約は終了し、さらに契約を更新するかどうかは当事者次第である。また、契約期間が定められていない賃貸借契約は借主・貸主どちらからでも解約を申し入れることができ、その申入れから所定の期間を過ぎると契約は終了する(民法617条1項)。しかしこれでは賃借人が突然家や土地を追い出されて生活の拠点を失うおそれがあるため、借地借家法には更新を容易にし、解約を制限する制度が整備されている。
すなわち、借地借家法は、期間の定めのある借地・借家契約については、直接的又は間接的に契約更新を強制している。このように、当事者(特に賃貸人)の意思に関わらず法律の規定によって契約が更新されることを法定更新という。また、期間の定めのない借家契約についても、賃貸人からの解約申入れに正当事由を要求するなどして一方的に契約を終了させないようにしている。
借地権の存続期間が満了する場合に、建物が存在するときは、借地人は、契約の更新を請求することができる。これに対し、地主(賃貸人)が遅滞なく異議を述べなければ、契約は法定更新される( ⇒5条1項)。貸主がこの異議を述べるには、正当事由が必要である( ⇒6条)。
また、借地権の存続期間が満了した後、借地人(又は転借人)が土地の使用を継続している場合も、建物が存在するときは、地主が遅滞なく異議を述べなければ、契約は法定更新される(5条2項、3項)。この異議にも正当事由が必要である(6条)。
正当事由の判断は、借地人と貸主の双方がその土地の使用を必要とする事情のほか、立退料の支払も考慮することができる(6条)。
期間の定めのある借家契約については、何もしなければ自動的に契約が更新されるという制度が採られている。すなわち、当事者が契約期間満了で契約を終了させようとする場合は、契約期間が満了する1年前から6か月前までに、相手方に対して契約を更新しないこと(更新拒絶)を通知しなければならず、この通知がない場合には、これまでと同様の条件(ただし、新たな借家契約は期間の定めのないものとされる)で契約が法定更新される( ⇒26条1項)。賃貸人がこの更新拒絶の通知を行うためには、正当事由が必要となる( ⇒28条)。